最終日後半 怜と奈美

◎4/29(土)葉山怜→仁井田奈美



家に帰ってきてしばらく経つのに、何だか全然落ち着かない。あっと言う間に夕方になった。


もう明日には元の自分に戻ってるんだ。

こんな夢みたいな体験した私は幸せなんだよね。


違う世界を体験できて本当に貴重な数日だった。

楽しかったなぁ。

ストーカーでイヤなこともあったけど、やっぱり美人の世界は楽しいし自信もつく。

心も前より強くなった気がする。


冷蔵庫を開けて材料を確認してホッとする。

お母さんの顔見たらオムライスが食べたくなった。

腕まくりをし、野菜を刻んで炒め、ご飯と混ぜ合わせる。味付けをし、その上に卵を乗せて完成。


「いただきます。」

手を合わせて食べ始める。

シーンとした食卓にも慣れてきたけど、やっぱり母の顔がどうしても浮かぶ。上手く出来たオムライスを黙々と食べ進める。


後片付けをし、早々とお風呂に入る。

今日はスイートピーの入浴剤を使う。奈美さんの使ってた入浴剤、何にするかいつも楽しみだったな。

私も元に戻ったら、色々試してみよう。


ソファに座り時計を見る。

約束の時間まであと少し。

ゆっくり深呼吸をして少し乱れる呼吸を整える。






◎4/29(土)仁井田奈美→葉山怜



携帯を取り出しおもむろにメールをする。

数分後、相手から返事がかえってきた。


『何かあったの?突然あんなメールよこして珍しいなぁ。困ったことあったらいつでも言ってよ?そうそう、今日シンジと遊園地に遊びに来てたよ。お土産、月曜日持って行くからお楽しみに!』


サキにこんなメールを送った。

『映画とかカラオケとかさ飲み会とかさ、本当楽しかったね。サキと友達で最高に幸せだよ。いつもありがとう!突然こんなメールしてごめん。何か気持ち伝えたくなった。』


擬似体験中、サキとは色んな話をした。

色々遊びに行ったし、友達がいるとこんなに楽しいんだって教えてもらった。

最終日はサキとも遊びたかったけど、デートなら仕方ないよね。

メールでだけど思いを伝えられて良かった。


あっと言う間にこの日が来た。

優しくて面白い母、頼りになる親友。

本当にいい擬似体験が出来た。

元に戻っても色々うまくやれそうな気がした。


母と台所に立ち、すき焼きの準備をする。

味付けは母にお願いした。

美味しくて、すき焼きとご飯を少しずつおかわりする。チューハイで乾杯し母と会話を楽しむ。


「今日はありがとね。すき焼きも美味しかった。栞、ちゃんと使ってよ?無くさないでよ?」

「もちろん使うよ。お母さんは大丈夫よ。怜こそ無くさないでよ〜。」


母との思い出を胸にしまい、いつも通りお風呂に入り部屋に戻る。


約束の時間まであと少し。

怜の鼓動は少し早くなっていた。

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