第17話 美琴
「ねえ、倭人君。買ったお茶碗使わなかったね」
「あ、そうだった」
ケーキを食べ終わった頃に、百均で買ったご飯茶碗を使っていなかった事に気がついた。
「また、今度だな」
「えへへ」
残念がるかと思ったら、何故か喜んでいる神無月……じゃない美琴。
「また倭人君とご飯食べられるね」
「そうとも言うな」
俺がそう言って席を立ち、食べ終わった食器を片付けていると、美琴は速攻ラノベに手を伸ばした。はぁ〜、コイツの旦那になるやつは苦労しそうだな。
◆
さて、どうしたものか。美琴はソファーに座って、熊のぬいぐるみを抱きながらラノベを読んでいる。
時計を見れば深夜零時を回っていて、普通に考えれば女子高生が男子高生の部屋にいていい時間じゃない。
「美琴」
「ヒャッ!?」
美琴は何故か慌ててラノベを手から落としそうになっている。
「大丈夫か?」
「う、うん。急に名前を呼ばれてドキっとしちゃった」
「やっぱ、神無月って呼んだ方がよくね?」
「いえいえ、美琴で、美琴でいいよ。うんうん」
「でさ、美琴。今夜は泊まっていくか?」
美琴はまたまたラノベを手から落としそうになる。さっきは上手くキャッチ出来たが、今回はラノベがリビングの床にパサッと落ちた。
「え、えっと、そのぉぉぉ」
顔を真っ赤にしてモジモジし始めた美琴。あっ、ヤバ、ちゃんと説明しなかった。
「いや、いや、美琴、そういう意味じゃないかから。ほら、美琴が一人だと俺も心配だから。つ、つまり、そういう事だ、なっ」
「う、うん、そ、そうだよね、そういう事だよね、ね」
二人赤い顔で「「あははははは」」と笑いあった。
「ありがとうね、心配してくれて。そうする。泊まってく」
「なら、着替えとか取りに行こうか」
「一緒に行ってくれるの?」
「隣だからな」
俺は美琴と一緒に美琴の部屋に行った。
「あちゃ~、ゴミ袋を蹴っ飛ばしてたのをすっかり忘れてた。てか、また貯めてやがったな」
「テヘ」
クッ、可愛いい笑みに誤魔化されそうになる。
「たくぅ、将来の美琴の旦那になるやつが可哀想になってくるな」
「大丈夫だよ」
んふふふ、と謎の笑いをする美琴。大丈夫と言い切れる程に、コイツが成長するとは到底思えない。
「ホントかよ」
そう言いながら、俺はパンパンに積まっている黄色のゴミ袋を拾い集める。流石に深夜にゴミ出しするわけにはいかないから、仕方無しに玄関に積み上げる。
「明日の朝、貯まっているゴミ袋を捨てに行くぞ」
「うん」
返事だけはいいんだよな。
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