第6話 バルカン買ってこい!
俺的にクソ野郎の轟の事は置いといても、神無月の香臭についてはやはり一言は言っておこうと思う。
「お前さ、香水の付け過ぎじゃね?」
ヨレヨレの部屋着を着てソファに座る神無月。綺麗になったフローリングに座る俺。見上げる神無月に俺は言った。
「でも、ほら、女子高生たるもの、臭いには気をつけないとね」
「しかしだな、毎日お風呂に入っていればそこまで臭わんだろ?」
「ん? 入ってないよ?」
「……オイ、今なんつった?」
「入ってないよ、だよ?」
「マジか? いつから?」
「……分かんない、だよ?」
「………………」
「…………エヘ」
「エヘっじゃあねえよ! 風呂があんだろ、風呂がぁ!」
「だ、駄目だよあそこは! 真っ黒くろ助でいっぱいだから!」
「「………………」」
「…………バルカンだ」
「……なに?」
「バルカン買ってこぉぉぉぉぉい!!」
◆
結局、俺が無煙タイプの強力殺虫剤を近くのドラッグストアに買いにいった。
今は神無月の部屋の黒い虫を掃討中で、部屋に居られない神無月は俺の部屋にきていた。
「へぇ〜、東山君の部屋は綺麗だね」
「お前の部屋と比較するなら、何処の部屋も綺麗だと思うぞ」
「あっ、わたしと同じ本がある! これも、これも、これもかぁ。流石はストーカーの東山君だね。アメゾンまでチェックするなんて、もはや犯罪だよ」
「誰がストーカーだ! ネットサイトのハッキングなんて出来るはずないだろ」
「東山君、この本読んでもいい。買おうかどうか迷ってたんだ」
神無月は俺の本棚から最近発売された異世界系のラノベを手にとっていた。
「いいぞ。あと二、三時間かかるからな」
クッションに座り、壁に寄りかかってラノベを読み始めた神無月。真剣な顔で読む神無月の顔が、笑ったり訝しめたりとコロコロ変わって面白い。
「……やっぱ可愛いいな」
「ん? なんか言った?」
「え、えっと、め、飯は食ったのかなって?」
「食べてないよ、いつもの事だけど」
「さ、さっき作ったカレーが有るから温めてやるよ」
紅潮した顔を誤魔化す為に、俺は慌ててキッチンへと向かった。
◆
「美味しい! 凄く美味しいよ!」
リビングのローテーブルに正座して、ニコニコしながら俺が作ったカレーを食べている神無月。
「飯食い終わったら風呂に行くからな」
「うん」
聞いてんだか、聞いていないんだか分からない返事をする神無月。
バルカンを焚く前に着替え一式を持ってこさせてある。この近くに学割がきく安い銭湯がある。春に引っ越してきて見つけた銭湯だ。安いと言っても広い湯船に、ジャグジーやサウナなども有るから、俺は気分転換でたまに利用している。
カレーを食べ終え、人心地が付いた頃合いに、神無月に声をかけて俺達は夜の銭湯へと出かけた。
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