051 どこの時代の人?
ん? なんて言った?
俺はみんなを振り返った。
みんな、ぽかんとした表情で、首を振っている。
日本人じゃないのか?
俺の心の声が届いたかのように、BBが言った。
「彼女は日本人よ。ちょっと待って。今、システムを同期させるから」
「BB、第二波は」と、相変わらず冷静なくろちゃん。
「第二波落下まで、約五分よ」と、BB。「大丈夫。盾が防ぐ」
俺の視界に、突然、象形文字のような字の羅列が画面いっぱいに表示され、消えた。
「みなさん、こんにちは」と、少女が言った。「通じておるかの」
「こ、こんにちは」と、俺たち。
「あの、あなたは?」恐る恐る、まひるが尋ねた。
「ワレはイミ。おぬしたちと同じ、忌まわしきモノの使い手じゃ」
「忌まわしきモノの使い手?」と、明日香。
「それは何ですか?」
まひるの質問に、イミと名乗った少女は、手のひらをこちらに向けた。
「しばし待て」イミは視線を空中に走らせた。どうやら、魔法少女のシステムにアクセスしているようだ。「この時代の言葉では、魔法少女と言うらしいな」
「この時代って」あかねが言った。「そしたら、あんたは、どこの時代の人?」
「おぬしたちの言う、弥生時代じゃが」
「え」「や」「弥生時代!」みんなが口々に声を上げる。
「先ほどのワレの言葉は弥生言葉じゃ」と、イミ。「今は魔法少女のシステムとやらを介して、おぬしたちと話が通じておる」
「イミは弥生時代の魔法少女よ」BBからの通信が入った。「普段は眠っているけど、今回のような、超高高度からの広域攻撃などが発生すると、自動的に起動するようになっているの。イミが使うのは、絶対防衛魔法、盾。イミのような魔法少女は現在五名、その五名で地球上のすべてのエリアをカバーしている。これで当面は――」
BBの言葉は、「うえええええええ」というイミのうめき声に遮られた。
見ると、イミは白い犬にもたれかかって、しゃがみ込んでいる。
「なんじゃこれは」と、イミが苦しそうに言った。
「お、おい」俺たちはイミに近寄った。「大丈夫か」
「なんという人の多さじゃ」イミが口に手を当てる。「人が発する負の波動の濃さに吐きそうじゃ。なんと愚かな。この星がこれだけの人間を支え切れるわけがない。ヒトは、そんなことも分からなくなってしまったのか」
イミがいた時代と比べたら、今の時代の人口はどれくらいだ? 数百倍? とにかくとんでもない規模になっているのだろう。
「作物が獲れる量、獣が獲れる量、魚が獲れる量、人はそれに合わせて、ムラを作るのだ。それが生きるということなのだ。こんなにも多くの人を、どうやって食べさせていくというのだ」
「そろそろ第二波が来る」と、くろちゃん。
俺たちよりも少し上空に位置するクルーナー=クシーの下部で赤い球体が成長していく。
白い犬の助けを借りて、イミは立ち上がった。白い犬は、藤崎竜先生が描いた哮天犬そっくりだった。
「すまんな、キジ」と、白い犬に言うと、イミは杖を持って目を閉じた。
赤い球体が落下していく。
再び花の盾が球体を防ぎ、花びらが赤く変色する。
「あれ」「な、なんか、色が戻らないっすよ」と、くろちゃんとしんちゃん。
さっきは一瞬で元の色に戻ったが、今回、花びらは赤く染まったままだ。
イミの体がふらりと傾く。
「おい」あかねがイミの体を支える。「大丈夫かいな」
「地上からの負の力で盾の威力が落ちておる」と、イミ。
「なんか、てげ、ヤバい気がすっちゃけど」と美穂。
「すまぬ」イミが俺たちを見た。「次は防ぎきれるかどうか分からん」
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