ファーストコンタクト

休憩室に戻り、机の引き出しを探す。

鍵のかかった机はすぐに見つかった。

まずは一段目を開ける。


ガチャガチャ


鍵を開けると、一冊の冊子が入っている。

表紙の右下に『1』と書かれていた。


一枚ペラッとめくると、相手の全身写真が載っていた。

(うわぁぁ、超美人だしスタイルも良い。この人になれるんだ!楽しみすぎる!)


次のページからは基本情報が書かれている。

名前、年齢、職場(仕事内容)、性格、交友関係…


結構な情報量だったので、この冊子は持ち帰ることにした。


次に二段目の鍵を開ける。


ガチャガチャ


携帯電話が入っていて、その下に紙が一枚あった。

『この携帯電話は一度だけ使用可能です。擬似体験中に困ったこと等があったら、登録1の番号に電話をかけて下さい。』と書いてある。


4月30日まで、1ヶ月と少し。

もしかしたら何か問題が出てくるかもしれないし、これは大事に持っておこう。

でも一回だけか。いつ使うか決めるのって難しそう。


冊子と携帯電話を自分のバッグにしまった。

あとは交換相手と電話をするだけ。


時計は14時50分を指してる。時間が近づいてきて、段々とソワソワしてくる。


(実際何を話したらいいかな?自己紹介っていっても、こんな平凡女子の自己紹介聞いても面白くないだろうしさ。でも、ここまで来たしやるしかない。試験も合格したんだし、無駄な心配いらないよね。)


少し汗ばんできてるのが分かった。

「大丈夫、自分らしく行こう」と何度も言い聞かせて時間が来るのを待った。






休憩室に戻り、鍵のかかった机を見つめる。

まずは一段目を開ける。


ガチャガチャ


鍵を開けると、一冊の冊子が入っている。

表紙の右下に『2』と書かれていた。


一枚ペラッとめくると、相手の全身写真が載っていた。

(この人が擬似体験の相手か。純粋そうな人。楽しみだな。)


次のページからは基本情報が書かれている。

名前、年齢、職場(仕事内容)、性格、交友関係…


結構な情報量だったので、この冊子は持ち帰ることにした。


次に二段目の鍵を開ける。


ガチャガチャ


携帯電話が入っていて、その下に紙が一枚あった。

『この携帯電話は一度だけ使用可能です。擬似体験中に困ったこと等があったら、登録1の番号に電話をかけて下さい。』と書いてある。


4月30日まで、1ヶ月と少し。

この電話は使うタイミング間違えると大変だよね。

一回だけだから、気をつけて使わないとなぁ。


冊子と携帯電話を自分のバッグにしまった。

あとは交換相手からの電話を待つだけ。


時計は14時45分を指してる。少し時間があるので、トイレに行く。


(軽く自己紹介したら、後は相手に辞めてほしい事を言うでしょ。でも一つだけなんだよね。

困ってる事いっぱいあるけど、やっぱり細川さんの事を話そう。)






時間になったので内線1を押し『仁井田奈美さん』に電話をかけた。


プルルル プルルル プル…


「はい、もしもし。」

(仁井田さんだ!!!!!)

「あ、あのっ、わたし葉山怜と言います!」

「はじめまして!仁井田奈美です。なんか、ちょっと緊張しますね。」


「私も緊張してます。さっき試験終わったけど、大変でしたよね。特に最終試験がキツすぎてキツすぎて。」

「ですね…キツかった。私達、頑張りましたね!私も最終試験が一番辛かったです。」

「ですよね。すっごい時間が永遠に感じました。」

「わかります。」


(奈美さん、すごい話しやすい人だ。もっと話し辛い人かと思ったけど、想像と全然違った。)


「怜さん、引き出しの冊子見ました?」

「見ましたよ。お互いの事、色々書いてましたね。覚えきれないので持ち帰ることにしましたよ。」

「同じです。私も持ち帰ります。」


「そうだ、お互いに辞めてほしいこと話すんですよね。奈美さんの辞めてほしい事教えて下さい。」

「そうですね…最近、取引先の細川さんにしつこくされてるから関わらないで欲しいですね。多分冊子にも書いてあるはずです。」

「分かりました。気をつけますね。」


「次は、怜さんが辞めてほしい事教えて下さい。」

「これと言って特段困った事はないけど、強いて言うなら、目立たないようにしてほしいです。こんな事言うのおかしいと思うんですが…擬似体験が終わった後の事を考えると、奈美さんには『いつも通りの葉山怜』を演じてもらいたいんです。」

「怜さんの言いたいこと分かりますよ。」

「良かったです。」


二人はそれぞれ基本的な自己紹介をした。

お互いに相手の事が少し分かって、不安感が薄まりつつあった。電話を切り、迎えの時間まで待つ。



コンコンコン

「はーい。」






二人はそれぞれ、ホワイト化学製薬の車に乗り自分の家に戻っていった。

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