第7話 たまにはお風呂もいいね
「たまにはお風呂もいいね」
「だろ。……じゃねえよ!」
銭湯を出た神無月は女子高生とは思えない発言に、俺は思わず相槌を返してしまったがそうじゃない。
「それを言うなら、たまには銭湯もいいね、だ! 風呂は毎日入りなさい!」
「えええええ、面倒くさ〜い」
「だから振られんだよ!」
あっ
「…………」
「悪りい……」
「………ううん。轟君にもお前臭いからって言われたから……」
「……そっか」
銭湯からの帰り道。通行人もまばらな明るい街灯の下を、俺達は気不味い雰囲気でワンルームマンションへと帰った。
◆
「東山君……。少しお話を聞いて貰ってもいいかな」
俺の部屋に帰ってきた神無月は少し元気のない顔でそう切り出した。
「お茶入れるから、ちょっと待ってろ」
神無月をローテーブルに座らせて、俺はキッチンへと向かう。
夜風で少し冷めた体を温めるため、コーヒーを入れようとして、インスタントコーヒーに手を伸ばしたが、伸ばした手を止めた。
「神無月ぃ、ホットミルクは飲めるかぁ」
「う、うん」
神無月の返事を聞いて、冷蔵庫から牛乳を取り出し、二個のカップに牛乳を注いだ。あとは六十度設定のレンチンをするだけだ。
「どうぞ」
「……ありがとう」
「夜も遅いからな。カフェインが入っているコーヒーよりも、ホットミルクの方がいいだろう」
「そうだね」
「神無月、カフェインはなんでカフェインって言うか知ってるか?」
「え? そんなの考えた事もないよ」
「ドイツの詩人ゲーテが、コーヒーの旨味成分を調べさせて見つかったんだってさ。だから、コーヒーに入っている、でカフェインって話だよ」
「なにそのオヤジギャグ。じゃあミルクに入っていたらミルクインだったんだね」
ふふふ、と笑いながら神無月はホットミルクのカップに口をつける。俺もホットミルクを口に含んだ時に神無月が自らの事を語り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます