第48話 カラオケ大会予選
「風に乗る僕らの旅は 草原駆け 海渡る――♪」
美琴が可愛い以外の、数少ない取り柄がこのエンジェルボイスだ。
「あの子、歌うめえ~!」
「やっぱアイドルじゃん!」
「きゃーっ、颯太く〜ん!」
「颯太くん、可愛いィ〜!」
美琴の綺麗で透き通る様な声音に、お客さん達のウケもかなりいい。そして俺の歌うパートになった。
「俺達は流星 銀河の星屑 赤く輝くシューティングスター ♪」
あれ? お客さんが静かになったぞ? 外した?
「朝焼けに熔ける 小さな欠片は――!?」
「「「ゥワァァァァァァァァ!!」」」
会場がいきなり爆発したぞッ!?
「あいつ凄えぇぇぇ!!」
「やッべぇ、魂ィ震えてるぅ!!」
「キャーッ、史也ァァァッ!!」
「メチャクチャ上手い、カッコイィィィィ!!」
お客さんのテンションが上がり、俺と美琴が目を合わせると二人して笑顔がこぼれた。
二人のユニゾンで、会場のボルテージは今日イチのハイテンションになる。
俺と美琴のデュエットは会場のテンションに底上げされて、九七点の高得点を叩き出した。
会場からは割れんばかりの拍手をもらい、予選は無事に突破することが出来た。
◆
「綺麗な声だね」
「生で聴くと桁外れに上手いな」
予選のラストに歌っている山崎さんの声が、控え室用の個室にも聞こえてくる。カラオケ姫の歌は半端なかった。
「倭人君達も上手かったよ」
神谷さんが褒めてくれて嬉しいけど、山崎さんはもっと上手い。確実に高得点を出してくる。
汗で流れた俺の化粧を拭き取る神谷さんの顔が近い。この人も美人さんなだけに、心臓がバクバクしてくる。
「それでも山崎さんの方が上手いですよ。この歌、百点出るんじゃないですか?」
「決勝戦は観客票もあるから大丈夫よ! お客さんウケ、メチャクチャ良かったわよ」
見に来ている人が、BL作品の『星屑のナイトメア』を知っているかは微妙なんですが……。
◆
決勝戦に進出する五人が決まった。予選のラストに歌ったカラオケ姫こと山崎和佳奈さんは驚異の九九点だった。
ステージの上にはデュエットの俺たち二人を入れて六人が立っている。隣のおばさんの千手観音が刺さりそうで怖いです。
あれ? おばさんとは逆側から視線を感じ、見れば隣の山崎さんと目線があった。って言うか瞳を輝かせた熱い視線だったりする。
歌う順は予選の得点順。ラストが山崎さんで、俺たちはその前に歌う事になった。
っていうか、やっぱり山崎さんの視線が気になるんだが?
◆
決勝戦、三人目で歌った千手観音のおばさん。歌の得点が九五点、観客の評価点が九点で百四点だった。その前に歌ったお兄さんが百八点で暫定トップだ。
決勝戦用の学園祭バージョンの青いコートを俺が、赤いコートを美琴が纏う。
「行くぞ」
「うん! 頑張ろうね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます