冷静

◎10/30(月)真山湊→京野仁志



無事に会社に着きホッと胸を撫で下ろす。

朝礼を済ませ、席につく。

仁志さんは優秀な営業マンらしいから、迷惑かけないようにしないと。


パソコンで今日の予定を確認する。

何箇所かいつもの所を周って、あとは新規開拓か。これは大変そうだな。

肩で大きく息をする。


ポン!


仁志の肩を軽快に叩く。

「何?朝からため息ついてー!」

この人は…先輩のトウコさんだ。

「えっ?いやぁ、ちょっと寝不足で。」

「えー?寝不足でもいっつも元気なのにぃ。何かあった?」

「何もないですよー大丈夫です。気にしないで下さい。」

「ほんと?何か変だわー。ま、今日も頑張ろうね!」


ポン!


と仁志の肩を再度叩き、トウコは席に戻る。

いきなりでビックリしたー。仁志さんと仲が良いみたいだ。急に声かけられると心臓に悪いなぁ。


この会社は活気がある。これから契約を取りに行くぞ!という意気込みが目で見えるようだ。

この一週間、大変かもしれないな…。




リストを見ながら何箇所かの事務所や家をまわる。道も覚えないといけないから、覚えた頃には擬似体験終わってそうだな。


昼近くなり、近くのラーメン屋に入りチャーシュー麺を食べる。すごく美味しいけど、チャーシューが6枚も入ってて胸焼けしそうだ。

会計を済ませお腹をさすりながら車に戻る。


着信音が鳴った。

仁志の携帯か、会社携帯か、あたふたしているうちに音が鳴り止む。間に合わなかった。

着歴を見ると『アイ』という人からだ。誰だ?

脳内記憶で記憶を辿る。


どうやら半年前に別れた仁志の元カノのようだ。

何の用事だったんだろう…。

また掛かってきた時に取ればいいか。折り返しの連絡はしなかった。




ようやく一日終わったー!あっと言う間だった。

基本外回りの仕事だから良いのかも。もしずっと事務所にいる仕事だったら物凄く長く感じたと思う。


昨日買い物したから食材はある。今日は魚を焼いて食べよう。味噌汁も作るか。

コンビニで小説を2冊買い、家に帰った。




夕飯の準備ができた。

テーブルに全て並べ、缶ビールをプシューっと開ける。この音が最高なんだよな。

テレビを付けていつもより時間をかけて夕食を食べる。


そういえば『アイ』から連絡来ないな。どうしよう。折り返さなくていいのか?

元カノとの写真をパラパラと見る。この中にその人と写ってるのかな。


プルルル プルルル プルルル


急いで携帯の画面を確認する。アイからだ。

「はい。」

「あ、今大丈夫?」

「うん。大丈夫。」

「久しぶりだね。元気にしてた?」

「まぁ、ぼちぼち。」

「何か素っ気ないね。電話掛けたのに連絡くれないし…。」

「え?」

「気付いてなかった?今日のお昼頃に電話したんだよ〜。」

「あぁ、ごめん。仕事中だったから。」

「そうなんだね。相変わらず忙しいんだね。」

「うん。で、何かしたの?」

「特に用事は無いんだけど…仁志の声聞きたくなっちゃったの。」

もしかしてアイさん、酔ってる?

「いま飲んでるの?」

「うんそうだよー。ビール3本目でーす。」

「すごいね。」

「えー私いつももっと飲むよー忘れちゃった?」

「いや、そういう訳じゃないよ。」

「何かいつもと感じちがーう。仁志じゃないみたーい!」

一瞬ドキッとしたが、冷静に返す。

「気のせいだって。じゃあ俺今から片付けとかあるから。またな。」

「えーもう終わり?何か冷たーい。」

「ちょっと頭も痛いし。ごめんね。」

「じゃあ仕方ないかぁ。お大事にねー!またねー。」


中身の無い会話だったな…何だか疲れた。

今度電話きても知らないフリしようかな。後でメール返せばいいや。


片付けを済ませ、お風呂に入る。

今日一日あったことを思い返す。


仁志さんは人付き合いが多そうだし、俺とは正反対だな。俺は元カノからもし連絡来ても絶対出ないし。こういう所が俺とは違うんだな。




色々考えすぎて疲れた。今日は小説を読む元気が無い。またすぐに明日が来るしゆっくり休まないと。

早めに布団に入って目を閉じる。あっと言う間に睡魔に襲われ、深い眠りについた。

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