第45話 カラオケ姫

 月曜日には熱も下がり、美琴と一緒に登校した。俺が風邪でダウンしている間は昂ノ月さんが美琴の勉強を見てくれた。


 そして美琴の顔に影が出来るほどに、やつれた顔を見れば、俺が勉強を見るより結果として良かったのかもしれない。


 そして追試の結果はなんとか赤点をクリア出来た事で、俺も昂ノ月さんもホッと胸を撫で下ろすとともに、前期末考査に向けて闘志が芽生えた。美琴が「怖いんだけど」と言っていたが、フフフ、ここは甘やかしてはいけないところだ。



「衣装が出来たわよ!」


 マジですか? これを着るのか? 


 カラオケ店のお姉さん、神谷さんが用意した衣装は、BLラノベの『星屑のナイトメア』の主人公、鳳凰おおとり史也と、相方のすめらぎ颯太。学園に通う制服ではなく、学園祭のコンサートで着ていた派手な衣装バージョンだった。


「ありがとうございます!」


 美琴は喜んでいるが、俺的には恥ずかしい以外の何物でもない。しかもカラオケ店のホールだけに、見知らぬお客さんもこちらを見ている。


「ちょっと着てみてよ。丈とか直さないといけないから」


 ヤレヤレだ。青い派手なコートに袖を通す。美琴は赤いコートだ。


「きゃあぁぁぁ、カッコいい!! 美琴ちゃんは元がいいから鉄板だし、東山君も馬子にも衣装ね!」


 うグッ、なんか軽くディスられてる。


「メイクは私に任せてね! 東山君もバッチリ決めてあげるから!」

「……よろしくお願いします」



「美琴、この人だよ」

 

 個室に入ってスマホ画面を美琴に見せる。


「綺麗な人だね」


 画面にはテレビのカラオケ番組に出ているカラオケ姫こと山崎和佳奈さんが映っている。美少女の美琴を持ってしても美人と言わしめる美女で、アイドル並に熱烈ファンもいるらしい。


「容姿もそうだけど、聴いてみな」


 スマホから流れる山崎さんの綺麗な歌声。音程だけではなく、声量やビブラート等のテクニックも完璧で、このテレビ放映は山崎さんの神回と言われ、四回歌って全てが百点満点だった。


「倭人くんの方が上手いね!」

「オイ! お前の耳はどうなってるんだ!?」


 山崎さんのパーフェクトソングを聴いて、なんで俺の方が上手いんだよ。


「ん〜、この人も上手いけど、心に響かないんだよね。やっぱり倭人くんの歌の方が上手いよ!」


 心に響くか……。多分それは美琴が山崎さんの歌をライブで聴いていないからだ。生で聴いたら多分違う。それにカラオケの点数には心の点数は加味されない。


「まあ、俺たちは歌だけだ。練習を始めるか」

「うん」




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