憂鬱な月曜日
◎4/3(月)葉山怜→仁井田奈美
あっと言う間にこの日が来た。
強引に決まった『ランチ』をする日。
朝からテンション低めで過ごしていると、いつも以上に皆から声がかかる。いつもなら声をかけられて嬉しはずなのに、今日は嬉しくない。
殻に閉じこもりたい気分。
10時過ぎ、久しぶりに取引先の佐々木さんから電話が来た。
「お疲れさまです!この間の飲み楽しかったね。また奈美さんと飲みに行きたいんだけど、いつがいい?」
「予定確認したら後で連絡するよ。たぶん今週のどれか行けるはず。」
「了解。連絡待ってるね!」
一回飲みに行って楽しかったからまた行ってもいいけど、佐々木さんと飲みに行ってる事を何で細川さん知ってたんだろう。佐々木さんが話した?それとも細川さんがストーカーして知った?
どっちにしろプライバシー侵害で嫌な気分。
そうだ。今日は細川さんとランチだ…。
一瞬だけ忘れてた憂鬱な事を思い出し、更に落ち込む。
ランチの時間になりコンビニに向かう。
既に細川が待っていた。
「奈美ちゃーん、待ってたよ。行こう!」
「はーい。」
一時間耐えよう。営業スマイルで乗り切ろう。
3分ほど歩くと、蕎麦屋の暖簾を見つけた。
中に入ると、落ち着いた雰囲気で満席に近い状態だった。
「こんにちはー。予約してた細川です。」
席に案内され、向かい合って座る。
「奈美ちゃん、何にする?」
メニューを渡され、おすすめは十割蕎麦だと教わる。
「じゃあ、オススメの蕎麦にします。」
「オッケー。俺も同じやつにする!」
「すみませーん!注文お願いしまーす!」
細川は十割蕎麦を2つ注文した。
「ここの蕎麦、手打ちなんだよ。歯ごたえあって美味しいのよ。奈美ちゃんと食べにこれて嬉しいよ。」ニコニコ嬉しそうに話す。
「手打ちなんですね。私も食べるの楽しみです。」
「でしょ。いつも何食べてるの?」
「色々です。特に決まってないです。細川さんは何食べてますか?」
「俺はココと、あとさっきのコンビニの通りにあるラーメン屋とか。麺が好きなんだよね。」
「そうなんですね。」
あの定食屋には行かないのかな。とにかく、昼休みまで会いたくない。
「何でそんなに細いの?ちゃんと食べてるの?」
「はい、食べてますよ。」
「ほんと?ちょっとだけ食べてあとは残してるんじゃないの?」
痩せてるけどちゃんと食べてるし。あんまりしつこく体型の事言うとセクハラだよ。
細川さんだから尚更そう感じるのかもしれないけど。
「月曜日って憂鬱じゃないですか?日曜の昼ぐらいからもう明日仕事かぁってなりませんか?」
話題を変える。特に今日の月曜は憂鬱。
「まぁね。でも俺って毎日基本的にハッピーなんだよね。嫌なことあってもすぐ忘れるし引きずらない。だって週に5回も仕事して、ズルズル嫌な事引きずってたらいい気分の日なんて一日もなくなるじゃん。」
「確かに、そうですね。自分の気持ち次第ですよね。」
「そうそう。俺がもし奈美ちゃんだったら毎日がハッピーだよ〜。楽しくてきっと毎日ウキウキよ。」
…そうだけどイヤなこともあるけどね。まぁ、他から見たらそう見えちゃうのも仕方ないか。
蕎麦が運ばれてきた。いい匂い。
「いただきまーす。」
確かに歯ごたえあって美味しい。ここにも通っちゃおうかな。
「どう?美味しいでしょ?」
「はい。美味しいです。ここに通いたくなりますね。」
「だよね。何回食べても飽きないの。また来ようよ。」
ニコッと笑って食べ続ける。
ホントにたまーーーにだったら、この人とランチ食べに来てもいいかも…。
いやっ、蕎麦の美味しさに騙されちゃダメ。
蕎麦の美味しさのおかげで、憂鬱な月曜日から、ちょっと憂鬱な月曜日に変わった。
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