第41話 美しい宝石(第一部最終話)
恋 美しいガラスのグラス
日々注がれる 恋心
グラス 見つめ 心 踊る
萌える グラス
恋 美しいガラスのグラス
二つの思い 恋心
グラス 見つめ 心 爛漫
愛しき グラス
向日葵 青夏
白鳥の空 大輪輝く
橋かけた 天の川
恋 美しいガラスのグラス
溢れ落ちる 恋心
グラス 見つめ 心 失う
砕けた グラス
儚く散る 落ち葉しぐれ
恋 夢 幻しの日々
愛 美し……
◆
「ヤッベ、寝坊した!」
ゴールデンウィーク明けの月曜日だってのに、時計を見れば七時を大きく回っていた。
昨夜に読んだ『恋の器』のせいだ。
俺は美琴とのゴールデンウィークを過ごした時間と、色々あった出来事を振り返り、彼女いない歴一五年の俺にもワンチャンあるのかと考えてしまった。
俺は美琴の事が好きなんだと思う。でも俺には美しいグラスを持つ勇気が無かった。それは砕けたら元には戻らないから……。
◆
「走れ美琴!」
「もう無理だよぉ。諦めようよぉ」
朝起きて、慌てて美琴を起こしにいったら、案の定、美琴は熟睡していた。
さっさと朝食を二人で済まして、駆け足で学校に向かっていた。
「ヨシ! ここはお前に任せた! 俺は先に行く!」
「う、うん! 任された! ここは命に代えて『ポカ』痛ッ」
「冗談だ、さっさと行くぞ」
「……おんぶ」
美琴が手を広げて、アピールしているが
「駄目だ、おんぶは下着が見えるぞ」
「うッ」
はぁ〜、と溜息をついて「抱っこでいいか」と言えば、満面の笑みで「うん」と返ってきた。
「リュックは手で持てよ」
「うん」
俺は美琴の膝下に手を回して抱き上げた。
「走るぞ」
「えへへ」
◆
学校は無事に遅刻する事なく到着したが、別の問題が発生してしまった。
「東山、なんで神無月さんをお姫様抱っこしてたんだ!?」
「東山君、ついに姫と付き合ったの!?」
一限目が終わった休み時間に田村と氷川さんが俺の机にやってきた。しかも他の奴らも、めっちゃ聞き耳を立てている。
理由は登校の時に、学校の手前で美琴を降ろしていたんだけど、誰かに見られていたらしい。
「あ、あれはだな、み……神無月が靴裏がもげて、困ってたんで抱きかかえてあげたんだよ。おんぶしたら下着が見えちゃうだろ?」
「そっか、そうだよな」
「ふ〜~~ん、へぇぇぇ。じゃあ、東山君と姫はどんな関係なのかな?」
「……友達だな」
昨夜から悩んでいた答え。それが『友達』だった。なんか悔しいし、心のわだかなりは残っているが、これしか答えが出てこなかった。
「姫はどうなの? 東山君とは友達でいいの?」
「うん、友達じゃないかな」
えっ? ……友達じゃない?
「や、やっぱり彼氏とか!?」
田村が慌てて美琴に詰め寄る。
「わたしは、しばらくは彼氏は作らないよ」
その声にクラスの男子共から安堵の声が漏れた。
「じゃあ、東山君との関係は?」
氷川さんが笑みをこぼしながら美琴に問う。
「倭人くんは、大切な人だよ!」
ヤ、ヤバい、涙が出そうだ。俺が悩んでいた答え。今の俺たちの関係。『大切な人』。そうだよ、大切な人だ。俺は美琴が好きだ。好きな理由は、俺にとっても美琴は大切な人なんだ。
心のつかえが下りていく。恋が割れるグラスなら、そんなものはいらない。割れないグラスを作っていけばいいだけだ。
◆
愛 美しい宝石
恋は変わる 形を変える
ガラスのグラス ダイヤに変えた
二人の思い 繋がる糸
愛 美しい宝石
求めた思い 繋いだ思い
与える愛 受け止めた愛
永久の思い 紡ぐ糸
あなたに逢えた喜びに
二人のグラス音 響く鐘
◆◆◆◆◆
【作者より】
第一部が終わりました。
書き始めに決めていた一つのエンディングですね。
悪臭女子に読者様がつかなかったら、ここで終わろうと思っていましたが、予想以上の高評価を頂いています。
ありがとうございます!
そして、皆様のご愛顧賜り、作品は引き続き第ニ部を執筆します。
引き続き、悪臭女子を宜しくお願いします。
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