女神達の溜まり場~年収8000万超えのラノベ作家であることを隠していた僕が一人暮らしを始めたら、美少女達を養うことになりました~

ミポリオン

第001話 発覚と同居

「あれ?たっくんじゃない?」


 僕が家の門から中に入ろうとしていると横から声を掛けられる。


「あ、夏美姉ちゃん」


 僕に話しかけてきたのは僕と同じ学校に通っている従姉妹の夏美姉ちゃん。


 茶髪をサイドテールにまとめ、気の強そうな瞳をもつ美少女で、芸能事務所からスカウトが来るくらいにスタイルもいい女性だ。特に母性の象徴である一部分は平均を大きく超える凄い破壊力をお持ちでいつも目が奪われてしまう。


 そして何を隠そう僕の初恋の人である。


 僕は彼女に初めて会った時の記憶はないけど、母さんの実家に行けば彼女の後をずっとくっついて遊んでいた。


 それに家も近いので学校も同じになり、いつもいじめっ子から守ってくれたのは夏美姉ちゃんだった。


 そんな強くて真っ直ぐな彼女がいつの間に大好きになっていた。


 それが高校に入ってからはお互い少し疎遠になっていたんだけど、今日は思いがけない再会だった。


「こんな所でどうしたの?」

「えっと、ここ僕の家だから」


 そんな背の高い彼女が少し目線を下げて僕に尋ねるので、僕は少し言いごもりながらも事実を伝える。


 僕たちの前にあるのは海外の映画スターもかくやと言わんばかりの豪邸。一般人では到底住むことが出来なさそうな程の大きさだ。


「え?引っ越してきたの?」

「うん」

「おじさんとおばさんは?」

「ううん。僕一人で住むんだ」


 僕は首を振る。


 父さんと母さんは僕が小説を書いていることを理解しようせずに勉強しろだの、習い事をしろだの煩かった。


 でもそれがお金になると分かった途端、掌を変えしてきて、ゴマをするようになってきたのであまり関わり合いになりたくなかった。


 幸いじいちゃんが僕の味方だったし、父さんと母さんはじいちゃんに逆らえないので、僕は何事もなく家を出ることができた。


「こ、こんな大きな家に!?」

「うん」

「どうやったらこんな家に住めるの?」

「僕結構稼いでるから」


 信じられない、という表情を浮かべながら尋ねる姉ちゃんに僕は答えた。


「どのくらい?」

「年収八千万」

「は!?」

「は超えてるはず」


 困惑する夏美姉ちゃんにさらに追い打ちを掛けるように答えると彼女の時が止まった。


 やっぱり夏美姉ちゃんも信じてくれないのかな……。


「ど、どうやってそんなに稼いだの?」


 しばらくして少し落ち着いてきたらしい七海姉ちゃんが僕に尋ねる。


「僕小説書いてたでしょ?」

「ああ、趣味で書いてたやつね」


 昔夏美姉ちゃんには良く僕が書いた物語を読んでもらっては感想を貰っていた。彼女が「面白い!!」「続きが読みたい!!」そう言うからこそ自分はもっと小説を書きたくなった。


 夏美姉ちゃんは本当に僕の恩人だ。彼女がいなければ僕は今小説を書いていなかったと思う。


「うん。それでウェブ小説として投稿してたら出版社から打診が来て書籍化したんだ」

「へぇ〜、凄いじゃない。なんて小説?」


 僕が稼いだ手段について納得がいったらしい夏美姉ちゃん。


 やっぱり夏美姉ちゃんは僕の理解者だった。

 そこで僕がどんな作品を書いているか気になったらしい。 


「夏美姉ちゃんが知ってるか分からないけど、ダンジョンドリフターズ」

「え!?アニメ化も劇場版もやってるあの神作品のダンドリのこと?」


 夏美姉ちゃんは僕の作品のことを知っていたみたいで確認するように僕に問いかける。


「え、うん、そうだけど?知ってるの?」

「もちろんよ!!私もあの作品読んでるのよ!!すっごく面白いよね!!アニメも劇場版見に行ったし、凄く面白かった!!あの作者がたっくんだったとはねぇ!!凄い!!」

「うぐっ」


 感極まった夏美姉ちゃんが僕をギュッと抱きしめる。


 夏美姉ちゃんの甘い匂いとその柔らかい感触にクラクラとしてしまいそうになるけど、それ以前に苦しくてクラクラしてきた。


 それにしてもまさか夏美姉ちゃんが僕の作品を読んでてくれたなんて嬉しいな。


―タンタンタン


 僕は夏美姉ちゃんの腕のあたりをタップするように叩くと力が緩んだ。


「ぷはぁ」

「あら?ごめんね、つい」


 頭を掻きながら頭を軽く下げる夏美姉ちゃん。


 僕的には役得でもあるけど、ああいうスキンシップは男として見られていないみたいで少し悔しい。


「全くもう子ども扱いしないでよ、これでももう立派な男なんだからね」

「ふーん。どの辺が男なんでしょうね」


 僕が頬を膨らませて起こると、夏美姉ちゃんは僕の全身を舐めるように見回して鼻で笑う。


 むきー!!悔しい!!


 僕は少し成長期が遅いタイプで最近ようやく背も伸びてきた。ここからが勝負だ。


「どこからどう見ても男だよ」

「ふふふ、相変わらず可愛いんだから。それで本当にこんなに大きな家に一人で住むの?」


 僕は力こぶを作ってアピールするも、笑顔で躱されてしまった。そこで不思議そうな表情に切り替えた夏美姉ちゃんは僕に尋ねる。


「うん。一人の方が気楽でいいし」

「そっか。でも掃除とか洗濯とか色々大変じゃない?」

「その辺はそういうサービスいっぱいあるから頼もうかなって」

「ふーん。でもさ、そんなことしなくても解決する方法があるよ?」

「え?どういうこと?」


 確かに一人で住むにはめちゃくちゃ広いので掃除がものすごく大変だと思う。だけど、巷には家事代行サービスなるものがあるので、それを使えば問題ないと思っていたんだけど、夏美姉ちゃんには別の解決策があるらしい。


 僕はその解決策が出てこなくて、思わず聞き返してしまう。


 いったいどんな解決策があるのだろうか?


「私が一緒に住んであげよっか?」


 夏美姉ちゃんが小悪魔のような笑みをクスリと浮かべて、スッと僕の耳もとに顔を寄せて囁く。


 女の子の甘い香りが再び僕の鼻腔をくすぐり、心臓の鼓動が跳ね上がる。


「え!?」


 僕はそのあまりにも甘美な誘いに驚いて飛び退いてしまった。


「何を驚いているの。従兄妹同士だし、他人が来るよりよっぽどいいでしょ?」

「そ、そうだけど、本当に良いの?そんなことしてもらって。夏美姉ちゃん受験生だよね?」


 呆れるような顔で呟く夏美姉ちゃんに、僕は未だに動揺が治らないまま問い返す。


 夏美姉ちゃんは僕の二つ上。つまり受験生。今まさに進学に向けて勉学に励んでいるところのはずだ。


 そんな姉ちゃんが無理して僕の身の回りの世話をすることで大学に落ちたら目も当てられない。


「大丈夫よ、これでも志望校はA判定貰ってますからね」


 そんな僕の心配をよそに腰に手を当ててドヤ顔をして胸を張る彼女。その際、少し揺れた胸に目を奪われたのは内緒だ。


「夏美姉ちゃん頭良いもんね。凄いな」

「ふふふっ。私なんかよりたっくんの方が凄いわ。まさかあのダンドリの作者だったなんて……。あ、後でサイン貰ってもいい?」


 僕が感心していると、少し頬を赤らめて僕を眺めた後、顔を逸らして僕にサインを頼む。


 その時の表情は僕一可愛いと思った。


「そんなんでいいならいくらでも書くよ」

「やった!!友達に自慢できるわぁ!!」


 僕か快く引き受けると、夏美姉ちゃんは飛び跳ねるようにしてはしゃぐ。


「あ、自慢するのはいいけど、僕のこと言わないでね」

「分かってるって」


 僕が忘れずに忠告すると、それくらいちゃんと分かってると言いたげな顔で夏美姉ちゃんは返事をする。


 夏美姉ちゃんは信じてくれると思ったから話したけど、他に信頼できる人もいないから話すつもりはない。


 お金の匂いを嗅ぎつけた禄でもない人たちが近寄ってくるからね。そう言う点でも夏美姉ちゃんが身の回りのことをやってくれるのなら渡に船だ。


「それでいつから来てくれるの?」

「そんなの今からに決まってるでしょ!!」


 僕が尋ねた途端に腕を取って門を開けて、敷地内に入る。


「え!?荷物とかはどうするの?」

「必要最低限以外の荷物は後から送ってもらえればいいでしょ!!必要なものは後で取りに行ってくる!!早速中を案内してよ!!」

「わ、分かったよ」


 有無を言わせない夏美姉ちゃんは、僕を引っ張っていく形で家の敷地内へと入っていく。


 こうして夏美姉ちゃんがこの家に僕と一緒に住むことになった。


 これが僕の青春のほんの序章に過ぎない事を僕は知らない。

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