発散
◎11/1(水)真山湊→京野仁志
昨日は散々だった。
営業先で怒鳴られ、忙しくて昼休みもろくに取れず、残業でかなり遅くなった。
疲れが取れないまま水曜日の朝だ。
焼けたトーストにバターを多めに塗り、ブラックコーヒーと一緒に食べる。
擬似体験、一週間だけの期間で良かったとつくづく思う。
今の所辛い事ばかりだ。これじゃあまるで、辛い目に合うために擬似体験してるようなものだ…。
家を出るまでまだ少し時間があるので、準備を済ませて携帯をイジる。
少し前にサトシからメールが届いてたようだ。
『今日仕事終わったら久しぶりにご飯食べに行かない?連絡ちょうだいねー』
こうなったら飲んで楽しむしかない。
早速メールをする。
『飲みに行こう。どこで待ち合わせる?』
そういえば昨日もアイから着信入ってたな。忙しくて結局折り返さなかったけど。
仁志さんの携帯は忙しいな。
今日もトウコさんから肩ポン攻撃され、営業先に向かう。
結構な数を抱えてるので、毎日行く所が違う。
30代以降のお客さんがほとんどだ。
気が重いがやるしかない。堂々と行こう。
今日一軒目のチャイムを押す。
やっと終わった。毎日この時間が一番ホッとする。
さっきサトシからメールが入ってた。
『俺いつもより早く終わるから、おまえの会社の近くで待ってるわ。』
会社を出て、立ち止まりキョロキョロする。
「おーい!」
手を振って合図をしているのがサトシか。スーツ姿で仁志と同じような出で立ちだ。
「お疲れさまー早速行こう。」
「うん。どこに行く?」
「久しぶりに焼き肉食べたくない?どう?」
「いいね。行こう!」
会社から歩いて15分ほどの所の小さな焼肉屋に入る。
「いらっしゃいませーあら、久しぶり〜!」
常連なのかな。サトシが店員と親しそうに話している。
店は半分ほど埋まっていた。お腹も空いたし早速注文する。
「野菜と肉はいつものやつでいい?何飲む?」
「ビール中ジョッキで。」
「オッケー。」
あっと言う間に肉、野菜、ビールが運ばれてきた。
「カンパーイ!」
最高にビールが美味しい。
「うまいなー!さ、どんどん焼こう!」
あんなにテーブルいっぱいにあった肉、野菜が次々と無くなっていく。
追加のビールも飲み干し酔いもまわって話が弾む。
「最近毎日アイから電話くるんだけどさ、一方的に話されるし中身の無い会話だし参ったよ。」
酔った勢いでサトシに愚痴る。
「えー?おまえまだアイの事まだ好きなんじゃなかったっけ?他に好きなやつでも出来たか?」
そうだったんだ。
「いや、ここ2日連続で電話来るからさ。どうかなと思って聞いてみた。」
「まぁ、好きな人からだったら嬉しいけどさ。そうじゃなかったらウザいよなー。何、ウザくなっちゃった?」
「いや、そういう訳じゃないけど。でも好きな人でもさ、疲れる時ないか?」
「んー俺は逆に声聞けて嬉しいけどな。まぁ人それぞれだと思うけどさ。」
「そっか。俺の心が狭いのかな。」
「狭くはないと思うよ。そんな時もあるって。大丈夫だ、アイには黙っておくから。俺たまに買い物してると会うんだよな。」
「よろしくな。アイ悪いやつじゃないもんな。」
「おまえアイに浮気されたのによっぽど惚れてんだなぁ。あいつおまえがまだ好きなの知ってて電話掛けてるんでしょ。悪い女だよなぁ。」
なんだ、ホントの悪い女じゃん。浮気するやつって嫌いなんだよな。今度電話来たらほどほどに相手しておこう。
サトシとまた会う約束をして別れた。
家に着いたのはちょうど0時。お風呂を溜めてる間に少し酔いが覚めてきた。
お風呂でしっかり疲れを取る。
今日はさすがに風呂上がりのビールを飲むのは辞めた。人と飲むのって結構楽しいんだな。元に戻ったら誰か誘ってみよう。
今日はサトシのおかげで楽しかった。残りも楽しみながら過ごして無事に擬似体験を終えたい。
霧が掛かっていた心が、サーッと晴れたような気分だった。
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