第045話 再び問い詰められる

「んん…」


 朝の陽ざしが窓のカーテンの隙間から差し込んできて僕の顔を照らす。僕はその眩しさに目を覚まし、自分の部屋である事を認識する。


「す~、す~」


 辺りを見回すと、夏美姉ちゃんはすでに起きていて、僕の右隣りに緋色が寝ていた。掛け布団の隙間からベビードールが透けて蠱惑的なブラがチラリと目に入る。


 僕はその無防備な姿を見てしまったことに対する罪悪感から思わず目を背けると、今日もある事に気付いた。


 それは今日も下半身がスッキリと軽いということだ。昨日に引き続き、今日も軽い。寝る前はアンナにギンギンでパンパンだったのに、これはどういうことなんだろうか。


 二人の女の子に挟まれて寝るとそういう効果でもあるのかもしれない。


「二人とも~朝だよ~」


 ちょうど僕の意識が覚醒してきたころに夏美姉ちゃんが、寝室に僕らを起こしにやってきた。今日も朝からメイド服に身を包んでいる。


 童貞を殺しそうなハイウエストのミニスカートと、胸を強調しているその服は、朝から少々刺激的だ。


「な、夏美おはよう」

「たっくん起きてたんだ。おはよう。気分はどう?」


 まだ慣れていない呼び捨てで夏美姉ちゃんに挨拶すると、僕に気付いた夏美姉ちゃんが挨拶を返し、また今日の気分を尋ねてくる。


 なんなんだろう、これ。

 とりあえず気分が良い事には違いないからそう答えておこう。


「え?今日もとっても気分がいいよ?」

「それは良かった」


 俺の返事に満足そうに頷く夏美姉ちゃん。


―シャーッ


「緋色、朝だよ、起きて」


 彼女はベッドを回り込み、カーテンを全開にした後、反対側に居る緋色の肩を揺すって起こし始める。


「ん……んん……眩しい」


 夏美姉ちゃんと窓から差す光によって目を覚まし、身を起こす緋色。


 布団が彼女の体から落ち、その姿を露にする。


 日の光によって逆光になったその寝ぼけ姿は、とても艶めかしくてエッチだった。とても眼福だった。


「緋色、流石にその恰好でご飯ってのはアレだろうから、着替えてからダイニングの方に来て」


 夏美姉ちゃんが緋色に指摘すると、緋色は僕の顔と自分の恰好を何度も視線で行き来した後、ボンっと爆発でもしたかのように一気に顔を赤らめて俯き、そそくさと部屋を出ていった。


 朝になって我に返ってみると、昨日の自分がしたことが物凄く恥ずかしくなったのかもしれない。


 そんなことにはならず、朝でも僕をからかってくるのは夏美姉ちゃんだけど。


「ほらほら、ボーっとしてないで、たっくんもダイニングに来て。朝ご飯出来てるから」

「わ、分かった」


 僕は夏美姉ちゃんに促され、ベッドから降りて一緒にダイニングに向かった。着替えてきた緋色と共に僕たちは朝ご飯を摂り、三人で学校に向かった。


「おい、今日は水上さんじゃなくて篠宮さんと一緒にいるぞ」

「マジかよ、アイツ一体どうなってんだよ、羨ましい」

「絶対何か弱み握られてるに違いないぜ」

「なんであんな陰キャな男に美少女ばかり……」


 学校が近づいてくると二人と腕を組んで歩いている僕に今日も今日とて色んな視線が集まる。


 昨日までよりも嫉妬がキツイ。


 そう感じるのは二人との関係性が変わったからだろうね。


 僕はその視線を堂々と受けながら登校するのであった。


「拓也君、また後でね」

「うんまた後で」


 教室に入ると、緋色は自分の席が離れているので僕と別れて、席に向かっていった


「桐ケ谷氏、一体どういうことなんですかな?」

「そうだぞ拓。今日は篠宮さんと登校してきたみたいじゃないか?」


 俺が席に着くや緋色と連れだって入ってきたことをグイグイと攻め立てる。


「いや、昨日襲われているところを助けて保護したんだ。ちょっと家を知られているっぽかったから」

「なんと王道的な展開なんですかな?やはり桐ケ谷氏は拙者達とは違ったリア充やろうだったということですかな?やはり爆発した方がいいのではないですかな?」

「一つ屋根の下で暴漢に救われた女と救った男、絶対なにもなかったわけがない!!白状しろ!!」


 二人とも会話の内容は違うが、その表情には悔しさがにじみ出ていた。


 しかし、これ以上の事を彼らに伝えることは出来ない。助けたことに関しては彼女の仕事や過去の事が絡んでくるし、関谷が考えているようなことは実際起こっていて、そんなことを言った日には学校中にそのことが知られてしまう。


 最悪緋色と付き合っているということがバレてしまうのは構わないけど、彼女は大人気Youtuberであり、テレビに出る芸能人でもあるので自分から喧伝するつもりはない。


 ただ、一緒にお風呂に入っただとか、メイド服とベビードールで誘惑してきたとか、一緒に寝たとか、そういうことを言ってはいけないと思う。


 僕自身はどうでもいいとして、また彼女の身に危険が迫るかもしれないからね。


「そんな甘い展開はないよ。助けて家の部屋を貸して泊めてあげたってだけ。君たちの想像しているようなことはないんだからね」

「ほほう。そこは惚れるという選択肢しかないところですな。残念ですな!!」

「本当になんにもなかったというのか?お前本当に男か?」


 僕の返事に先程までとは打って変わって僕をあざ笑うかのような態度を取る二人。


 この二人に笑われても夏美姉ちゃんと緋色と付き合ってるという事実は変わりないもんね、と、バカにされた気持ちを誤魔化した。


「しょうがないじゃん。無いものはなんだから」


 特に気にした様子のない二人に、僕は二人を誤魔化せたことに安堵しながらホームルームが始まるまで会話を続けるのであった。

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