第32話 オペレーション決壊突破

 美琴、お前の快進撃もここまでだ。

 今までの連敗をここでひっくり返す!さっきも無理矢理に乗せられた怒怒音波っつう化け物コースター。ニ秒でニ百Km/hとか狂気の沙汰だ。危うく異世界転移のゲートを越えるところだった。


 しかしだ! お前が入りたいと言った『マッドサイエンティストの館』は有名な絶叫系お化け屋敷。

 DZランドのお化け屋敷じゃピクリともビビった事がない、鉄の心臓のヤマちゃんの実力を見せてやろう。



「ぎゃあああああ!」

「きゃああああああああ!!」

「いやああああああああああ!!!」


 な、なんだコレ!? 


 館の中は血の惨劇になっていた。実験によって解体された人間の死体が至る所に転がっている。それはもうグログロ過ぎて、これ以上のコメントはバンされかねない。


 これは作り物だ! 作り物なんだ! 


「きゃあああ!」


 美琴の横をふわふわと非業の死を遂げた亡霊が横切る。


 俺の右腕にしがみつき、ぶるぶると震えている美琴。絶叫系マシン無双をしていた美琴も、お化け屋敷ではただの怯える美少女だ。


「ヒィイイイイ!!」


 左腕には昂ノ月さんが、腰砕け寸前の及び腰でしがみついている。


 かくいう俺もちびりそうな状況だったりするわけで……。


 カタッと音がして、そちらを見ると青白い光に照らされた棺が見えた。そして白い煙と共に棺が開き、中から起き上がるゾンビ。


 つ、つ、作り物の演出だ! は、ははは、び、ビビるかっつうの!


「や、や、やまとくん、人が……」

「だ、だ、大丈夫だだ。ひ、棺がひ、ひらふだけの、え、演出だ」

「ひ、ひ、ひがしやまさま……、あ、あしが……」


 棺から半身を起こしたゾンビが、棺の縁に手をかけ、続いて足が棺の外に出てきた。


「ま、ま、マジか!」

「こ、こ、こっちに来るよぉぉぉ」


 歩き出したゾンビがこちらに向かってゆっくりと歩き出した。


「に、に、逃げるぞ」

「あ、足が震えて動かないよぉぉぉ」

「こ、こ、腰が……」


 俺も怖い! めっちゃ怖い! しかしここで一人で逃げるわけにはいかない。


「うぉぉぉぉぉ!」


 俺は二人の腰を抱え込むと、軽く持ち上げて、なけなしの気力を振り絞ってこの部屋を脱出した。



【ある男の挽歌】


 たくぅ、ゴールデンウィークはカップルばかり来やがって、ぶっちムカつくワッつうの!


 園の書き入れ時だからしかたないが、リア充だらけで腹立たしいたらありゃしない。どうせ夜はホテルであんあんすんだろ。だったらこんなとこでイチャイチャすんじゃねえよ!


 俺の仕事はこのマッドサイエンティストの館の監視係だ。館内の全監視カメラを見ながら、お客さんの状況と安全を監視している。


「んだァ、コイツは!?」


 若い小僧が二人の美少女に両腕をホールドされて館内をビビりながら歩いていた。


「こんガキャあ、テメエ美味し過ぎんだろゴルァ!!!」

 

 こんなガキがホテルで美少女二人とあんあんすんだと思うと殺意さえ芽生える。プロ専の俺からしたら、ぶっちボコボコにしてえリア充野郎だ。


 俺は業務連絡用のマイクを手に取り立ち上がった。


「緊急ミッション発令!緊急ミッション発令ッ!!オペレーション決壊突破だ!!!ターゲットはA3ブロックを美少女二人に抱きつかれてイチャイチャしながら歩いているクソ野郎だ!成功させたヤツにはバドを1ケース奢るぜッ!!!」


 オペレーション決壊突破。ターゲットをお漏らしさせて恥をかかさせる俺達のアルティメットなオペレーションだ。

 そしてミッション成功率は九九%。発令したら最後、ターゲットは彼女の前でお漏らしする最高のフィナーレが待っている。


『こちらチャーリー、フォックスハウンドを仕掛ける! リア充全殺じゃあ!』

「オウ、殺ったれや!」


『こちらジュリエット、ジェノサイドバスターの使用許可を求む!』

「全弾承認すんぜ、ぶっ放してこい!」


 チャーリーもジュリエットも、美少女にコクッてボロ雑巾になったのはつい先日の事だ。その怒りをぶつけてこい!!!


「フフフ、小僧ぉぉぉ、無事にここから出れると思うなよッ!!!」



◆◆◆◆◆


【作者より】

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