第39話 渋滞
「えへへヘ」
オルゴール館を終え河口湖を後にした車内で、隣に座る美琴はピンクのクマを抱いてニヤニヤしていた。
「ちょうど美琴が欲しがっていたクマを貰えてラッキーだったよな」
「ありがとうね、倭人くん!」
「何回目のありがとうだよ。もういいって」
美琴はまた「えへへヘ〜」と笑ってクマに頬ずりをしている。よほど欲しかったらしい。
「本当に東山様の歌は素敵でした」
「昂ノ月さんも出れば良かったのに」
「わ、私は駄目です! 歌はあまり……」
何でも出来そうな昂ノ月さんだと思ったら、歌は苦手みたいだ。
「だから余計に東山様が凄く感じるんです。今度のカラオケ大会は東山様が優勝間違いなしですね」
「ははは、それがそうでも無いんですよね。お店の人に色々と聞いたら、そのライバル店から出る人って、テレビのカラオケ番組にも出てるカラオケのプロみたいな人みたいです」
その人ってのは山崎和佳奈さんっていう綺麗なお姉さんだ。テレビでも四天王とかカラオケ姫とか呼ばれている人で、全く勝てる気がしない。
「ズルいよね!」
「仕方ないだろ、ポスターには誰でも参加オッケーって書いてあったんだから」
まあ、セミプロ相手に戦うってのは面白いけどな!
「うぅ、渋滞みたいです」
河口湖を出立して直ぐに乗った高速道路。暫く走ったらピタリと車は止まってしまった。そして御殿場についた頃には日が暮れていた。
「東名は事故渋滞で動いていないようです。もう一泊宜しいですか?」
少し疲れた声で昂ノ月さんが、もう一泊と提案してきた。運転をしているのは昂ノ月さんだ。河口湖から長い時間を渋滞のなか走っていて疲れているに違いない。
「やった! 今日も一緒に泊まれるね!」
違うだろッ!
「美琴とは別の部屋でお願いします」
「エッチぃよ、倭人くん! ダメ、絶対ダメだよッ!」
「いや、美琴と一緒に寝泊まりする方が、普通ヤバいだろ!?」
「そうですよ、お嬢様」
何で一人で寝るのがエッチぃのか全然分からん。
「は、春香さんまでエッチぃぃぃ」
「だから何でエッチぃんだよ!」
「倭人くんと春香さんが二人で一緒に───」
「違うだろッ! 何でそうなるッ!」
「あっ、なるほど」
昂ノ月さん、何が『なるほど』なんですか?
◆
「強羅温泉か」
御殿場市内はどこもホテルが満室で、箱根山系の強羅温泉まで上がってきた。
小学生の頃に訪れたはずだが、あまり記憶に残っていない。近くに星の王女公園があったような。
「すみません、一部屋しか取れなくて」
強羅温泉街にある老舗旅館。古くて豪華って感じの旅館に今夜は泊まる事になった。
「いえ、俺は問題ないんですけど……」
チラッと美琴を見るとニコニコと笑っていた。
「私も問題ないよ!」
「「はあぁ〜」」
俺と昂ノ月さんの溜息がハモった。
◆◆◆◆◆
【作者より】
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タイトル
豪勇無双の魔眼使い 〜俺の魔眼で見えるのが女子生徒のおっぱいだけじゃないって事を教えてやるッ! いえ、婆っちゃん達はご遠慮ください!!
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