金曜日
◎3/31(金)仁井田奈美→葉山怜
擬似体験をして一週間ほどが過ぎ、サキとの事も、生活環境も段々と慣れてきた。
会社の人とは、仕事上の最低限の事しか話さないからすごい楽。
『奈美』の時は家以外では気が休まる暇がなかったから毎日疲れてた。干渉されないのってこんなに気持ちに余裕出てくるのか。
今日は仕事の後にサキさん達と合コンらしきものがある。そういうのはずーっと避けてきたからやるのは初めて。
他の人と飲むのは、新年会と忘年会の時だけ。あとは家で一人飲みだもんな。つくづく私って一人でいるのが好きなんだなと思う。
「怜、今日の服かわいいねー!あっ、このスカート前一緒に買いに行った時のやつだ。似合ってるよ!」
「ありがとう。久しぶりの飲み会だから家でファッションショーしたよ。」
「分かる。組み合わせって難しいもんねー。じゃあ終わったら一緒に行こうね!」
仕事が終わり、サキと一緒に待ち合わせの居酒屋に向かう。
(この店知ってる。テレビで宣伝してて、料理も美味しそうだったし、お酒の種類も豊富だった。確か1月に出来たばかりって言ってたな。)
照明は明るすぎず居心地良い雰囲気。
カップルや合コンをしてる人で賑わってる。
(お酒さえ飲めば楽しく過ごせるはず。早く酔っちゃおう。)
店員に案内してもらい予約してた席に着く。
「ここ初めて来たけど、いい感じの店だね。」
「そうだね。この間テレビで紹介してたの見たよ。まだ出来たばっかみたい。」
「あ、私もそれ見た。料理とお酒の種類がいっぱいあるんだよね。楽しみだねー。」
「だねー。今日って飲み放題にするの?まだ決めてない?」
「んー、まだ決めてないんだ。シンジ達来たらみんなで相談しようと思ってさ。」
「そうだね。そうしよー!」
まだ男性二人が来ないので、先にメニューを見る。
「あ、これ美味しそう。お酒に合いそう。」
「これも美味しそうじゃない?お腹空いたしいっぱい頼んじゃおう。」
あれこれ見てるうちに、店員に案内された男性2人が来た。
「お疲れ様〜。遅くなってごめんね!」
「大丈夫、うちらもさっき来たとこだから。」
サキとシンジが会話してるのを横目に、もう一人の男性を見る。背が高くてスーツが似合う、タレ目で子犬みたいなかわいい感じの人だ。
(この人絶対モテるのに。彼女いないの不思議。)
「怜ちゃん久しぶりー元気だった?」
「はい、あ、うん元気だよー。」
シンジと言葉を交わす。
「はじめまして。コウタです。今日はよろしくね。」
「はじめまして。怜って言います。よろしくお願いします。」
名前だけの自己紹介が終わり、まずは注文をする事にした。
2時間の飲み放題にして、焼き鳥、だし巻き卵、刺し身盛り合わせ、鶏の唐揚げを注文する。
お酒は4人ともビール。
「カンパーイ!」
賑やかな空間に4人は溶け込む。
早速シンジが話を切り出す。
「怜ちゃん、今日はありがとねー。どうしてもコウタに元気だしてもらいたくてさ。」
「いえいえーでも、コウタさんモテそうなのに…」
「ま、色々あったわけなんだけどさ。」
「そうなんだ。」
なぜかシンジと怜の会話が続き、コウタは中々話をして来ない。
「ほら、コウタ。せっかくなんだから今日は楽しもうぜ。」
「そうだね。」
コウタは照れくさそうに笑う。
1時間ほどたちお酒の力もあって大分打ち解けた。コウタさんは、去年の秋に3年付き合ってた彼女と別れたらしい。原因は、彼女の浮気。
それ以来、元気を無くしてたみたい。
(たぶん、マジメな人っぽいから結婚も視野に入れてたはず。なのに浮気されたら落ち込むよね。)
少し飲みすぎたみたい。こんな風に誰かと一緒に飲むって事が無かったから、楽しくてついお酒が進んじゃった。
ソファにもたれ掛かる。
「怜大丈夫?具合悪くない?」
サキが気付いた。
「うん、ちょっとこうしてれば大丈夫だよ。」
「いまウーロン茶頼むね。」
向かいに座るコクタさんも飲みすぎたのかソファにもたれ掛かっている。
ウーロン茶を飲み、携帯を見てみると母親から着信が2件入ってた。一気に現実に引き戻される。
はぁー、とため息をつく。
「どうしたの?」と、コウタさん。
「いえ、何でもないです。…具合悪くないですか?」
「うん。ちょっと飲みすぎてさ、休んでたら大分良くなってきたよ。」
「私も同じです。ここ初めてきたんだけど、色々美味しいですね。」
「そうだねー。最初に頼んだ焼き鳥がすごい美味しかったなぁ。おかげで酒進んじゃったよ。」
「確かに!脂乗ってて美味しかった〜。」
「…良かったらまたこうして皆で飲みたいね。怜さんの連絡先聞いてもいいかな?」
怜は迷わずコウタと連絡先を交換し合った。
(コウタさん、いい人だし交換しても良いかっ。)
もうすぐ飲み放題の時間が終わりそう。
あっと言う間で楽しかった。
このメンバーでまた飲めたらいいな。
今まで味わった事のない、充実感でいっぱいの週末だった。
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