きっかけと信頼

 また、双極性障害そうきょくせいしょうがいの話になります。ちょっとヘビーな話ですし、ちょっと怖い話でもあるので、苦手な方はパスして下さい。



 前に、双極性障害の躁状態そうじょうたいになった時のことを書きましたが、多分、そのきっかけは、幼い頃の記憶を突然思い出したことでした。



 私は、小学校高学年の時、酷いいじめをうけたショックからか、それ以前の記憶があまりありません。


 それが、ある日突然、保育園の時のとてものどかな風景を思い出したのです。


 お昼寝の時間に、毛布のいろんな色のところをちょっとずつむしって、いろんな色が混ざった、ふわっふわの玉を作って楽しんでいて、先生に叱られました。

「緋雪ちゃん、お昼寝の時は、ちゃんと寝なさい」

 それは、のどかで、優しく、平和で、あたたかい風景。


 だったのに。



 その風景から一気に、もうそれはそれは一気に、自分の過去がどんどんどんどん脳内に流出します。しかも、その時の感情と共に。辛いことも苦しいことも痛いことも全てリアルタイムのように一気に。

 辛い。辛い。苦しい、痛い、誰か止めて。助けて、助けて、助けて……



 今思えば、フラッシュバックだったんでしょうね。

 その辺りからの記憶が無くなっていて、どうもそこから「躁状態」が始まったようです。躁状態の時以降暫くの記憶も殆どなく、そこから3年間くらいの記憶が未だにはっきりとはしていません。



 実は、今、その、記憶が殆どなかった時に、あれをやらなかった、これができてなかったという話を引っ張り出されて、どうしてよいものかと……。


「記憶喪失」って、きっとテレビや小説の中だけのことだと思われてるんでしょうね。嘘つき呼ばわりされる。

 漫画やドラマじゃないんだよ、現実なんだよ。フラッシュバックも、躁状態も、記憶喪失も、本当にあることなんだよ!


 まあ、殆どの人が経験することないんでしょうから。そんなに身近に記憶喪失の人がいなくて、現実的なものとしては考えにくいのかも知れませんね。



 それにしても。私が幾ら記憶がなかったとはいえ、その時に貸したお金100万円以上返してないとか言われても……。

 私、記憶なくても、記録はしている女なので、家計簿はきっちりつけてました。借りていたであろう金額と、返した金額、必要だろうと渡した金額、お小遣いとして足してあげた金額を比較すると、断然こちらから渡した金額の方が多い。


 それでも、

「あなたは、あの時、わけがわからなくて覚えてないのかもしれないけど!」

 とか言われたら、もうどうしようもないですね。記憶が無い奴に言ったもの勝ちなんですかね?


 夫が間に入ってくれて、お金のことは誤解ということで片付けてもらいましたが、私はもう、その人のことを信用することはないと思います。



 あんな辛くて苦しくて恐ろしい思いをしても、一生懸命、できる範囲で頑張って生きてるつもりなんですけどねえ。

 なかなか理解してもらえないって悲しいし、情けないことですよね。


 母いわく、「他人に期待するな」とのことですが、それもなかなか切ないことのような気がしています。

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