目撃
◎11/2(月)真山湊→京野仁志
今朝はいつもより早起きしたので、少し手間をかけた朝食を作る事にした。
台所にあった乾燥ワカメを水で戻し、玉ねぎ、ツナ缶でサラダを作る。
卵二個をかき混ぜ、サラダ油を入れて熱したフライパンに投入する。ちょっと不格好だけど、それなりにオムレツの形になった。ササッとケチャップをかける。豆腐とネギの味噌汁も作り、朝ご飯の完成。
「いただきます。」
トーストもいいけどたまにはこういう朝食もいいな。ランの家に泊まった日の朝に食べたオムレツ、美味しかったな。
擬似体験をして数日が経ったが、ランの事を思い出しては会いたい気持ちが日に日に強くなっていた。
今頃何やってるんだろう。仁志さん、ランとうまくやれてるかな。
ランの事はなるべく考えすぎないようにしていたが、勝手に頭に浮かんでくる。
元に戻ったら真っ先に会いに行こうと決めていた。
今日も初めて行く営業先へナビを頼りに向かう。
資料を片手に必死で商談をする。
会社に戻る頃にはクタクタだ。
一息つこうとブラックコーヒーを準備する。
「お疲れ様。今日も何だか疲れた顔してる。大丈夫?」
「うん。何とか予定してた所まわってきたよ。疲れたー。」
「これでも飲んで疲れ取って、はい。」
トウコは栄養ドリンクを仁志に渡す。
「ありがとう。」
「あと少しで終わりだし頑張ろう!」
トウコさんはいつも元気だ。そして事務所の皆をいつも気にかけてくれる。
トウコさんを見てると、ランの事を思い出してしまう。何か似てるんだよな。
仕事が終わり、会社の近くの店を見てまわる。
(へーこんな所に本屋あったんだ。こっちには雰囲気のいいカフェもある。明日の昼休みに行ってみるか。)
早速本屋に入る。そんなには大きくはないが品揃えは十分だ。手作りのPOPがいい感じに目立ってつい見入ってしまう。
しばらく見て歩き、前から気になっていた小説を一冊手に取る。最新号のファッション誌を一通り立ち読みする。
他にも色々な本を見て歩く。
そろそろ会計しようとレジに向かう途中で旅行雑誌を見かける。
(ここ、前にランが行きたいって言ってたな。久しぶりに旅行もいいな。)
旅行雑誌も一冊手に取りレジで会計を済ませる。
バス停でバスを待っていると、急に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「…ひどいよ。信じてたのに!どうしてあんな嘘ついたの?」
行き交う人達が声の方を振り返る。
目を凝らして見るが暗くて良く見えない。
バスが来るまで少し時間があったので近づいてみた。
(え?トウコさんだ。相手は彼氏か?)
まだ二人で何か言い争っている。男性もトウコさんに何か言ってるのだろうか。周りに聞こえないように小さな声で話している。
その後トウコさんは男性から離れ、仁志と反対側の方に走って行ってしまった。
バスが来て家に着き、さっき見たことを思い出していた。
一体二人に何があったのか…。
気になってしまい中々寝付くことが出来なかった。
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