第021話 魅惑のサンドイッチ
「お邪魔しまーす」
「お邪魔します」
僕がベッドに横になると、二人が僕を挟み込むように両側に入ってくる。薄手のパジャマ姿で胸元を大きく開けた二人が、徐々に僕の隣に迫ってくる光景は、何と言うか淫靡な感じで物凄くドキドキしてしまった。
「うふふ。ホントに昔に戻ったみたい」
「そうだね」
二人が僕を挟んで笑いあう。
こうやって三人で並んで寝るのはいつぶりだろう。
おそらくホントに小さなころ、お互いが小学校低学年までだと思う。
いつしか二人の体が女性としての成長を始め、一緒に色んな事をしなくなっていったと思う。お風呂に入ったりとか、着替えだとか。それに付随して一緒に寝るということもしなくなった。
二人ともスタイルが滅茶苦茶いいし、女性としての魅力を上げているからそんなことしたら、僕も男として成長したせいで反応してしまうから困るんだけどなぁ。
全くこの二人は僕の気も知らないで……。
「はぁ……」
僕は思わずため息を吐く。
「あら、こんな美少女達と一緒に寝れるのに、たっくんは嬉しくないの?」
僕のため息を目ざとく見つけた夏美姉ちゃんが僕の片腕に絡みついてきて、挑戦的な笑顔を浮かべる。その際に柔らかな二つの対男性最終兵器を押し付けられ、イチゴのような甘い匂いが僕に纏わりつく。
「うっ。い、いや……そんなことないけど」
「じゃあ、なんでそんなため息をついてるの?」
「そ、それは……」
「私も気になる」
今度は逆の腕をもう一人の女性に絡められ取られてしまう。それは夏美姉ちゃんと別のベクトルで魅力的な女の子。雫姉だ。
「し、雫姉!?」
「ふふふ、ほら、雫も気になるみたいよ?」
雫姉も僕の腕にその立派な主砲を押し付けてきて、オレンジみたいなフレッシュで爽やか香りが漂ってくる。
二人の甘い香りに挟まれて僕は脳髄まで溶かされてしまいそうな気分になった。
「だって……二人とも可愛いから……」
僕は小さな声で呟く。
「聞こえないよ、たっくん」
「拓也、聞こえない」
二人がさらに僕に詰め寄って来て、僕の脳みそはそのあまりに暴力的な柔らかさと匂いにオーバーヒート寸前。
「二人とも可愛すぎるし、良い匂いするし、柔らかいから!!一緒に寝たらドキドキしちゃうんだよ!!」
僕は頭が真っ白になって思わず叫ぶ。
「~~!?」
「~~!?」
二人が息を飲む音が聞こえ、それから室内に沈黙が下りた。
え!?なんでこんなに静かになったの!?
僕なんかおかしなこと言っちゃったのか?
パニック状態になっていて自分が何を言ったのかあまり覚えていない。
僕は恐る恐る二人の顔を盗み見る。
「……」
「……」
二人は沈黙したまま俯き、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
ヤバい、僕は混乱に乗じて一体何を口走ったんだ?
「ね、ねぇ、二人ともどうしたの?」
僕は俯く二人に尋ねると、二人は僕の腕に顔を押し付けるようにして隠した。
これはいよいよヤバい事を叫んでしまったのかもしれない。
「ご、ごめん。謝るから、僕が変なこと言って悪かったから。ね、許してよ」
僕は僕の腕に顔を隠した二人に必死に謝る。
「たっくんは悪くないわよ……」
「うん、拓也は悪くない……」
二人の呻くように小さな呟きが聞こえる。
僕は悪いわけじゃないらしい。
「え、じゃあ、二人はなんでそうやって顔を隠してるの?」
「たっくんがあんなこと言うから……」
「拓也が恥ずかしいことを言うから……」
「それってやっぱり僕のせいじゃ?」
僕が理由を尋ねると、僕の話が原因だというので、僕が悪いということだよね?
「違うの。たっくんが私たちの事をあんなふうに思ってるなんて思ってなかったから」
「そう。私もまさかそんな風に言われるとは思ってなかったの」
二人の言葉に僕は困惑する。
過去の自分よ、お前は一体何を言ったんだ!!
「えっと、一体僕は何を言ったの?」
僕は聞きたくないのを我慢して二人に尋ねた。
「え?それは……私達が可愛すぎて、いい匂いがして、柔らかいって」
「そう。なつの言った通り。だから興奮しちゃうんだって」
二人の言葉を聞いて僕は戦慄した。
うぉおおおおおおい!!
過去の自分何を口走ってくれちゃってんだぁ?
いくら視覚と嗅覚と触覚を支配されてしまったからと言ってそんなこといっちゃだめだろ!!
「ごめん、変なこと言って……」
「んーん、良いの。私こそごめんね。たっくんが私のことをそんな風に思ってくれてたなんて嬉しくて、物凄く恥ずかしかったの」
「私も。拓也にそう言ってもらえて嬉しくて、恥ずかしかっただけ」
二人は僕の腕から顔を離し、まだ顔を赤らめたまま答えた。
「え!?僕にそんな風に思われて気持ち悪くないの?」
二人からの予想外の言葉に僕は思わず問い返す。
僕みたいな陰キャにそんな風に思われたら、普通の女の子なら気持ち悪がっちゃうと思うんだけど。それが逆に嬉しいだなんて夢かな。
「バカね、気持ち悪いわけないじゃん」
「ホント。拓也は自分を卑下しすぎ。気持ち悪い訳ない」
「そ、そうなんだ」
二人が真剣な表情で言うので僕はドギマギしてしまう。
「そうよ、ホントに嬉しいんだから」
「私もとっても嬉しいよ」
念押しのようにそう言う二人の表情はとても嬉しそうだった。
「たっくんが私達をどう思っているか分かったところで、もっと密着しちゃおうと思います!!」
「それいい」
何故かいつも調子を取り戻してきた夏美姉ちゃんがいきなりそんなことを言うと、雫姉も同意する。
「え!?話聞いてた?」
「問答無用!!」
「無用」
「うわっ!?」
僕は思わず反論しようとしたけど、二人は耳を貸さず、僕の腕を上に挙げて丁度胸と肩の間くらいの位置に頭を乗せ、胴体の両側に自分の体を寄せてくる。
完全に二人の体にサンドイッチされている形だ。
体の胸の辺りには二人のとんでもない柔らかさを誇るマシュマロが密着し、頭が僕の顔のすぐ下あって、シャンプーと女の子の香りが混ざり合って僕に届く。
ちょっと僕には刺激が強すぎて、下半身が反応しまくっっていた。
「ほら、たっくん、私たちの腰に手を回して?」
「え?いやそんなこと「いいから」」
「は、はい」
夏美姉ちゃんの指示に反論しようとすると、雫姉に封殺され、僕は仕方なく二人の腰に手を回した。
二人の腰は驚く程細いのに程よく柔らかさがあって男子高校生には余りに甘美な感触だった。
「これは安眠間違いなしね」
「これ安心する」
二人が僕に腕枕されてご満悦な声色をしている。
「い、いや、僕は「おやすみ、たっくん」」
「拓也おやすみ」
僕の声は虚しく二人にかき消され、二人は眠りに落ちようとしていた。一方の僕は、意識も思考も体の一部もビンビンで眠れる気がしなかった。
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