親友

◎4/21(金)、4/22(土)仁井田奈美→葉山怜



金曜日の昼休み、サキとパスタを食べに行く。

「ねぇ、怜聞いてよー!この間さぁー…」

サキがシンジさんと喧嘩したらしい。


「日曜日に遊ぶ約束してたのに、シンジが待ち合わせ場所に来なかったのね。1時間待って、携帯に連絡しても全然来ないから家に行ったらさー二日酔いで寝てたんだよ。ほんと頭にきたよ〜。」

「せっかくのデートだったのにね。それから全然連絡してないの?」

「うん!メールも電話もスルーしてる。反省してもらわないと。」

サキも中々頑固な子だ。


「ストレス発散しないとね。そうだ、明日久しぶりに遊びに行かない?都合どうかな?」

「大丈夫。どこに遊びに行く?」

「怜の好きなあのキャラの文房具、新作出たみたいだから見に行こうよ。あとカラオケとかさ!」

デスクにあったあのキャラクターか。

「いーねー。行こう!ストレス発散しよう!」

「きまり!明日10時にいつもの所で待ち合わせね。」

「オッケー。」


いつもの所…街にある時計台の下ね。

だいぶ彼氏に腹が立ってるみたい。彼氏には悪いけど明日はサキといっぱい遊ぼうっと。




待ち合わせの20分前に着いた。

まだサキは来てない。

周りには学生が多く、みんなここで人を待っているみたい。デートか、友達と遊ぶのか、みんなオシャレしてる。

本当なら私も自分の姿でデートしたいよ。

自分と周りとの差に奈美は段々と切なくなってくる。


「怜おはよー!」

少し遠くのほうからサキが走ってきた。

サキはいつもオシャレだけど今日は一層気合い入ってる。私も、いつもよりオシャレしてきた。


「サキおはよう!今日の服かわいいね!」

「ありがとーこれシンジに買ってもらったの。服には罪がないからね。」

「あはは。確かに!似合ってるよ。」

「怜もこの服かわいいよ。すごい似合ってる!」

「ありがとう。この間買ったんだ。」

「いいじゃん!よし、じゃあ早速行こうか。」




歩いて10分くらいすると目当ての雑貨屋に着いた。

怜さんは好きなキャラクターの新作が出る度に買いにいくみたい。特に文房具は欠かさないらしい。

確かにこのキャラかわいいもんね。ほとんどキャラものは持たないけど、私も色々集めてみようかな。


「あった、これ新作のやつだ。」

サキが最初にボールペンとシャーペンを見つけた。

「そうだね。これ買おう。サキはどうする?」

「私はシャーペン買おうかな。怜とお揃い。」


嬉しいな。この間のお母さんの服、サキのシャーペン。少しずつお揃いが増えていく。




次は、サキが行きつけの服屋に行った。

女の子らしい服がたくさん並んでる。カジュアルなんだけどレースが付いてたり、肩出しだったり、怜さんが持ってない服が多い。


「ねぇ、これかわいくない?あっ、これも。」

サキは次々気になる服を手に取る。

うん、似合いそう。


「これ、怜着てみない?似合うと思うよ。」

怜の前に服を当てる。

「そう?じゃあ試着してみようかな。」


試着室で着てみると、ちょうど怜のサイズにピッタリでデザインが甘すぎなくて好み。


「これ買う。気に入った!」

「でしょ?さすが私。似合うと思ったんだよね。」

二人は何着か買い、店を出る。


「サキってほんとセンスいいよね。うちもそのセンス欲しい。」

「怜だってオシャレじゃん。でもたまに違う系統着ても楽しいよね。」

「そうだね。ついいつも同じようなの買っちゃうから。」

「わかる。買ってもほとんど着ないしね。でも組み合わせで結構色々変わるからね。せっかくだからいっぱい着ようね。」




満足したものが買えて上機嫌の二人は、お昼を食べる所を探す。

「ご飯、麺、中華の中だと何がいい?」

「ご飯食べたいな。朝、パン食べてきたからさ。」

「サキも?うちも朝パンだよ。じゃあご飯だね。何がいいかなー。」

「定食屋、ファミレス、寿司、迷うねー。」

「少し歩いてみよう。」


歩きながら何にするか決めることにした。

数分歩き、2軒のうちどっちにするかまで絞った。

二人で悩んでると、少し離れたとこから見覚えのある風貌の人が歩いてくる。


近づいてきてようやく気づいた。

細川さんだ。一緒に歩いてる人は…取引先の受付の女性。


一瞬で鳥肌が立つ。二次試験がフラッシュバックして反射的に両手で顔を覆う。

立ってられなくなり、その場でうずくまる。


「怜、大丈夫?具合悪い?」

サキは驚き、怜の背中をさする。


「大丈夫。ちょっとだけ気分悪い。少しこのままでいさせて。」

「分かった。」

そう言い、サキはしばらく背中をさすり続けた。




「ごめんね。急に気持ち悪くなってさ。もう大丈夫だから。」

「ほんと?無理しないでね。急にだったからビックリしたよ。歩き回って疲れたかな?」


近くにあった定食屋に入る。

怜はサバ味噌定食、サキは唐揚げ定食を頼む。

お昼時で店は満席。賑わっている。


「怜、本当に大丈夫?さっきよりは顔色良くなったけど。」

「うん。ビックリさせてごめんね。たまにこういう事あるんだ。」

「そうなんだ。全然知らなかった。ご飯食べたら帰ろうか?」

「ううん。もう大丈夫だから。ほら、顔色もいいでしょ?」

「うん、そうだけど…。」

「食欲もあるし大丈夫。もう心配いらないよ。」

「そう?ヤバくなったらすぐ言ってよ?」

「うん。ありがとね。」


さっきは突然すぎて、反射的に体が反応した。

こんな所で細川さんに会うなんて思ってもみなかったから本当ビックリした。

怜さんになってまで会いたくなかった。


さっきの事はまるでなかったかのように、二人は楽しく会話をしながらペロリと完食した。




「よーし、次はカラオケ行こう。久しぶりだね!」

「そうだね。この前の飲み会以来だね。」


行きつけのカラオケ店目指して歩く。

酔っててあまり覚えてないけど、確か部屋が広くてキレイだった。


受付を済ませ、先にドリンクを注ぐ。

少し迷って、レモンティーにした。


「前来た部屋より広いね。ラッキー!」

なんだかすごくワクワクする。酔ってなくても緊張しないで歌えそう。


「最初にあれ入れるから一緒に歌おう!」

あれって何だろう。脳内記憶を辿る。

奈美も知ってる、盛り上がる曲だ。

「うん!」

有名な曲だからスムーズに歌えた。


「怜、あれからコウタさんとどんな感じなの?」

「たまにメールしてるよ。やっぱりまだ元カノの事好きみたいで辛そうにしてる。忘れられれば一番いいんだけど、簡単に行かないよね。」

「そっかぁ。この間怜から聞くまでコウタさんの気持ち知らなかったからさ。てっきりもう次の出会い探してるのかと思ったんだけどね。」

「きっと無理してたんだろうね。なんだか悪い事しちゃったね。」

「まぁね。でもコウタさんの本心聞けた事だし良かったよ。」

「そうだね!」

コウタさんの事が少し気になってたのはサキには内緒。胸の内に秘める事にした。


何曲か歌い、それぞれドリンクを注ぎに行く。

フリータイムで二人は5時間近く熱唱した。






サキは昔から知ってる友達のような感じで色々な事を話せる。人前で歌う事なんてあり得ないと思ってたけど、全然平気。


サキと遊べるのもあと少しだと思うと、楽しい気持ちが切ない気持ちに徐々にシフトしていく。


刻々と期限の日にちが近づいている。

それを身に沁みて感じていた。

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