9話 最強の二人(義妹)
「つまりカンタが柑奈という妹の存在をお兄ちゃんに伝え、勝手にわたしのお兄ちゃんの相談役になってlimeまで交換してたと」
「そう! って、いつからおにいがおねーちゃんのものになったん……」
「生まれた時からお兄ちゃんとお兄ちゃんの童貞はわたしのものなの。海里が毛嫌いしてる間も、わたしだけはお兄ちゃんのことしか考えてなかったし」
「嘘つけ。トイレのこととかでお兄ちゃんのこと煙たがってたくせに」
あたしが痛い所を突くと、おねーちゃんは唇を噛みながらこちらに睨みを利かせる。
こっわぁ……。
「とにかくそれより今は柑奈をどうするかを考えるべきだわ。とりあえず……拉致でもする?」
「すぐおねーちゃんはそうやって強引に手を出す」
「でも金川さんの真意を知る必要は間違いなくあるわ」
柑奈の、真意かぁ。
確かにあたしに連絡して来た時から不思議には思ってた。
『柑奈:海里のお兄さんと海里とウチの3人で買い物どうかなって?』
そう柑奈はlimeであたしに提案してきた。
あまりにも急すぎたけど、おにいのこと心配してくれていたのは嬉しい。
「柑奈さんが100%善意だったら、お兄ちゃんを取られてもいいと思ってるの?」
「それは……おにいが幸せになれるなら、あたしは」
「エゴが無いなら柑奈以前にあたしに負けるわよ、海里」
「えご……?」
「あなたのお兄ちゃんへの想いって、そんなものなのね」
おねーちゃんからそう言われてちょっぴりカチンと来たけど……おねーちゃんの言う通り。
あたしらがやってるのは義妹戦争。
あたしとおねーちゃんは、柑奈よりもずっと前からおにいのことが好きだった。
おにいは優しくて頭も良くて面倒見が良い。
最近はVなんたらってのにお熱だけど、本当のおにいはもっとカッコいいんだもん。
「お兄ちゃんのことが本当に好きなら、金川柑奈は間違いなく、邪魔になるわよ」
柑奈が、邪魔に……。
「わたしは金川柑奈をお兄ちゃん童貞争奪レースから降ろす。協定を結んだ以上、あなたにもそれに協力してもらうわ」
「……あたしは、柑奈とは親友でいたい」
「あなたこの期に及んでまだ」
「でもおにいはあたしのものだから。だからおねーちゃんに協力して欲しい」
「……ふっ。やっとあなたも野獣の目をするようになったわね」
エゴがないとこの戦争に勝ち抜けない。
柑奈には悪いけど、真意を聞かせてもらわないと。
✳︎✳︎
1月。ついに中学最後の3学期になった。
どもどもーあけおめー。ウチの名前は金川柑奈。
新学期早々に髪型をミディアムショートからベリーショートにして登校してまーす……なんて、なに一人で自己紹介してんだろ。ウケる。
ウチは元バスケ部のエースで、男と間違われるくらいスレンダーな身体つきだからか、ボーイッシュだってよく言われる。
自分で言うのもなんだけど女の子にスッゲェモテるから、ほら、今日も。
ウチが中学の校門の前まで来ると、後輩の凄い可愛い女の子がマフラーに白い息を篭らせていた。
「あ、金川先輩!」
「どしたん? ウチになんか用?」
「え、えっと……」
真っ赤な顔にピンク色の唇。
これはアレか、また告白されちゃうかなぁ。
「金川先輩が習学院目指してるって聞いて。神社で合格祈願の御守り買って来ました!」
可愛い後輩ちゃんは御守りをウチに渡すと「そ、それじゃっ」と言って校舎の方へ行ってしまった。
「……合格祈願、か」
お兄さんにいっぱい勉強教えてもらったし、期待に応えたいけど……今は五分五分なんだよねぇ。
ウチが校門の前で御守りを握りしめながらぼーっとしていると、突然、背後から両肩に手を置かれた。
「「柑奈」」
背後から伸びて両肩に触れたのは、海里と生徒会長の手だった。
海里は右手でウチの左肩を、生徒会長は左手でウチの右肩を掴んでいた。
「ど、どしたのお二人さん。そんなイカつい剣幕で」
「「話がある」」
この二人……なんでコンビみたいになってんの。
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