痛み

◎4/11(月)仁井田奈美→葉山怜



楽しみにしてた火曜日が来た。

朝からソワソワしてる怜に気付き、

「怜、朝から落ち着きないけどどうしたの?デート?」

「違う違う。友達と飲みに行くだけだよ。夜ご飯いらないからね〜。」

怜さんのお母さんって本当に勘がいい。心の中を読まれてるみたい。そしてちょっと心配症な所がある。


「サキおはよう。」

今日コウタと飲みに行くことを改めてサキに伝える。

「良かったね。楽しんできてね!」

「うん!ちょっと緊張するけどね。」

「大丈夫大丈夫。今日のメイクいつもと違う。いい感じだよ。」

「ありがとう。」




居酒屋で19時に待ち合わせで、10分ほど前に着いた。

コウタさんが予約してた席で待つ。


店には色んな人達がいる。

すでに酔ってる人、カンパイしてる人、合コンしてる人。

こうして待ってる時間が一番ドキドキするかも。


19時を少し過ぎてもまだコウタさんは来ない。

仕事で遅れてるのかな。頬杖をつきながらメニューを見る。


一通りメニューを見終わった頃、向こうからコウタが歩いてくるのが見えた。


「ごめん!遅くなっちゃった。」

「大丈夫です。私もさっき来たところです。」

「先にビール頼もうか?」

「はい!」


ビールが運ばれてきて、カンパイする。

(コウタさん、美味しそうに飲むなぁ。)

「冷えたビールは美味しいな〜。」

「そうですね!いくらでも飲めますね。あ、この間の帰り家まで送って貰ってありがとうございました。飲みすぎちゃって…。今日は気をつけます。」

「気にしないでいいよ。俺も飲みすぎて記憶が曖昧なんだけど、変なこと言ってないよね?」

「いやー、私も後半記憶なくて…私こそ何か変なこと言ってなかったですか?」

「あはは!じゃあ、お互い様ってことにしとこう。」


あっと言う間にビールを飲み終え、追加のお酒と料理を注文する。

「そういえば怜さんっていま彼氏いないんだよね?」

「はい、この間話しましたよね?」

「うん。聞いた。会社で出会いもない感じ?」

「そうですねー。彼女いたり、結婚してたり、みんな相手がいる人ばっかで。」

「そっかぁ。そうなると中々出会うことって無いか。」

「そうですね。出かけるって言ってもいつもサキとだし、出会うのは難しいですね。」

「だよね…。みんなどこで見つけてるんだろうなぁ。合コンとかなのかな。」


なんかコウタさん、この間より更に元気がないように見える。

「コウタさん、何かありましたか?この間より元気がない気がするんですけど。」

「うん。ちょっと元カノの事で悩んでてね。」

「何かあったんですか?」

「うん。今日怜さん誘ったのも、ちょっと相談に乗って欲しいことあって。もし嫌だったら遠慮しないで言ってね!そんなの聞きたくないってさ。」

「嫌だなんて言うわけ無いですよ〜!どんどん話してください。聞く事しか出来ないけど何でも聞きますよ。」

「優しいね。ありがたいよほんと。こういう事話せる女の人いないし、困ってたんだよね。」

コウタが二杯目のビールに口をつける。怜もつられてレモンサワーを飲む。


「去年彼女と別れたってこの間話したよね。別れて4ヶ月以上経つんだけどまだ忘れられなくて。シンジには新しい彼女探してるって言って、この間怜さん達と飲み会開いてもらったんだけどね…。」

「それは辛いですね。彼女とは別れてから連絡取ったりしてます?」

「俺からたまに送るぐらいで、向こうからは来ない。あっちにはもう次の相手いるんじゃないかな。俺の友達が、誰かと歩いてるの見たって言ってたし。」

コウタは深いため息をつく。


「なんだか向こうは吹っ切れてるような感じですね。」

「やっぱりそうだよね。」

「人それぞれだと思いますけど、意外と女の人の方が切り替え早いような気がするんですよね。」

「そうかぁ。切り替えられないのは俺だけか。」

「一回会う約束取り付けてみたらどうですか?それもダメな感じなんですか?」

「正月に一回会おうって連絡したけど断られた。あまりしつこいとストーカーと思われるかもって怖くてさ。」

「それも嫌ですね。彼女に会う気がないとなると、難しいですね…。」

辛そうに話すコウタさんを見るのが辛い。


「さっき、ここに着く少し前に元カノから電話があってさ。俺が置いてた荷物この間見つけたみたいで、いつ取りにくるのかって聞かれた。着信見たとき期待したのに、結局それかーって。」

「そうなんですか。」

「もう諦めたほうがいいかもなぁ。恋愛って難しいね。」

3年付き合ってたんだもんね…。色々な彼女との思い出があるだろうし、すぐに忘れるのなんて難しいよね。


今日、コウタさんと何か進展があるかも…だなんて思ってた私恥ずかしい。ただの思い過ごしで、元カノの相談事だったんだもん。


「もう一杯何か頼む?」

「はい、じゃあこれを。」




運ばれてきた赤ワインを飲む。

渋いワインが喉にしみる。


じんわりと涙がにじむのはこのワインのせいなのか、今は深く考えたくなかった。

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