058 なんかこう、情けない感じとか
「――と、まあ、そんなようなことが、あのとき、日本各地で起こったの」
BBが言った。
クルーナー=クシー撃退後、俺たちはとりあえず各自家に帰って、休息し、翌朝八時、『柳安荘』の応接室に集まった。全員アバターを使っている。全員、といっても、クシーとひみか、そして、イミとそのワンコちゃんであるキジ以外は、だが。
イミとキジはあれからほかの魔法少女とワンコちゃんたちと一緒に、クシーの家に泊まった。再び本格的な休眠に戻ると、今回のような緊急事態にならなければ起きないからだ。
ちなみに、応接室にいるのは、BB、魔法少女六名、ひみかの、人間計八名と、変態解除までまだ時間がある俺を含めたワンコちゃん計五匹。さすがに応接室はすし詰め状態で、もはや、これが小説だったら作者はさばくのがさぞ大変、という領域を完全に超えている。深く考えず登場人物を増やすとこうなるという、見事な事例だな。まあ、それはいいとして。
昨夜の出来事について、臨場感のある(?)報告を終えたBBに、俺は言った。
「なあ、BB。その、山田雄作かっこ仮称って、必要か?」
「その方が具体的にイメージしやすいかと思って」BBは肩をすくめた。
「いや。むっちゃイメージしやすかったで」と、あかね。
「そうそう。なんかこう、情けない感じとかね」と、明日香。
こいつら、ほんと、常に失礼だな。まあ、いいんだけどね、別にね。
「や、山田さんは情けなくありません」と、まひるが俺をぎゅっと抱いた。俺はソファに座っているまひるの膝の上にいる。
ありがとう、まひる。嬉しいけど、でもその反応は、俺が今、犬の姿だからなんだよね、たぶんね。
「あーごめん、まひるん」あかねが手を合わせる。
「まひるもなかなか素直になってきたじゃない」と、明日香が隣のまひるを小突く。
「そ、そんなんじゃありません」と、まひるがぷい、と横を向く。
「そ、それで、それが、あの青い球の影響だったということっすか」と、しんちゃんが話を戻した。
「ボクたちが無力化したあの球が地上に落ちて、そんなことになったってこと?」と、くろちゃん。
「そうよ」BBがうなずく。「無害化しただけでなく、あなたたちの魔力が宿ったあの球は、地上の人たちに、そういう影響を及ぼしたの。それがいいことだったのか、そうじゃないのか、難しいところだけれど」
「でもさっきの話を聞くと」と、誠くん。「結局、あまりいいことだっとは言えない気がしますけど」
「そうちゃね」美穂が腕を組む。「最終的にはもめごとに発展しちょっちゃもんね」
「ひみかは?」俺は尋ねた。「影響受けなかったのか」
ひみかはうなずいた。「私はここでBBといたから。この部屋は特殊な空間だから、影響は受けなかったわ」
「なるほど」と、俺。「BB、何か人的被害は起きてないのか?」
BBは首を振った。
「いいえ。私が把握している限り、それはないわ。まあ、一時は痴漢の被害届が爆発的に発生したけど、結局すべて取り下げられているし。ほんの短い時間だったから」
「結局のところ」イミが言った。「あの力は、おぬしたちにはまだ早すぎたのではないかの。なあ、キジよ、どう思う」
「ワン」キジは一声吠えて、言った。「おっしゃる通りですが、ただ、可能性は見いだせたのではないかと思われまする、ワン」
昨日、あれから判明したのだが、キジは実は、喋ると超イケボなのだった。俺は思わず、「あの、中の人、桜井さんですか? それとも宮野さんですか?」とマジで聞きそうになってっしまった。
「なぜなら」キジが続けた。「球の影響を受けた地上の人たちの思いがあの球にフィードバックされ、さらに増幅されて再び我らの元に届き、結果、あの御使い――クルーナーを無力化することにつながったのです。ならばそれは、この時代のものたちにとって、僥倖だったと言ってよいのではないかと思われまする、ワン」
「キジは楽天家じゃからな」イミは苦笑して、クシーを見た。「おぬしも、もう少しキジのように、物事を楽観的に捉えるようにした方がよい。それが結果的に、おぬしの周りにいるみんなのためになるのじゃ」
クシーは「努力する」と言って、隣に座るまひるを見た。
まひるは、クシーの手を握った。
「さて」BBがみんなを見渡す。「今朝、ここにこうやって、みんなが集まったということは、昨夜のことだけではなくて、改めて私に聞きたいことがあるから、なんでしょ?」
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