初日(湊→仁志)

眩しい。目を開けたいけど開けられない。


ようやく目を開けてカーテンを見ると、レースカーテンから朝日がサンサンと日が差していた。

湊はすぐに仁志の部屋だと気付く。


テーブルにあった鏡を見る。

(ちゃんと仁志さんになってる。すごい。)

薬の効果を実感し、驚く。

人が良さそうな雰囲気、親しみやすい顔だ。


部屋はそんなにきれいに片付いてるとはいえないが、一人暮らしの男性ならこんな感じかな。


本棚には漫画が何冊も並んでいて、海外・国内の様々な旅行雑誌も数多くある。仁志さん旅行が趣味だったな。


服はそんなに持っていないようだ。自分の持っている服が多すぎるのかもしれないけど…。


色々部屋を見てるうちに、ある物を見つける。

元カノと撮った写真が数枚置いてある。

そういえば恋愛が長続きしないって冊子に書いてあったな。

…俺もランとこの先続けていけるかな。恋愛って難しい。


湊は椅子に座り、仁志の冊子をほとんど暗記するほど何度も読み返す。


テーブルにあった仁志の携帯を見る。着歴は、友人からがほとんどだ。よく掛かってきてるのが『サトシ』からだ。サトシはもちろん、他の友人たちの事を脳内記憶を使って調べる。

良く仕事帰りに飲みに行ったりするようだ。

もしかしたら、この人達と会うことがあるかもしれない。うまくやらないとな。




お腹も空いてきたので食べるものを探す。

冷蔵庫には少しの野菜、牛乳、肉、缶ビールが2本入ってる。

ご飯が炊けるまで、野菜炒めを作る。玉ねぎがメインの野菜炒めが出来た。


後片付けをして、椅子に座り休む。

冷蔵庫にほとんど何もないし、買い物にでも行こうと脳内記憶を呼び寄せる。


『近くのスーパー 近くのスーパー』

バスで10分か。よし行こう。


着替えをして、財布を探して中身を確認する。

千円しか入ってない。

恐る恐るキャッシュカードの番号を調べる。簡単に分かってしまった…。




バスから降りた目の前にスーパーがあった。

貼り出されたチラシを見ると、今日は卵と豆腐が激安の日らしい。

日曜ということもあって店内は混んでる。

5分ほど店内を物色してると、銀行に行き忘れたことに気づき、カゴを置いて一旦店の外を出る。


『銀行 銀行』

スーパーの斜め前にあった。近くにあって良かったと胸を撫で下ろす。

無事にお金をおろして、スーパーに戻って買い物を続ける。

激安商品を数点見つけ、つい買いすぎてしまった。

今日は冷凍餃子を焼いて食べることにした。もちろん、ビールも数本購入した。




夕飯を食べ終わり、後片付けをする。

すっかり仁志の部屋にも慣れて、ゆっくり寛げている。

あとは、明日からの仕事や私生活をうまくやっていかないと。


クローゼットから明日のスーツを取り出し、前もって準備をする。

冊子をめくり、仁志についての情報を確認する。

会社の基本情報、仕事内容、取引先を抑える。

9時から仕事だから、通勤時間を考えて8時20分に出れば間に合う。


熱めの風呂を沸かし、時間をかけて風呂に入る。途中、ウトウトしながらも洗い終わった。


髪を乾かして化粧水をつける。冷えた缶ビールを飲み、目覚まし時計をセットした。

明日からは仁志さんとして生活するんだ。緊張するけど、せっかくだから楽しもう。


低い枕に少し気になりながらも、深い眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る