第15話 トマト
【お詫び】5/2: 14話をスキップされた方は、14話の後半をお読みください。ご迷惑をおかけします。13 話が下書きで投稿してしまい、14 話が本物です。大変失礼致しました。
◆◆◆◆◆◆
憔悴していた神無月を抱きかかえて、俺の部屋に運んだ。とてもじゃないが、食事どころではない。
俺のベッドに寝かせて布団をかける。
「……倭人くん、手……握ってて……」
布団から小さな手を出す神無月。俺はその手を包む様に握ってやる。俺を倭人と呼ぶようになっているけど、まぁどうでもいいか。
「……倭人くんが隣部屋で良かった」
まだ青白い顔でそう呟く神無月に、「そうだな」と告げて、俺はベッドに腰を下ろす。
「ご飯……どうしよう……」
「明日は休みだし、少し遅い食事でも大丈夫だろ?」
「うん……。へへへ、倭人くんの布団って、倭人くんの匂いがするね」
「なんだそれ? 少し寝ててもいいんだぞ」
「う〜ん……。大丈夫、倭人くんとお話する」
「そうか」
「倭人くんとわたしって少し似てるよね」
「んなバカな!? 俺は黒い虫と友達じゃないし、部屋も掃除するし、ゴミ袋は捨てるし、風呂だって毎日入るぞ!」
「ゔぅぅぅぅ、そこじゃないよぉ、本だよ、本」
「あ、あぁ、本の話しか」
涙目で訴える神無月の顔色が少し良くなってきている。
「もう。倭人くんの持っている本って、わたし結構読みたい本があるんだぁ」
「そっか。何なら貸してやるぞ」
「大丈夫だよ。倭人くんの部屋に読みに来るから」
「う〜ん、そうだな。神無月に貸したらゴミに埋もれそうだしな」
「そんな事ないよぉ、ホント倭人くんって失礼だよね!」
ぷくぅと頬を膨らました神無月は、続けてニコニコし始めた。
「へへへ、でもそういう事にしておこうかなぁ。うん、だから倭人くんの部屋に読みにくるね」
「ああ、いつ来てもいいからな」
青白い顔に笑顔が戻る。やはり神無月には笑顔でいて欲しいな。
俺たちは好きな漫画やラノベの話をした。話をするに連れて、神無月の顔色が良くなっていく。気付けば夜十一時になっていた。
「ヤバ、飯にしよっか」
「……うん」
俺は繋いでいた手を離す。「あっ」と小さな声で神無月が俯いた。
「………大丈夫か?」
「う、うん」
俺はベッド脇に置いてあったリュックを開けて、中の物を取り出した。
「神無月、ほれ」
「えっ」
さっきの百均で神無月の目を盗んで買っておいた誕生日プレゼントを渡した。
「さっき買っといた」
「えっ、えっ」
神無月は俺が渡した熊のぬいぐるみと俺の顔をキョロキョロと見て、熊のぬいぐるみをギュッと抱きしめた。
「……ありがとう」
「おう、ちょっと待ってろ。直ぐに出来るから」
「うん」
顔を上げた神無月の瞳が少し潤んでいたが、良い感じの笑みを浮かべていたから大丈夫そうだ。
俺はキッチンに行ってちゃっちゃとボンゴレを作る。ローテーブルにサラダとボンゴレを並べる。コップにお茶を注ぎ完了だ。
「神無月ぃ、準備でき……」
寝室の扉を開けて、神無月に声をかけた。
「……たぞ……」
「とまとちゃん可愛ゆいですねぇぇぇ。またまたチュ〜しちゃいましゅねぇぇぇ」
熊のぬいぐるみがとまとちゃんらしい。そのとまとちゃんにチュ〜っとチュウしている神無月を見て、俺は……そっと扉を閉めた。
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