第2話 隣に棲む臭人
「な、なんで東山君が」
俺の顔を見て驚く神無月。
いやいや、俺も驚いているんだが。俺の隣部屋になんで学年一の美少女が住んでいるんだ!? てか、神無月が腐臭隣人!?
「東山君ってストーカーだったんだ!?」
「誰がストーカーだッ!」
「女の子の部屋に夜押しかけるなんて、変態なんだね東山君は!?」
「誰が変態だッ!」
「今ならまだ間に合うから帰った方がいいよ。じゃあね」
神無月はあっさりとドアを閉めようとするが、俺はドアの縁を握りそれを阻止する。
「待て! 俺はお前に文句があって来たんだよ!」
「い、いや、変態、来ないで!」
うグッ、泣き叫ぶ女子高生の部屋に押しかける変態男子高校生的な図柄だが、ここは俺も引き下がれない。
「話を聞けッつうの」
「いや、ヤメてッ」
「うりゃあ!」
「きゃあ〜」
俺が強引にドアを開けると、ドアノブを抑えていた神無月が前のめりに倒れそうになる。
俺は手を伸ばして神無月を支えるが、倒れかけた神無月に併せて玄関に山積みされた黄色のゴミ袋の山が、雪崩の様に崩れ落ちる。
「グハッ、臭ァッ!」
神無月から香る強烈な香水の匂いと、いつから貯まっていたのか不明な猛烈な腐臭が混ざりあい、俺の意識が飛びそうになる。
「ちょ、ちょっと放してよ変態!」
言われるまでもなく神無月を手放して、空いた右手で鼻を摘んだ。
「神無月、今すぐこのゴミを捨ててこい!」
「なによ! 何なのこの人!」
「隣の住人だ! お前の部屋が臭すぎで文句を言いにきた」
「はい?」
「だから、俺は隣の住人だ!」
「ええええッ! 東山君ってマジのストーカーだったんだ!」
「違うわアホ! それより、さっさとこのゴミを捨ててこい!」
俺達の足元にはパンパンに詰められた黄色のゴミ袋がざっと五、六個は重なり合いながら転がっている。
「ええええッ! 東山君が転がしたんだから、東山君が捨ててきてよ」
「なんで俺がお前のゴミを捨てなくちゃいけないんだよ」
「だって通路にゴミが散乱していたらみんなが迷惑するよ。だから早く捨ててきて」
こ、コイツはアホか? 話が噛み合う気が全くしない。てか、殺意さえ芽生えつつ有るのは気のせいか?
「はぁ、いいよ、捨ててきてやるよ」
俺は少し冷静になり、このゴミの山が無くなれば腐臭もなくなるだろうと悟り、
「ゴミ袋の中、見ないでよね!」
「見るかアホッ、鼻が腐るわッ!」
俺はワンルームマンションのゴミ収集場に、取り敢えずは四つほど運び、また二階の神無月の部屋の前に戻る。
「オイ、何だこれは」
「えっ? ついでにこれも捨てといて」
神無月の部屋の前にはニ個残したはずのゴミ袋が八個に増えていた。
「フ、フフフフフフフフフ」
「な、なによ、気持ち悪い」
芽生えた殺意が花開く瞬間だった。
「お前がそう来るなら徹底的にやってやろうじゃねえか! 俺がゴミ袋を捨て終わる間に、部屋の中の見られちゃ不味い物は片付けておけ! 今日を大晦日にしてやるからな!」
「ええええええええッッッ!」
◆◆◆◆◆
【作者より】
2ページ目をめくって頂きありがとうございます。
2ページ以降は千字前後で連載します。
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