第24話 ゴールデンウィーク
受付のお姉さんが言うことには、このカラオケ店で開催されるカラオケ大会に、他のカラオケ店からの刺客が送り込まれてくるらしいとか。何だ刺客って?
「お店としては、他のお店のチャンピオンに優勝させるわけにはいかないのよ。だから店長からの指示で、うちのお客さんで高得点を叩き出している人に声をかけ回っているってわけよ」
「それで俺ですか?」
「わたしの知っているお客さんで、満点を何度も出しているのは東山君だけなのよ」
「しかし、満点なんて運の要素もありますからね。十回に一回も出ませんよ?」
「その点なら大丈夫よ。大会は点数が八割で、残り二割は観客投票なのよ」
「……そんなんでいいんですか?」
「いいのよ。公式の大会じゃないし、その方が参加者も集まるから」
なるほど。確かに点数だけではカラオケのプロばかりの大会になってしまう。点数以外の加点要素があれば、点数が多少悪くてもワンチャン有るってわけだ。
「それに優勝したら三万円の賞金も出るのよ」
「三万円は美味しいですね」
「更に…」
お姉さんは俺の耳元でゴニョゴニョと囁く。マジか! どうやら賞金とは別に特別ボーナスも有るとの事だ。
「で大会はいつなんですか?」
「5月終わりの土曜日の夜よ」
「なるほど。美琴、カラオケ大会出てみるか?」
「倭人くんは出るの?」
「まあな。カラオケは好きだし、それなりに自信もあるからな。美琴も出るなら、さっき歌った『星屑のナイトメア』あたりいいかなって思ったんだけど」
「倭人くんと一緒なら出てみようかな」
美琴の声に受付のお姉さんの瞳が輝いた。
「ふふふ、
「はい?」
「ふふふ、東山君はちょっとイジればイケメンいけるし、神無月ちゃんは素でもいける男装女子! 萌えるわッ!」
受付のお姉さんはもしかして腐女子属性か!?
ふふふふふふと怪しい笑いをしながら、お姉さんは仕事へと戻っていった。
◆
普通の土日と変わらないゴールデンウィーク前半部が終わり、月曜と火曜は長期休みをするクラスメイトもいる中、なにごともなく明日からの五連休へと突入する。
「明日は美琴の部屋の掃除だな。今日は少し臭うぞ」
「ん〜、何でだろうね?」
美琴のゴミ袋を貯める習慣は未だに治っていないが、先日一緒にゴミを捨てに行っている。となると、ゴミ袋以外で何か臭いの原因があるはずなんだが。
「課題が沢山あるから、一緒にやるか?」
「大丈夫、大丈夫」
ソファーに座りラノベを読んでる美琴の事は諦め、ローテーブルに座り課題を始める。しばらく課題を進めて美琴を見てみると、ソファーの上で丸まり寝息を立てていた。
「おい美琴、寝るんなら部屋に行け」
「んにゃ〜」
俺の声で目を覚ました美琴は、寝ぼけたふらつく足取りで立ち上がると、ふらふらと俺の寝室のドアを開けて中に消えていく。
「み、美琴! その部屋じゃない! 自分の部屋だ!」
ローテーブルから立ち上がり、寝室に消えた美琴を追いかける。
「はぁ」
俺のベッドにダイブしてすやすやと美琴は寝ていた。
「まあ、明日は休みだしいっか」
美琴に布団をかけてリビングへと戻る。今日の分の課題を終わらせた俺はソファーに横になり、リモコンで部屋の照度を下げた。
「ゴールデンウィークか……。美琴とどこかに遊びに行きたいな」
学年で一番の美少女に声をかけて遊びに誘っていいのか悩みながら、俺は眠りにつく。
◆
朝起きると何やら騒がしい。
ソファーから立ち上がり、たまたま見た窓の外にはパトカーが止まっていた。
「事件?」
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