一次審査 仁志と湊

10月26日20時過ぎ、二人の男の携帯が鳴る。




「もしもし、京野仁志さんの携帯ですか?」


「はい、そうです。どちら様ですか?」


「突然のお電話すみません。ホワイト化学製薬と申します。先日は、交換擬似体験にご応募いただきましてありがとうございました。」


「えっ!」

驚いて思わず叫ぶ。


「書類審査が通りましたので、連絡致しました。実は二次審査がありまして、急なんですが明後日の一日ご都合いかがですか。一日がかりの試験審査になります。」


「はい!大丈夫です。いやぁ、ビックリしました。まさか書類審査が通るなんて。嘘じゃないですよね?」


「はい。正真正銘、一次審査通過でございます。明後日の朝8時、京野さんの自宅前まで白い車が迎えに参ります。時間に遅れることのないよう気をつけて下さい。それと、健康診断がありますので動きやすい格好でお越しください。」


「分かりました。明後日ですね。他に何か持っていく物はありますか?」


「いいえ、ございません。では、明後日よろしくお願いします。失礼いたします。」


「こちらこそよろしくお願いします!」


電話を切りガッツポーズをする。

「このチャンス絶対モノにしないと。いやー今日は中々寝付けないかもな。」


京野は胸が高鳴る。二次審査当日まで中々寝付く事ができなかった。






「もしもし、真山湊さんの携帯ですか?」


「はい、そうです。」


「突然のお電話すみません。ホワイト化学製薬と申します。先日は、交換擬似体験にご応募いただきましてありがとうございました。」


「え?…本物ですか?」


「はい、左様でございます。書類審査が通りましたので、連絡致しました。実は二次審査がありまして、急なんですが明後日の一日ご都合いかがですか。一日がかりの試験審査になります。」


「明後日は何も予定無しです。大丈夫です。」


「左様でございますか。明後日の朝8時、真山さんの自宅前まで白い車が迎えに参ります。時間に遅れることのないよう気をつけて下さい。それと、健康診断がありますので動きやすい格好でお越しください。」


「分かりました。」


「では、明後日よろしくお願いします。失礼いたします。」


「こちらこそよろしくお願いします。」


さすがに普段クールな真山も動揺を隠せない。しばらく携帯を見つめる。酔った勢いで応募した書類が通るとは夢にも思わなかった。


「せっかく次に行けたんだ。やるだけやってみよう。」

駄目でもともと。よく真山が使う言葉だ。

平常心で臨めばきっと大丈夫。自分の力を信じてみよう。審査を受けることに意味があるんだ。

彼女の事が一瞬頭によぎるが、この事は内緒にしておくことにした。






性格も考え方もまるで正反対の二人。

あっと言う間に二次審査の前日になり、約束の時間まであと数時間と迫っていた。

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