視線

◎4/18(火)葉山怜→仁井田奈美



奈美の両親が帰り、いつもの日常に戻る。

想像してたより楽しかったけど、緊張したなぁ。

でも無事に終わって良かった。




仕事を終え、ふと疑似体験の残り日数が気になり手帳を見る。

終わりの日まで近づいてきた…まだまだ遊びたい。

まだ奈美さんで居たいよー!


奈美の困り顔に気付いた佐々木が話しかける。

「お疲れさまです。今日は直帰だー。ねぇ、珍しく眉間にシワ寄ってたよ。」

「え?やだー変なとこ見られちゃった。」

「あはは。貴重なの見ちゃった。奈美さん仕事終わりだよね?これから一杯飲みに行く?この間の店の近くに美味しい居酒屋あるんだ。」

「いーねー!行こう!おごりだよね?」

「えーこの間おごったのにぃ。ま、いいか。」


ちょうど飲みたいと思ってた。

頼れるイケメン佐々木君。今日も飲むぞー!




「コンビニ寄っていい?お酒飲む前に飲むドリンク、飲んでおかなきゃ。」

「俺も買おうかな。この間飲みすぎて二日酔いでキツかったんだわ。」

「私も次の日キツかったー。ほぼ一日横になってたよ。」

ドリンクコーナーで探してたのを見つけてカゴに入れる。




トントン




肩をたたかれ、ん?と振り返ると細川だった。

(うわー。最悪なタイミング…。)


「こんばんは。」

いつものスマイルで挨拶をする。

「やっぱり奈美ちゃんだ。スタイルいいからすぐ分かるんだよね〜。いまから帰るの?」

「はい。お疲れさまです。」

「これから俺と飲みに行かない?おごるからさ!」

「今日予定入ってるのでごめんなさい。」

「またかよ。いつになったら俺と飲んでくれんの?」

(しつこいな。早くここから逃げないと。)

「すみません。急いでるので、また。」

レジに並び細川から離れる。後ろの方からブツブツと細川の独り言が聞こえる。

(佐々木君と一緒にいる所見られるとややこしいよね。メールしておこう。)


外で電話してた佐々木は、奈美のメールに気付きコンビニの横に移動する。

細川がコンビニから出ていくのを確認し奈美に電話する。

「いま出ていったね。あの人女たらしで有名な人だ。念の為にあと少ししてから出たほうがいいと思う。」

「そうだね。じゃあ、5分後に外に行くね。」




「さっきは焦ったよ。前からしつこくされてる人なんだけどさ。佐々木君と一緒にいるとこ見られたくなかったんだ。」

「この間話してた友達の事って奈美さんの事なんでしょ。」

「…そうだよ。あの人にストーカーみたいな事されてるの。段々話し方も強引になってきて、怖いんだよね。」

「警察に話した?」

「まだ。行かなきゃとは思ってるけど。」

「早く相談してきなよ。俺、付き合おうか?」

「大丈夫だよ。一人で行ってくるから。」

「ほんと?何かあってからじゃ遅いんだからね!あの人、女の人によくちょっかい出してるよ。周りの女の人達みんな言ってる。知らなかった?」

「うん。全然知らなかった。」


店に向かって歩いてる時も、細川が近くに居ないか気が気じゃない。私だけじゃなくて佐々木君にもしもの事があったら困る。迷惑をかけたくない。




落ち着いた感じの店に着き、注文したビールを待つ。

「奈美さんっていっつも周りを気にして見てるよね。ちょっと気になってた。」

「無意識にそうしちゃうんだね。」

「モテるってお互い大変だよね。悩みは尽きないな。」

「また自分でそういうこと言う。そういう佐々木君は大丈夫なの?」

「俺はちょっかい出したりしないし、その辺はうまくやってるよ。変に期待させると勘違いして逆恨みされるしね。クールを演じてるわけよ。」

「私もちょっかい出してないんだけどな。勝手に想われてストーカーされてさ。困るよ。」

「目立つからね。相手はものにしたいから頑張るわけで、つい行き過ぎるんだろうね。加減が分からなくなってストーカーみたいになっちゃうんじゃない?」

「はぁー。なんだか監視されてるみたいでイヤだな。」

「今もどこからか見てるかもね。」

「やめてよーマジで怖いんだから!」

「ごめん。でもあり得る話だからね。」

「うん。ほんと気をつけないと。」


ビールが来て、元気よくカンパイをする。

「飲んでイヤなこと忘れるぞー。」

「そうだそうだーストレス発散しよう!」




佐々木君はすごく話やすくて面白い。イケメンだからって変に気取ってないしほんといい人。

怜に戻っても仲良くしたいなぁ。どうにか仲良くなって友達になりたい。


「佐々木君は好きになる人って何で選ぶの?」

「まぁ顔だけで選ぶわけじゃないけどやっぱりキレイな人には弱いよ。でも一番は性格かな。いくらキレイでも性格悪い子は好きにならないよ。」

「なるほどね。じゃあ、異性で友達になる人は顔で選ぶ?選ばない?」

「友達はそれこそ顔じゃないでしょ。中身が大事だよ。この人を信じれるか、大事にしたいって思えるか。恋も友情も中身重視!俺って最高の男だな。」

「確かに!ってまた自画自賛だよー。佐々木君が男にも女にもモテるの分かった気がする。」

「そう、俺の友達はちゃんとした奴らだからさ。悪い事すればちゃんと注意するし言いたい事は言うよ。その方がお互いのためだし。」

「裏表ない所がいいんだね。私も見習おうっと。」

「奈美さんはキレイすぎて近寄りがたいってのはある。俺はこの通り下心ないからズカズカ行けるけどさ。」

「そっか。高嶺の花、的な?」

「そうそう、って言うねー!そんな感じよ。だからよっぽど自信ある奴か、当たって砕けろみたいな奴が奈美さんに行くんじゃないかな。」

「当たって砕けろか…当たられたくないなぁ。」

「あはは。当たり屋からうまく逃げるしかないね。」




話が弾み4時間近く飲んでしまった。

少し酔ったのもあって帰りはタクシーで帰る事にした。ドリンクが効いたのか吐き気はないが少しふらつく。佐々木とタクシー乗り場で別れ空車を待つ。


反対側の歩道から細川がジーッと奈美を見ている。それに気付かず、奈美はタクシーをつかまえて家に向かった。

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