年上の男

◎3/31(金)、4/1(土)葉山怜→仁井田奈美



金曜日。仕事が終わってロッカーに向かい、携帯を確認する。一件のメールが入ってた。


『こんにちは!昨日は会えて嬉しかったよ。急なんだけど、明日一緒に遊びに行かない?返事待ってます。』


ユウジさんからだ。デートのお誘いだぁ。

やったー!


すぐに返事をする。

『こんばんは。いまメール見ました。この間は偶然でしたね。明日予定入ってないので大丈夫です。』


昨日連絡先渡したばかりだし、まさかこんなに早く連絡来ると思わなかったな。イケメンに誘われて断る理由なんてナイナイ。楽しまなきゃ!



コンビニに寄ってカフェオレと雑誌を買う。会計後に店を出ると、ちょうど細川が入ってきて奈美に気付く。


「おつかれ〜!また会ったね。奈美ちゃんに会いたいと思ってたんだ〜今から帰るの?」

「はい。お疲れ様です。」


無駄な長話はしたくなかったから、奈美はすぐ背を向けて歩き出す。


ギュッ


痛っ。何?!


細川が奈美の腕を掴んで、

「何で俺にだけ冷たいの?この間、佐々木と飲みに行ったみたいじゃん!俺とも行こうよー。」


顔は笑ってるけど、なんだか恐怖を感じる。下手な事言ったらその後が怖い。どうしよう。


「…すみません、腕痛いので離してください。」

「イヤだ。約束してくれるまで離さないから。」

さらに強く掴んでくる。


はぁ。行きたくないけど仕方ないか……。

「じゃあ、今度ランチ行きましょう。」

「ほんと?嬉しい!いつにする?都合いい日教えて?」

パッと手を離し、すかさず約束をこぎつける。


「じゃあ、来週の月曜はどうですか?」

「うん、いいよ。時間は?どこで待ち合わせる?」

「12時位にこのコンビニでどうですか?」

「分かった!じゃあ俺の行きつけの蕎麦屋に行こう。あそこの道入って少し歩くとあるから。」

「はい。よろしくお願いします。じゃあまた。」


ニコッと笑い急いでその場を去る。行きたくないけど、嫌な事はとっとと終わらせなきゃ。

何か強引でちょっと怖い感じがしたな。うまくかわさないと後々大変な事が起こりそう。



この間スーパーで会ったカナとの事や細川の事で美人の苦労を身をもって知る。


でもせっかく奈美さんを体験してるし、これからだってもっと色んな男の人と遊びたいのに。

もっとうまい方法を考えないとな。


怜の心の欲望が、奈美の体を通して漲っていく。






次の日、ユウジが9時に家の近くの公園に迎えに来てくれた。

「おはようナミちゃん!さ、乗って。」

助手席の窓を開けて、奈美に話しかける。

奈美は助手席に座りシートベルトをする。


「昨日勇気出してメールして良かった。遊べて嬉しいよ。今日は連れて行きたいとこ色々あるから楽しもうね!」

「はい!楽しみです。どこに行くんですか?」

「まぁ、楽しみにしてて〜。」



着いた先は、ユウジがいつも行ってるというユニセックスの服屋。

店内では数組のカップルが服を選んでいる。


「ナミちゃん服のセンスいいから、俺のも選んで貰おうと思ってさ。ナミちゃんのも選んであげるね。」


店内を歩き回り、何着か選んで試着室でファッションショーをする。

ユウジの筋肉質で引き締まった体型がどんな服も着こなす。

(何着ても似合う。かっこいぃぃ。まさにデートって感じ。たのしぃぃ。)


ユウジは上着とベストを買うことにした。

「次はナミちゃんの服選ぼう。」


店内を見て回り、ユウジが何着か選ぶ。

「これなんてどう?」

ニットとスカートをナミに渡す。

「流行りのダボッとした服もかわいいけどさ、ナミちゃんスタイルいいからこういう服良いと思うんだ。ちょっと着てみて?」


試着室で着替えてユウジを呼ぶ。

「おー、やっぱ似合うよ。いーじゃん!」

何だか恥ずかしいな。

「ありがとう。じゃあこれにしようかな。」


会計を済ませて車に戻る。服はユウジがプレゼントしてくれた。

「お互いいいの買えて良かったね。あそこの店、俺のお気に入りなんだ。」

「そうなんですね。良いお店ですね。私も気に入りました。服のプレゼントありがとうございます。」

「いいよいいよー。また今度一緒に行こうね〜。」


(ユウジさん、話しやすいし優しいし大人の男って感じ。でも多分彼女いるんだろうな。)


「ユウジさんて、彼女さんいるんですか?」

「ん?あぁ、いるよ。遠距離恋愛中なのよ。」

「やっぱりいたんですね。そんな気がしてました。」

「彼女持ちはイヤ?」

「彼女さん嫌がらないんですか?」

「デートくらいいいでしょって思うんだよね。結婚してれば話は変わってくるけどさ。」

「もし彼女さん、バッタリ会ったらショック受けませんか?」

「大丈夫だよ。新幹線で2時間の所にいるし。彼女平日休みだしね。」


(全然罪悪感を感じてない。遊びまくってるんだろうな〜。結婚相手にはムリなタイプだ。)


「もし私が彼女だったらショック受けますよ。」

「そっかー。ナミちゃんが彼女になってくれるんだったら俺絶対浮気しないよ!」

調子良すぎる。イケメンってやっぱり自信ありまくりなんだろうなぁ。



ランチは、中華街にある昔ながらの中華屋さん。

店の外から、いい香りが漂っていた。

「ここすごい美味しくてオススメ。ハズレ無しだよ。」

「お腹空いてるので楽しみです。」


ガラガラッ


数人座ってて、奥の空いてる席に向かい合って座る。

ユウジからの視線を感じて、急に恥ずかしくなる。

(すごい見てる。恥ずかしい…)


「何ですか?」

「いやぁ、美人だなぁと思って見惚れてた。」

「からかわないでください。恥ずかしいです。」

「ナミちゃんって照れ屋なんだね。もっと自信たっぷりでイケイケなのかなって勝手に想像してた。」

「えー、そんな風に見えてたんですか?」

「んー。美人だしスタイル良いし完璧だからかなぁ。あ、ところで彼氏いるんでしょ?ナミちゃんこそ遊んでて怒られないの?誘っておいてお前が言うなって話だけど。」

「いないです。フリーです。」

「まじで?いい事聞いた。また俺と遊んでくれる?」

「考えておきますね。」

「冗談うまいなーさすがだね。」



さすがだ。話してて楽しいし会話に困らない。

だからこそこういう人は本命には出来ない。

完全に『遊ぶだけ』の人。

結婚するなら、心がイケメンの人の方がいい。

まぁ、元の姿に戻ればこうしてイケメンと遊ぶことすら出来ないけどね…。


うちの父、他に女作って家を出ていった。イケメンの部類に入る父。お母さんをいっぱい泣かせて、傷つけて、自分だけ幸せになってさ。許せない。


だから結婚相手にはイケメンは選ばない。

今のうちいっぱいイケメンと遊ぶんだ。



奈美になった私が、思う存分振り回してあげるね。

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