母の味。

 ミルキーですかね?(違)。


 味付けって、母に似るっていうけれど。私と母の味付けは、全く違います。


 母はとにかく仕事に忙しい人で、私が料理できるようになると、作れるものは大抵私が作ることになっていました。


 顕著なのが、「カレー」でございます。


 小学校3年生だか4年生だかのキャンプのとき、作り方を教わって、家で再現してみせたら、

「あー。これでカレーはあんたに任せるわな」

と、母はカレー作りを早々と投げました。

 こうして「カレー係」を仰せつかった私は、カレーの日には毎回作ることを余儀なくされ。何事も熱心に研究する私は、いろんな味を加えることによって、家族に「美味しい!!」と言われるカレーを作れるようになりました。


 弟たちも、その味から派生して、上の弟も下の弟も、それぞれにオリジナルカレーを作ります。

 上の弟などはカレー作りには命をかけていて、嫁さんにも作らせないくらいのこだわりよう。義妹、楽できていいですね。毎日カレーにしてもらいましょう。


 で。


 そんなある日、下の弟が突然言います。


「かーちゃんのカレーが食べたい」


「へ?」と顔を見合わせる上の弟と私。


上「そういや、お母さんのカレーって食べたことある?」

下「記憶がないんよね」

上「ねーちゃんのカレーしか覚えてないような……」

姉「嘘やん。お母さんもカレー作ってたよ」

下「姉ちゃん、かーちゃんのカレーの味、覚えてる?」

姉「え……、わからんけどさ……」


 ということで、これはもう母にカレーを作ってもらうしかない。と。


「もー、なんなー、なんで私がカレー作らないかんの~?あんたらみんな自分で作れるやん~」

とかなんとかブツブツ文句言いながら、母が作ってくれて。


 食べてみて、姉弟、「ん?」「ん~?」「んんん?」

姉「なんか、なんていうん?」

上「なんて言えばいいんかな?」

下「えーと、なんちゃない(なにも特別ではない)?」

皆「あーね」


 不味いわけでもないが、特別美味しいわけでもなく。どっか懐かしいというより、どこででも食べた記憶が……。


姉「なんやろうな? この『母の味』?」

上「凄い微妙やな」

下「かーちゃん、このカレー何入れた?」


 そう聞くと、母は箱を差し出しましたとさ。

「この通りに作ったんやん」

そしてそこには「バーモントカレー中辛」の箱。


「…………」


 ひねりも何もなしですか、お母様。


 というわけで。


 私たち姉弟の「母の味」は、バーモントカレーの箱の裏にあるらしいです。

 召し上がってみたい方、是非作ってくださいませ。

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