2話 白い吐息とエロい吐息


「帯紐……緩くなってきちゃった」


 優梨に言われ、俺は足を止めて振り向く。

 振袖の帯が緩くなったことで胸元も若干はだけており、優梨の真っ白で柔らかそうな谷間と紫のブラがチラッと見える。

 え、えろ……いな。


「お兄ちゃん……見過ぎ」

「うっ、す、すまん!」


 何考えてんだ俺、今はそんな状況じゃないだろ。


 俺は優梨を通路の角に移動させ、周りから見えないように壁になりながら、優梨の振袖を確認する。

 胸下にある帯紐が緩くなっており、今にも振袖が着崩れを起こしそうになっていた。


 い、いやいやいや待て。

 いくら女性恐怖症気味の俺でもおかしいと分かる。


「女性の振袖って帯板とか下にも帯紐とか何重も巻くんだから、普通こんな着崩れは起きないだろ」

「この振袖、去年新調してもらったんだけど一年間で身体が大きくなりすぎちゃって……新しいのは買えないし、小さくてもせめてキツくならないよう、お母さんにお願いして簡易的な着付けにしてもらったんだけど」


 優梨は困り眉になりながら言った。

 双子だと何か新調する時は二人同時のケースが多く、出費が嵩むからそれに関しては仕方ないとは思うが……着付けくらいは何とかしてくれよ母さん。


「優梨、一旦トイレに行ったらどうだ?」

「でも、着付けは一人じゃ難しいし」

「じゃあ母さんを…………ダメだ、母さんたちとはぐれてるんだった」

「どうしよう、お兄ちゃん?」


 兄として、嫁入り前に妹の肌色をそこら辺の男たちに見せるわけにはいかない。

 ……こ、こうなったら。


「優梨、こっち来い」

「えっ」


 俺は優梨の冷えきった手を取ると、近くにあった社務所の裏へと移動する。

 社務所の裏にはかなり落ち葉が溜まっており、おそらく誰も来ないと思う。

 二人で建物の影に隠れ、俺は優梨の振袖に手をかけた。


「……お、お兄、ちゃん」


 少し走ったからか優梨の振袖は完全に脱げ始めており、今からエロいことでもするのかというくらいに胸元が開いてしまっていた。


 緊急事態とはいえ、俺は初めて"中学生の優梨"のおっぱいを見た。

 小学校低学年までは一緒に風呂に入っていたから、優梨の裸なんて見慣れていたが、成長した優梨の身体はもうあの頃の面影が無い。


 まだ中学生なのに、すでにグラドル並に熟した果実。

 血管が少し見えるのが生々しくて、触れたら柔らかいのが見て分かる。

 妹とはいえ俺の目の前に……女子のおっぱいが……。


 つい釘付けになっていた俺は、口に溜まった唾を一気にごくりと飲み込んだ。


「……ゆ、優梨」

「おっぱい……このままじゃ、見えちゃいそう……っ」


 優梨は口から白い息を溢しながら顔を赤くして、着けている紫色のブラの紐に指をかける。


「い、今すぐに、帯を直すからまずは後ろ向いてくれ」

「分かっ——きゃっ」


 回れ右をしようとした優梨が落ち葉で履いていたブーツを滑らせ、急にバランスを崩し、建物の方に身体が傾く。


 やばいっ、そっちに倒れたら建物の角にぶつかって優梨が怪我を——っ!


「優梨っ」


 俺は咄嗟に優梨を抱きしめ、反対方向の落ち葉の山へと転んだ。

 フサッという音と共に落ち葉が舞い上がる。


「いってぇ……」


 俺が下敷きになるような形で転んだため、俺は空を見上げていた。


「お、お兄ちゃん……」


 そして優梨は抱き合う形で俺の上に乗っていた……その柔らかい胸をクッションにして。


「優梨……無事でよか——っ」

「ねえお兄ちゃん」

「……ん?」


「お兄ちゃんのここ、硬いよ?」


「……っ⁈」


 優梨の冷たい手が、俺の下腹部に触れた。

 俺はそれに反応して体をビクンと震わせる。


「もしかしてお兄ちゃん……わたしの身体で、変なこと考えてる?」

「そ、そんなわけ! ない! ん……だ」


 苦しい言い訳だ。

 俺が興奮してしまったのは事実なのだから。


 クリスマスの時、優梨は俺に「妹で興奮しちゃダメだ」と念を押してきた。

 そりゃ妹の身体で興奮したなんて、兄としての威厳がなくなるし、それがバレた以上、また優梨に嫌われるかもしれない。

 そしたら前みたいな関係に……。

 せっかく二人と仲良くなれたのに……また俺たちは……。


「ごめん……ごめん優梨! 俺!」

「ふふっ。大丈夫だよお兄ちゃん」


優梨は怒っていなかった。

妖麗に笑いながら、俺の唇を人差し指で撫でる。


「大丈夫って……何が」


「わたしも、"同じだから"だよ?」


「お、同じ……?」

「お兄ちゃんになら……触られてもいいの」


 優梨は下敷きになっていた俺の右手を摑むと、自分の胸へ近づけて、着けていた紫色のブラの下へと俺の右手を潜り込ませた。

 すると俺の右手にはカイロみたいにホカホカで生暖かい感触と突……っっっっ⁈⁈


「お、おおおおお、おおいっ! なにをっ」


「……あっ、んんっ♡」


 優梨は色っぽい声で喘ぐと、俺の手を摑んでいるのは反対の手をゴソゴソと動かした。

 下敷きになって空を見上げている俺には見えない"どこか"を触っているようだった。


「ねぇお兄ちゃぁん……わたしのおっぱい、柔らかいよねぇ?」


 手に伝わる全ての情報がこれまで味わったことのない感触。

 今の自分の下半身がどうなっているのか、分からないまま、俺は優梨のおっぱいを直に触れていた。

 興奮どころの騒ぎではなく、頭の中が真っ白に……。


 否。間違いなく俺は興奮してる。

 それも妹の身体で。


「温かいでしょ? 妹おっぱい♡」


 俺の眼前で笑う優梨は普段とは違う目をしていた。


 ✳︎✳︎


「お父さん、お母さん。なんか二人遅くね?」

「海里はせっかちだなぁ。悠人にlimeのメッセージで近くのファミレスにいるって書いたんだから、そのうち来るだろ」

「そうよ海里。待ちましょ?」

「う、うん」


 二人とはぐれたあたしらは近くのファミレスで二人が来るのを待つことにした。


 それにしてもおにいとおねーちゃんが二人きり……。

 なんか嫌な予感しかしないけど、迷子なんて意図的にならないと思うし、お姉ちゃんも新年早々攻めるなんてことしないだろうし。


 そだ。おにいが帰ってきたらわざと抱きついたりしておにいを動揺させてやろっと。

 振袖で可愛いあたしに抱きつかれたらおにいの好感度も新年早々爆上がりっしょ。


 あたしはそんなことを考えながら注文したアツアツのマルゲリータピザを口にした。

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