第18話 おやすみ
「そろそろ、シャワー浴びて、寝たらどうだ?」
時計の針は一時を周り、とりま俺が先にシャワーを浴びて、寝間着代わりのスウェットに着替えた。
美琴は相変わらず、熊のぬいぐるみを抱いて、ソファーの上でラノベを読んでいる。
「大丈夫だよ」
「何がだよ」
「昨日入ったから」
「……毎日入りなさい」
「えぇぇぇぇぇ」
「えぇぇじゃないだろ。何でそんなに風呂が嫌いなんだよ?」
「ん〜、家にいた時にいっぱい入っていたから、もういいかなぁって」
「言ってる事がいまいち分からないんだが?」
「春香さんがお風呂に入れ入れって、何かあるたびにお風呂に入っていたから、一生分はもう入っちゃったかなぁぁって」
「いやいや、風呂入るのに一生分とか無いから!」
「でもほらぁ、お風呂に入りすぎたから、こんなになっちゃったよ」
「グヴぁぅッ!」
美琴は胸に左右の手を当ててパヨんパヨんさせやがった。健全健康高校男子には余りにも刺激的なパヨんパヨんだ!
「えへへぇ、冗談だよぉ〜」
「クッ、男の純情を弄ぶなッ!さっさと風呂に入ってこいッ!」
美琴はちぇ〜と言って風呂場にシャワーを浴びにいった。
「……………」
風呂場から聞こえるシャワーの音に、さっきのパヨんパヨんを重ねてしまった。
「うぅぅぅ、ベッドメイクでもしてくっか」
俺は美琴が読んでいたラノベを手にとって、寝室に引き籠もった。
◆
「じゃあ、俺はあっちのソファーで寝てるから」
「う、うん……、ごめんね、ベッド借りちゃって」
ベッドに熊のぬいぐるみと一緒に入り、布団に顔を半分埋めている美琴。
「じゃあ、灯り消すぞ」
「……う、うん」
天井のLED照明をリモコンを使って照度を下げる。薄暗くなった部屋から出ようとドアノブに手をかけた時に、美琴の小さな声が聞こえた。
「倭人くん……」
「あん?」
「……やだ……」
か細い美琴の声が震えている。
「……やっぱり、一人は嫌だよ」
俺も美琴を一人にするのは心配だった。
「仕方ねえなぁ」
俺は美琴のそばに戻り、ベッドに腰を下ろした。
「へへへ」
さっき聞いた震えた声はそこには無かった。
「大丈夫か?」
「うん、倭人くんがいるから」
「何だそれ」
口元まで被った布団から見える美琴の瞳が笑っていた。
「まったく、子供かお前は」
「えへへへ」
「寝るまで居てやるよ」
「うん」
美琴はニコりと微笑み、瞳を閉じた。そして布団がモゾモゾと動き、小さな可愛いい手が出てくる。
「倭人くん、握ってて貰っていいかな……」
「たくぅ、子供確定だな」
クスっと俺は笑ってその手を優しく包み込む。
そして、暫くもしない間に美琴は幸せそうにスゥスゥと寝息をたてた。
「おやすみ、美琴」
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