第50話 カラオケ姫の実力
山崎さんの素晴らしい歌が会場に響き渡っている。ステージの袖で決勝戦に出た面々も瞠目して 聴いているいる。
しかし俺の心はそれどころではなかった。先ほどのキスで、まだ心臓のドキドキは止まらず、羽があれば空を飛びたいぐらいに超舞い上がっている。
あれは結論から言えば事故キスだった。美琴が唇を寄せてきたんだが、美琴は本番の最後はキスをするものだと勘違いをしていたとか。
だからってキスしねえだろ、普通!?
俺はこの心の
ちなみに観客席では昂り過ぎて「尊い」と言い残して失神した腐女子がいたとか?
◆
「倭人くん」
「な、なんだよ」
美琴の顔を見ると余計に心臓がバクバクする。
「わたしたち勝てるのかな〜」
俺たちの歌の点数は九七点。観客票は十六点で現在は暫定トップだ。
「なんとも言えないな」
トリで歌う山崎さん。カラオケ姫の名は伊達ではなかった。追っかけのファンが付くのも納得の美しさ。舞うような振り付けにも目を奪われる。
そして歌だ。俺的には今のところノーミスで、しゃくり等の加点要素も多い。
「山崎さんが九九点までなら、観客票の数で俺たちが勝てると思う」
「百点だと負けちゃうの?」
「ああ、百点はパーフェクト賞で十点の加点があるんだ。そして山崎さんは今のところパーフェクトに歌っている」
「うん、そうだね。山崎さんの歌にわたし、鳥肌が立っているよ」
テレビで見る山崎さんと、生で聴く山崎さんでは感じる感動が全く違う。俺だってさっきから鳥肌が立ちっぱなしだ。
そして歌い終わった山崎さん。天を仰ぐ仕草が全てを語っていた。
「負けたな」
「うん。仕方ないね」
山崎さんの点数は百点。カラオケ姫が叩き出したパーフェクトに観客席からは割れんばかりの拍手が鳴り響いていた。
◆
「ありがとうね、東山君」
表彰式が終わり、ステージの袖に入ると神谷さんが待っていた。
「いえ、お力になれませんでした」
「ううん、山崎さんが凄かっただけだから。東山君に美琴ちゃんも凄かったよ。私の友達なんて失神しちゃった子もいたんだから」
「ハハハ……」
「それでさ、この後に時間あるかな?」
俺は隣の美琴の顔を伺うと、美琴も大丈夫な顔をしている。
◆
俺はカラオケ大会が終わった後に、三度目の化粧直しをした。そして今は広めのカラオケボックスの部屋にいる。そしてメチャクチャ緊張している。
正面にはワイワイきゃっきゃっとはしゃいでいる神谷さんのお友達の腐女子お姉さん達と神谷さん。
そして俺の左隣にはなんと山崎和佳奈さんが座っていた。
なんでだ?
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