ご飯は褒めよう。

「うまっ!」「なにこれ、めっちゃおいしい〜」 なんて、テレビの中の人たちみたいに、大きなリアクションをしてくれとは思いませんが。



 私の嫁いだ先の家族は、誰も私の作ったご飯を「美味しい」と言って食べたことはありません。不味いのか? でも残さず、おかわりまでして食べるし、おかずが残ることなど殆どない。

 娘たちは「美味しい!」と言って食べているので、多分、美味しいのだと思うのですが。


 義母様が義妹と一緒に住むようになり、義父様と夫、娘と私になった時に、義母様が、おかずを作ってきて、テーブルの上にトン。

「不味いよ!」

なんですか、それは? お義母様??


「うちの連中は、文句しか言わないから。何も言わなかったら、美味しいってことだから」

「えー。そうなの?」

「せっかく作ったのに文句言われたら腹が立つから、先回りして、『不味いよ!』って言っておくの」

なるほど〜。


 しかし、それ、切なくないですか、お義母様? っていうか、そこは怒った方がいいのでは……?


 なんで人が一生懸命作った物を「美味しい」って言えないのかな?


 それでも、そういう家庭なのね、ご飯については「美味しい」とか言わないのね。と思ってたら。義父様は、自分の兄弟姉妹から貰ったものについては、馬鹿みたいに褒める。 

「これは美味いな〜。かあさん(私)も食べてみれ?」


 それは何ですか私の料理が不味いから伯父伯母叔父叔母の持ってきた私にはとても美味しいとは思えない料理を真似してみせろとおっしゃってますかなんなら明日から三食それにしますかていうか美味しいって言えるんかいほな毎日言えや私の作ったもんはそんなこと言うにも値せんっていうんかい……

 

 というテロップが、頭の中を、句読点をつける余裕もなく流れていきます。


 夫に言うと、義母様が言った通りの返事が。

「文句言われないときは、美味しいと思ってるから」


 なんでだー。言ったら損なのかよー。


 そして、そういう夫も、義父亡き後、ご飯はテレビを観ながら、スマホでニュースを読みながら、Padでゲームをしながら食べるようになりました。


 逆に、それで味わかる方が凄いわ。


 でも、文句はちゃんと言う。「美味しい」とは一言も言わないのに。

 たまに「美味しい?」と聞くと、「うん」……え? それだけ?


 で、ああ、この人も言わない人だと思うじゃないですか?


 違う。


 言うんです。回るお寿司屋さんとか、パスタ屋さん。までならまだ許せるが、ファミレスのカツカレーとか、弁当屋の弁当に感動的なくらいの顔で「美味い!」って言われた日にゃ……殺意まで感じますよ、旦那様。



 ただでさえ好き嫌いが激しすぎて、私くらい料理のレパートリーの多い女じゃなきゃ、夫の料理係は務まるまい、と思いながら三食作っているのに、「美味しい」の一言もなく、時には「はい、なんとかやっつけました」って言われるんですが。

 

 もー、凝った料理なんか作る気にもなれず、揚げるだけの冷凍コロッケにキャベツ刻んだだけとか、チンするだけの角煮とチンした葱だけとか、あっためるだけのハンバーグと炒めた玉ねぎとか。ちょっとだけ手はかけるけど、最早作ったおかずではないものを出すことが増えました。

 更にここに鬱が入ると、カップ麺とかレトルトカレーとか。専業主婦にあるまじきメニューに……。


 正直、褒められもせず、文句しか言われないと、料理に対するモチベーションはダダ下がり。「なんとかやっつけました」とか言われると、やっつけて頂かないといけないほどの酷い料理だったんですか? と聞きたくなる。



 世の中の旦那様、舅姑様、お子様がた。毎日でなくてもいいんです。たまには、台所係の料理は褒めましょう。そうでないと、あなた方の口に入る料理は、段々段々と不味くなって参りますよ?


 

 私も、たまには、ブチキレた方がいいのかなあ……と思いながら、今日も手抜き料理を作ります。


 切ないねえ……。

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