相談

◎4/5(水)葉山怜→仁井田奈美



水曜日は佐々木と仕事終わりに飲みに行く約束をしていた。美味しい焼き鳥屋見つけたから連れてってくれるみたい。


仕事終わり、化粧室で化粧直しをする。

そういえば、化粧変わったねって何人かに言われた。奈美さんはナチュラルメイクだったな。


口紅を引き直し、約束の場所に向かう。

店で直接待ち合わせることにした。



焼き鳥屋に着くと、先に佐々木が座って待ってた。奈美を見つけて、手を振る。


「お疲れさまです!とりあえずビール頼もう!」

乾杯して、焼き鳥や枝豆、唐揚げを注文する。


「いやー今日も疲れたぁ。部長から絶対契約取ってこいってプレッシャー半端ないし。ほんとストレス溜まるよ。」

「なんだか顔が疲れてるね。飲んでストレス発散しよう。美味しいのいっぱい食べれば元気出るって!」

「そうだね。よーし今日は飲むぞー!!」


怜から見ると少し年下の佐々木さん、今日で一緒に飲むのは2回目だけど明るくてノリがいい。

学生の時から彼女が途切れたことがないらしい。でも今は仕事が大変で彼女作るヒマが無いって言ってた。

仕事中、世間話の流れでこうして一緒に飲むようになった。


「佐々木さん、仕事関係の人と結構飲みに行くの?」

「いやぁ、取引先とは飲みに行かないよ。奈美さんは別だけど。上司は飲みに行ってるみたいだけどね。」

「じゃあプライベートの事も話したりしないんだね。」

「全然。詮索されたくないし言わないよ。奈美さんと飲んでることも言ってないし。」

「私も言ってない。確かに詮索されるのヤダな。好き勝手言ってくる人って必ずいるもんね。」

「そうそう。俺はそれが嫌で線引きするようにしてる。」


佐々木さんは誰にも話してないのか…。

だとしたら、細川さんが何処かから見てたって事?スーッと急に目の前に現れて偶然を装ってるけど、奈美の行き先を把握してるのか。

この間は無理してご飯食べに行ったけど、もう行かないほうがいいなぁ。



「ちょっと友達から相談されてることあって、佐々木さんにも聞いてもらいたいんだけど…」

細川の待ち伏せや腕を掴まれた事をニュアンスを少し変えて佐々木に相談する。


「んー、少しずつエスカレートしてきてるね。腕を掴まれた時点で危険に晒されてるよ。その場しのぎで一緒に食事に行くのは危険だな。まずは警察に相談して状況を知らせる事。次にそいつに何かされたらすぐ動いてもらえるはずだから。警察に相談はしたの?」

「まだみたい。」

「早くしたほうがいいよ。」


「あとは、ちょっとした証拠でもメモや記録に残しておく。出歩く時は必ず防犯ブザーは常に身につけてね。」

「分かった。伝えておくね。これって結構ヤバい状況?」

「明らかに距離を詰めてきてるよ。偶然店で合うのも多いんでしょ?行動を把握してるって事だな。」


佐々木からアドバイスを貰い、とりあえず防犯ブザーは絶対身につけようと思った。


「でも随分詳しいんだね。何で?ストーカーに合ったことあるの?」

「俺じゃなくて妹がちょっと前に同じような事されてさ。警察に相談したし、最後には引っ越したりして大変だった。ほら、俺と同じで妹もモテるからさ。」

「今それ言うとこ?まぁ、分かる気がするけどさ。でも怖いよね。いつどこで見られてるのかも分かんないし。」

「ま、また何か困ったことあったらいつでも話して。少しでも力になるから。」

「ありがとね。頼もしいよ。」


自分の軽率だった行動を反省した。最初から危ないやつって分かってたのに…甘く見すぎてた。



奈美さんが擬似体験したかったのは、相当この現状が苦しかったからだ。どうにかいい方向に持っていければいいんだけど…。



「一方的に思われるって怖いね。ストーカー事件って世の中にいっぱいあるし。」

「そうだね。そこで諦めて次の人に行ってくれればいいけど、ストーカーにまでなるって事はその人への執着心がすごいんだろうしね。俺はフラれる事って中々ないけど、次に行くタイプだからな。考え方次第なんだよな。」


「みんな佐々木さんみたいな考えだといいけどね。色んな人いるから、無理だよね。」

「奈美さんもみんなから誘われて大変でしょ。いっつも会社行くと、おじさん達に絡まれてるよね。」

「うん。仕事上、冷たくできないからね。それを好かれてるって勘違いしちゃう人が出てくるんだよね。」



佐々木さんに相談して良かった。不安だったのが少しだけ楽になった。


当たり前だけど『イケメン』にも色んなイケメンがいる。

佐々木さんは完全に『親切なイケメン』だ。

この関係性、大事にしよう。

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