ゆっちゃん帰省。

 我が家のアイドルゆっちゃん(まゆが見たら絶対、ねますね)が、8/1〜8/3の2泊3日で帰省しておりました。


 コロナ禍で、ずっと施設から帰るどころか、面会すらできない状態だったので、本当に久しぶりの帰省です。

 ただ、規制が厳しくて、家以外のどこに行くのもダメ、家族全員が3回目のワクチン接種をしてないとダメ、十勝管外の人や道外の人に会うのもダメ。連れて帰るときには、親の抗体検査が必要で、戻るときには本人の検査が必要。もし、親が検査で陽性であれば帰省させてくれないし、本人が陽性であれば、家に再度連れて帰って、数日間は施設に戻れないということになります。


 知的障害者の施設というところは、それだけの徹底した管理をしていないといけません。利用者さんは、自分たちで判断することが難しいので、他の人を巻き込んで、とんでもなく拡がってしまうのです。

 そして、自分の体調を伝えることが困難な人も沢山いるので、本当に大変なことになってしまいます。絶対的に、ウイルスの持ち込みは避けなければいけない。でも、帰省はさせてあげたい。施設側も多分凄いジレンマを抱えていたに違いありません。



 そんなこんなで、まっすぐ家に帰ってきた、ゆっちゃん。

「ゆっちゃん、晩ごはん、何が食べたい? とんかつ? ジンギスカン?」

「ジンギスカン!」

即答。はい。うちの晩ごはんは、ジンギスカンに決定です。


「何が?」とか「何を?」という、答える範囲の広い質問は苦手なので、いつも選択肢を最大4つくらいまでかなぁ……与えると、食べたいものや、やりたいことを選ぶのです。ただ、その中に気に入った答えが無いときには黙ったまま。母は大いに悩みます(笑)。

 また、「はい」と「いいえ」で答えられるような問いかけでも返事に困っていることがあります。そういう時は、「〜したい人?」「〜が欲しい人?」という聞き方をして、「は〜い」と手を挙げたらYES、挙げなければNOです。

 極々たまに、欲しいものや、やりたいことを言ってくることもあり、まだまだ成長は止まってないのだなあ、と、母は実感できて嬉しかったり。



 そして、一緒に迷路や、塗り絵をしたあと、一人でパズルをして遊んでいました。ゆっちゃんは、パズルは得意。80ピースくらいのパズルを、私より遥かに速く仕上げます。最近、一人で大人しく遊んでくれるようになったので、私は自分の仕事がはかどるようになりました。ずーっと、私のことを見てないとダメな子だったので、凄い進歩です。


 一緒にジンギスカンを食べたあと、テレビを観ていると、テレビではなく、じーっと私の顔を見てくる、ゆっちゃん。

「ゆっちゃん、テレビ観ないの? 何かしたいことがあるの?」

と聞いて、ふと、あー、カラオケだ。と気付きます。お父さんのゲーム機で、オンラインカラオケができるんです。

「歌いたいの?」

「うたいたいの」

「カラオケするの?」

「するの!」

キャー、ふふふっ、と歓声をあげます。


 夫がカラオケの準備をしてくれました。


 さーあ、ゆっちゃんライブの始まりです!!


 ゆっちゃんのカラオケは、基本、シャウトです(笑)。 歌うのが嬉しくて仕方がないらしく、全身全霊、魂の歌を叫びます。それが『じょいふる』だろうが『マリーゴールド』だろうが『アンパンマンのマーチ』だろうが『オバケなんてないさ』だろうが。のってくると、ヘッドバンキングも入ります。『何度でも』は、ヘビィメタルでしたか。

 基本的にガイドボーカルつきのやつを選曲しますが、ないやつは、私がガイドボーカルのような邪魔にならない程度のヘルプをします。それ以外は、ゆっちゃんオンステージ。会場は満員です。アーティスト含め、定員3人なのは秘密にしておいてあげてください。

 いつも感心するのは、ゆっちゃんの記憶力です。ゆっちゃんは、文字が読めません。なので、これからかかるのが何の曲なのかモニター画面に書かれていてもわかりません。なのに、イントロだけで、何の曲かわかるんです。好きな曲になると、歌詞が全部入っている。まあ、上手に発音することができないので、他の人が聞いても識別できないでしょうが(笑)。

 

 こうして、1時間半のライブを終えて、満足して、風呂に入って寝ました。


 翌日は、朝から、

「お母さん、パズルしよー」

とのお誘いで、一緒にパズルをし。

 昼からは、ゆっちゃんライブ2日目、第一部。

 夕飯後に、第二部がありました。さすがに、お父さんは風呂に逃げました。ズルイな、おい。


 その翌日は、もう施設に帰る日。早かったですね〜。あっという間に過ぎてしまいました。

 あっ、勿論、ゆっちゃんライブ最終日、ありましたよ〜。でも、さすがに本人も飽きてきたらしく、40分くらいでマイクを置いて去りました。引退でしょうか?


 こうして、2泊3日の帰省を十分に楽しんで、ゆっちゃんは、施設に戻っていきました。

 帰りの車の中、ゆっちゃんに、 

「ごはん美味しかった?」

と聞くと、

「おいしかったー」

と答えます。

「何が一番美味しかった? ジンギスカン? トンカツ?」

返事をしません。これはもしや?

「お母さんの玉子焼き?」

「はい!!」

キャッキャ喜ぶゆっちゃん。もーね。母であることの喜びですよ。



 こうして、ゆっちゃんは、私に癒やしと、体力的な物凄い疲労感を十分過ぎるほどくれて、施設に帰って行ったのでした。

 


※ゆっちゃんをご存知ない方へ。

↓こちら、『ゆっちゃんのお話』で紹介しています。ちょっとヘビーでシビアなお話ですが……(汗)。

https://kakuyomu.jp/works/16816927862683528697

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