二次審査 AM/仁志
結局、書類審査通過の連絡を聞いてから2日間まともに眠れなかった。
いつもならこんな事はないが、よっぽど興奮状態だったようだ。
寝不足だがなぜか頭は冴えている。
しっかり朝食を食べて、約束の時間まで余裕を持って準備をする。
身だしなみを整え、髪をセットする。
早い段階から決めていた服に早速着替える。
二次審査ではどんな事をするのか、楽しみもあったが不安も大きかった。
いつもなら自分のプライベートの事は友達に相談したり話したりしていたが、この事は一切話さなかった。
約束の時間まであと30分。
歯磨きをしてテレビを見ているといると、今日の占いをやっていた。占いは全く詳しくないが、自分の星座くらいは分かる。
結果は3位だった。まぁまぁな結果に少し安心しテレビを消す。
10分前に約束の場所についた。行き交う車を見ながら待っていると、しばらくして白い車が近づいてきた。
「京野仁志さん、おはようございます。今日は夕方まで試験審査を行います。体調は大丈夫でしょうか。」
「はい!大丈夫です。今日はよろしくお願いします!」
「ここから約1時間、車で走った所で試験を行います。現地までの場所を特定されないため、アイマスクで目隠しをしていただきます。こちらをお付けください。」
緑色のアイマスクを受け取り、装着する。
装着してすぐ寝てしまった。
約1時間車に揺られ現地に到着した。
寝て起きたあと、道が悪い所を走っているのに気付いた。
チチチチチ…
鳥の鳴き声が聞こえるな。ここは山の中か。結構道悪かったもんな。普段酔う事ないのに酔ったし。
運転手に手を引かれ、目隠しをしたまま歩く。
「少し段差があるので、足元に気をつけて下さい。はい、ここで一度止まって靴を脱いでください。目の前にスリッパを置きましたので、履き替えて下さいね。」
ゆっくりと靴を履き替え、少し歩いて立ち止まる。
「京野仁志さん、アイマスクを取ってください」
アイマスクを取る。見渡すと10畳くらいの部屋。
真ん中に椅子が1脚、その対面に3脚置かれていた。
(最初に面接かな。ちょっとドキドキ。)
壁の時計は9時10分を指している。
「携帯など、外部と連絡が取れるものはお持ちですか?情報漏えい防止のため、お帰りまでこちらで預からせて頂きます。」
仁志はズボンのポケットに入れていた携帯を取り出し、運転手に渡す。
「ありがとうございます。こちらの椅子に座って少しお待ち下さい。今呼んでまいります。」
運転手はドアを閉め、廊下から聞こえる足音が遠くなった。
5分経っても誰も来ない。背筋をのばしたまま、部屋中をキョロキョロする。
少しこの姿勢に疲れてきたので首を左右に動かす。すると突然ドアが開いた。
急いで背中を伸ばして立ち上がり会釈する。
男性、女性、男性の順で、スーツを着た人達が入ってきた。会釈して椅子に座る。
「お待たせしました。京野仁志さんですね。早速これから面接を行います。あっ、どうぞおかけください。」
一番左端の男性がニコッと笑みを浮かべながら話しかける。
「はい。本日はよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。京野仁志さんの簡単な自己紹介をお願いします。」
「はい。京野仁志、30歳、生命保険会社の営業をしております。趣味は旅行です。」
「はい。仁志さんに質問です。応募動機にあった、この先うまく生きれるヒントが得たいというのはどういった事なのか詳しく教えて下さい。」
「はい。仕事や友人関係は良好なんですが、なぜか女性と長続きしないんです。もっとクールな人が良いという理由で振られてしまいます。私のこの性格が問題なのかと思い、私と正反対の方の擬似体験ができれば何か分かるのではないかと思った次第です。」
「なるほど。いまお付き合いしている方はいらっしゃらないんですね?」
「はい。ここ半年ほどいません。30歳を迎えて、周りの友人たちも次々と結婚していくのを見て焦りを感じています。」
「分かりました。ありがとうございます。これで面接は終わりです。簡単なアンケートがあるので、こちらにお書き下さい。」
ペンと紙を渡され、一つの質問が書いてあった。
すぐに書き終わり、男性に渡す。
「次は健康診断を行いますので、私の後についてきてください。」
「はい。」
4人はぞろぞろと縦一列に歩く。
歩いてみて分かったが、かなり大きい施設だ。
試験は自分だけなのか。他の人の気配が全くしない。
面接会場から200mくらい離れたところに、体育館のようなホールがあった。
検査する場所がそれぞれ設置されている。
「京野仁志さん、こちらで健康診断を行います。血圧、身長、体重、採血、尿検査、心電図の順で行っていきますね。」
さっきの面接で、真ん中に座っていた女性が担当のようだ。他の2人はいつの間にかいなくなっていた。
誘導されながら、次々と検査をしていく。
30分ほどで全ての検査が終わった。
「おつかれさまでした。午前中の試験が終わりましたので、休憩室で13時までお休みください。時間になったら、部屋まで迎えに行きます。では、こちらです。」
進んだ先に部屋があるようだ。1分ほど歩くと『休憩室』と書かれた部屋があった。
10畳ほどの広さで、ビジネスホテルの簡素版といった感じの部屋だ。
テレビ、ベッド、テーブル、ソファ、電話、洗面所、アメニティ、トイレが備え付けられていた。
窓は一つもなかった。
テーブルの上には、雑誌、お菓子、弁当、飲み物が置いてある。
『ご自由にお召し上がり下さい』と書かれたメモがある。
時計を見ると、10時半を少しまわっていた。
まずはトイレに入る。
緊張してお腹が鳴らないか不安だったか大丈夫だった。
(午前の部はあっと言う間に終わったなー。面接と健診だけだったし。午後は一体何やるんだろう。)
ソファに座り、ペットボトルの水を飲む。一気に半分飲み干す。取り敢えずテレビを付けた。
お菓子をつまみながら再放送のお笑いを見て、隣の部屋まで聞こえそうな位の大声で笑う。
笑いのツボが浅く、こういった番組を見始めると笑いが止まらない。
笑い疲れた仁志はソファに横たわる。そのまま目を閉じるとスースーと眠ってしまった。
バッと飛び起きた仁志は慌てて時計を見る。
12時20分を指していた。
「あービックリした!寝過ごしたかと思ったー!」
連日の寝不足で気を緩めると眠たくなってしまう。
目をしっかり覚ますために、洗面所で顔を洗う。
トイレを済ませ、弁当を食べ始める。
弁当は野菜炒め定食。唐揚げとエビフライも入っていて、結構お腹いっぱいになった。
さっき食べたお菓子や弁当の空を片付ける。
水を少し飲み、時間まで雑誌を読む。
時間が近づいてきた。気持ちが段々と引き締まる。
…
…
『コンコンコン』
「京野仁志さん、午後の試験が始まります。こちらへどうぞ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます