負けず嫌いな人
負けず嫌いなら負けてないと思いながら生きている私ですが、その私に負けたくない子がいました。
今日(もう昨日になりそうですが)書いた『紅い薔薇を手折るなかれ』の中に、生け花のシーンが出てきます。
私は、華道部の部長でした。(いや、紫苑のモデルではないですよ)中学に入学したら、いきなり2つ違いの親戚の姉ちゃんに捕まり、「3年生が文化祭を最後に引退したら、2年生がいないから部が潰れる。お前が引き継げ。部長になれ」などと無茶ぶり。えー。マジっすかー? 美術部入りたかったんですけど(泣)。
仕方ないので、入学初日に入部、1年生の後期から、華道部の部長です。私と仲の良かった友達も無理矢理引っ張り込んで、最初は3人だったかなあ。2年生になると、純粋に生け花を習いたい後輩や、単なる私のファンの子たち(笑)、3年生になる頃には、そこそこの人数になっておりました。
後輩たちは、あだ名のように、私のことを「部長」と呼んでいたし、私自身、ずっと「部長」でいることに何の違和感を感じたこともありませんでした。
けれど、「彼女」は、それに不満を持ち続けていたようです。「何で私はずっと副部長なの?」って。
先生が、私の作品は一つも直さないのに、彼女の作品には時々直しを加える。それも気に食わなかったようです。そこは先生の好みが、たまたま私の作品と合っていただけ。私は彼女の作品が、自分のより劣っていると思ったことは一度もありませんでした。
彼女と私は、別の高校に進学しました。私の通っていた高校の華道部は、中学の時と流派が違い、私の好みではなかったので、入部しませんでした。でも、彼女の学校は、通っていた中学のすぐ隣。先生も同じ。勿論、流派も同じです。彼女はそこで凄く頑張ったみたいです。
大学生になって、ある日、生け花の話になって、「そうそう、うちらはさ、〇〇流だったじゃない?」って私が言った途端、彼女は顔色を変えて怒りました。
「うちらとか言わないで。同じレベルだと思わないでよ!!」
みたいに。
余程、私が、先輩に命じられただけで3年近く「部長」をやっていたことが気に入らなかったようでした。悔しかったんでしょうね。彼女的には。
卒業して何年か後に、彼女が「師範」になったところまでは、母から聞いて知っていました。今では多分もっと上の人になっていることでしょう。
負けず嫌いも、そこまでいくと、大したものですよね。彼女の人生にとっては、物凄く価値のあるものになったと感心します。
結局、彼女とは、全然別の機会に、私が静かにキレて、縁を切りました。
花を生ける機会が、今でも時々あるのですが、その度に、彼女のあの負けず嫌いな顔を、セリフを、思い出すのです。
もう二度と会いたくない人だけれど。
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