6話 え、柑奈ってそうなの?
俺が柑奈さんと海里を誘ったのはバスに乗って数分先にあったとある商業施設。
「おにいがこういう所に誘ってくるとかマジで珍しいし」
「め、珍しいってなんだよ」
「私ここ大好きなんで、お兄さんナイスチョイスですよ!」
「そ、そうかな?」
俺たちがやって来たのはスポーツやボウリング、カラオケが楽しめる複合レジャー施設【Rising1】、通称ライワン。
ライワンは陽キャたち御用達の施設だが、柑奈さんがバレー部のエースだと聞いていたので、もってこいのスポットだと思った。
「ライワンかぁ、あたしは初めてだけど柑奈は?」
「私は家族とか部活の友達とよく来るよ? 自主練でバレーの体育館借りるより安いから、みんなで遊ぶついでにトレーニングしたり」
「絶対トレーニングサボるじゃん」
「まぁ半分以上カラオケで使っちゃうから否定はしないかな」
二人が楽しげに話しながら前を歩く。
ライワンに誘ったはいいが、周りに陽キャみたいな見た目の輩しかいないのが少し気がかりではある。
俺みたいな陰キャには縁のない施設だと思っていたからな……なんか緊張して来た。
「お兄さんって、好きなスポーツ何ですか?」
「え、俺?」
「おにいは何でも上手いよ。小学生の頃なんて、バスケもサッカーも野球も、地域の選抜チームに呼ばれるくらいだったんだから!」
「なんで海里が誇らしげなのよ。でもお兄さんってそんなに運動得意だったんですね! スタミナ0で体育の成績悪い海里とは真逆かも」
「うっさい!」
俺のことを、誇らしげ……か。
俺は海里の方を見て複雑な気持ちになる。
こうやって海里が俺と第三者といる時に、俺を自慢のタネにしてくれるのは素直に嬉しい。
今の俺はこんなでも、海里はいつまでも俺を誇らしく思ってくれているのか。
「ありがとな海里」
「きゅ、急にどしたんおにい? 悟った顔して」
「いや、全盛期を過ぎた俺でも誇らしく思ってくれてるのが嬉しくてさ」
「おにい……」
海里はもちろん、優梨も俺のことをやけに慕ってくれていた。
二人は俺なんかより何倍も見た目やスペックが優れているのに、それでも兄の俺を蔑まずに優しくしてくれる……こんなに良い妹はなかなかいない。
「あ、あたしは! いつまでもおにいが自慢のおにいだから……」
「ひゅーひゅーはよ結婚しろー」
「だから柑奈うっさい!」
海里は柑奈さんに容赦なくゲンコツを喰らわせて、二人で笑い合っていた。
なんか、良いな。こういうの。
二人の仲睦まじい様子を見ていると、少し羨ましくなる。
「とにかく! おにいはあたしの自慢だから、バレーでも柑奈に勝てるし」
「はあ? おい海里! 何言って」
「ふーん、お兄さん、マジですかぁ?」
柑奈さんはギロっと目を細めながら不敵な笑みを浮かべて聞いてくる。
「い、いや、現役バリバリのバレー部ギャルに勝てるわけないよ!」
「あははっ! なんすか現役バリバリのバレー部ギャルって。A●のタイトルみたい! あはは」
「ちょ柑奈! え、えーぶいとか下品だしっ」
「いいじゃん別にー」
あはは、意外と柑奈さんって下ネタ——。
あれ、なんだろうこの感覚。
『い、いやいやないっすよお兄さん! オレも海里も処女ですし』
……ん?
『お互いにSE●とかしたことないって言おうとしたら処女って言っちゃいました! 男が処女って、なんか可愛いっすよねー。アナ●処女ならあるんすけど、あはは!』
「お兄さーん、どしたんすか? 受付こっちっすよ」
「……っ」
ふと俺は我に返り、声をかけて来た柑奈さんの顔を見つめる。
「お兄さん?」
双子だからか……?
でもなんか……既視感と違和感が混ざり合って頭から離れなかった。
——————
おいおい何が起こるんだってばよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます