第10話 一緒に晩ご飯
「こんばんわぁ」
部屋のドアを開けたそこには部屋着に着替えた神無月がいた。
「どうした?」
「え、えっとぉ、今日のお礼をしたくて……」
そう言って俺に手渡した白い箱は、近所でも評判のケーキ屋さんの箱だった。しかし、これって……。
「気を使わなくていいよ。それでさ神無月さんや、これって」
「ここのケーキって美味しいんだよ」
「評判だからね。でもこれってホールケーキだよね?」
「そうだよ!」
一切の迷いなく答える神無月。一人暮らしの俺にホールケーキをどうしろと?
「はぁ~、上がれよ。晩飯ご馳走してやるから、食後に一緒にケーキ食べようぜ」
「え〜っ、悪いからいいよ」
「お前の事だから、どうせ晩飯はカップラーメンかなんかだろ?」
「な、なんで知っているの!?」
「ゴミ袋の中にカップラーメンのゴミが多すぎだ。土日だけってレベルじゃないし、朝からカップラーメンはあまり食べない。なら夜しかないだろ」
「うグッ」
「自炊している形跡もなかったしな」
「あ〜、東山君もしかして私が料理が出来ない女だと思ってるでしょ!」
「思ってるぞ?」
「やっぱり東山君って失礼な人だよね!お湯ぐらいちゃんと沸かせますぅ!」
「……待て、お湯を沸かすのは料理のうちには入らないぞ?」
「えっ!? ゆ、茹で卵だって作れるし、トーストだって焼けるんだからぁ!」
「………神無月、お前はもう料理を語るな」
◆
「うわぁ〜、良い匂い。何を作っているの?」
「唐揚げ」
「えっ? 唐揚げって作れるものなの?」
「…………座って待ってろ」
神無月のお父様、娘をなぜ世に出してしまったのですか?
唐揚げを揚げながら、サラダや味噌汁を作る。電子ジャーから炊きあがりのアラームが鳴り、蒸している間には唐揚げも揚げ終わる。
「お待たせ」
「す、凄いね東山君は……」
ローテーブルの上に並ぶ唐揚げ、サラダ、じゃがいもとワカメの味噌汁、あとは小パックで売っている出来合いのきんぴらゴボウを見て感嘆の声をあげる神無月。
ご飯茶碗は自分の分しかなかったから、神無月にはボウル皿で我慢してもらう。
「さて食べようぜ」
「いっただきまーす」
小さな口をパクパク動かしながら食べる神無月。
「唐揚げ、凄い美味しいよ!東山君は将来はコックさんになるの!?」
「いや……唐揚げ粉まぶしただけだから誰でも出来るぞ」
「サラダも美味しいね」
「春キャベツの季節だからな。でも神無月が美味しそうに食べてくれて嬉しいよ」
両親が上海に転勤になって半年。あれ以来、誰かと一緒に食べる初めての食事だ
「東山君……泣いてるの?」
「えっ!? あれ? 本当だ!?」
「だ、大丈夫!?」
「あ、ああ、久しぶりに誰かと一緒に食べる食事に感動してしまった」
「……そっかぁ、ふふふ、なんか嬉しいな」
俺は自分の事を神無月に話をしながら、楽しい食事を楽しんだ。
【作者より】
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