第043話 真・サンドイッチ

「ふぅ。今日の分はここまでにしよ」


 僕はその日にやるべき作業のノルマを終わらせ、再び背を伸ばす。時計を見ると二十三時。そろそろ寝るにはちょうどいい時間だ。


 今日は幸い見たいアニメもやってないので夜更かしする必要もない。だから僕は隣の寝室に向かった。


「はっ?」


 そこには目を疑う光景が待っていた。


「あ、たっくん、仕事終わったの?」

「お、お疲れ様」

「え、あ、うん、終わったけど……」


 すでにベッドを含む家具は運びこみ、自分の部屋で問題なく寝ることが出来る二人が僕の部屋いることは勿論疑問だけど、それはまぁいいとして、ベッドに寝転がっている二人の恰好がヤバかった。


 所謂ベビードールと言われる。スケスケのヴェールみたいな布の下にキワドイ下着が透けている格好をしていた。


 夏美姉ちゃんは少し恥ずかしながらも明け透けに、緋色は明らかに無理をしているのが丸わかりで、顔を真っ赤にしながら僕を直視できずにうつ伏せの状態を起こして振り向いて僕を出迎えていた。


 僕はあまりに性欲を刺激するその姿に思わず凝視してしまう。


 僕の体の一部に血が集まりそうになるけど、お経を唱えて煩悩を頭から追い出すことで堪える。


 おかげピクリと反応するだけで済んだ。


「あ、ど、どうかな、この格好?可愛い?」

「ど、どうかしら?」


 しかし、そんな僕を知ってか知らずか、二人はベッドの上に膝立ちになって、臍の上の位までしかないヒラヒラした半透明の布を少し引っ張って僕に見せつけるようなポーズで尋ねる。


「うん、可愛い、というよりは少しエッチすぎると思う……」

「うふふ、そうかな?まぁ確かにそうみたいだね」

「あ……」


 僕は直視できずにチラチラを見ながら答えると、夏美姉ちゃんは僕の下の方を指さす。緋色も釣られるようにその指の先を見て声を漏らした。


「あっ!?」


 僕はさっき確かに我慢したはずなのに、少し恥じらいながらも僕の前で見せつけるような二人の姿に、体が勝手に反応してしまっていることに気付かなかった。


 僕は思わず反応してしまった部分を両手で抑えて隠す。


「拓也君も男なのね……!」

「そ、それは二人が魅力的過ぎるから……」

「「~~!?」」


 チラチラと僕の手の辺りを見ながら赤い顔のまま答えると、二人も顔を赤くした。


 僕なんかおかしなこと言ったかな……。


―ガシッ


「え、え、え、え、えぇええ!?」


 僕は二人に手を掴まれて、そのまま為す術なく、ベッドに引き倒された。


「全くそんなこと言われて我慢できると思ってるの?」

「ホントね」


 二人が両サイドから僕を見下ろす。


 二人の裸体に等しく、それぞれスタイル抜群の夏美姉ちゃんと、スレンダーながらも程よい母性をもち、均整の取れた肢体の緋色の逆光の姿が、艶めかしくて僕の一部に一層血が集結する。


「えい!!」

「えい!!」


 二人が僕にとびかかってきて僕の両脇は二人に占領されてしまった。二人の頭が僕の胸と肩の間くらいに乗っかり、二人の膝が僕の太腿の上をサラリと撫で、僕の背筋に電気のような寒気が突き抜けた。


「うっ」


 二人の果実のように甘く、それぞれの違った男性の本能に突き刺さる女の子の香りが僕の鼻孔にダイレクトに届き、両脇には女性として程よい柔らかさが肌から脳に居稲妻となって駆け巡る。


「ちゅっ」

「ちゅっ」


 そして極めつけは両頬への艶めかしいリップ音。そして同時に肌とは違うプリっとして柔らかく、湿った感触が僕の頬から甘美な刺激となって脳を溶かす。


「全く二人とも強引なんだから……。それはそうと、二人とも部屋はどうしたの?今日せっかくベッド搬入したのに」


 僕は強引な二人に尋ねる。


 せっかくベッドを買って部屋に入れたのに、全く使うこともなく、僕の寝室にくるとはこれ如何に。


「もう恋人同士なんだし一緒に寝てもいいかなって」

「そ、そうよ。恋人同士なら一緒に寝るくらい当然だわ」


 二人は僕の質問に対して下から僕の顔を見上げて答えた。


 僕はまだ慣れない顔の近さに二人の顔を見ないようにする。


 確かに恋人同士ながら一緒に寝てもおかしくはないし、最終的には行くところまでいくのは当たり前のことだけど、流石に初日からこれは展開早すぎる。


 しかし、僕も可愛い女の子と寝るのは嫌じゃないし、ましてや彼女の方から誘ってきているとなれば、断るのは無粋だよね。


「はぁ……分かったよ。一緒に寝よ」

「あはは、そうこなくっちゃ」

「た、拓也君と一夜を共に……」


 僕が呆れるように答えると、夏美姉ちゃんはより密着してきて、緋色は僕と寝ることになったことで顔を真っ赤にして俯いていた。


「ほらほら、もう寝るよ。夏美、布団かけて」

「それはいいんだけど、たっくん、その大丈夫なの?それ?」


 僕が二人を寝るように促し、夏美姉ちゃんに僕に布団を掛けるようにお願いすると、夏美姉ちゃんは何かを指し示す。


 僕は視線を下げると、ギンギンになった僕の体の一部だった。


「だ、大丈夫だよ。ただの生理現象だから。明日の朝トイレに行けば問題ないよ」


 僕は流石に恋人になったばかりで一線を超えるのは憚られたので、大丈夫じゃないけど、嘘をついた。


「そう、分かった。苦しいなら言うんだよ。私はいつでもオッケーだから」

「わ、私も彼女として準備できてるから、い、いつでも言ってね」


 なぜか二人はすでに心構えができているらしいけど、あまりにムードに欠けている気がしたので流されずに踏ん張った。


 僕は気合で寝た。


 そのせいか、僕は夢の中で二人とセックスしていた。もうどれほどヤッていたか分からない程に。

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