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そして次の日――。


彼女がベットから目覚めると、そこには老人と大勢の召し使いが立っていた。


老人はニッコリと笑みを浮かべていう。


「おはようスレイ。彼女たちはこれから君の世話をする者だよ」


起きたすぐに目の前に知らない人間が並んで頭を下げている光景を見て――。


スレイは混乱してベットから落ちてしまう。


そんな彼女を優しく立たせる召し使いの女性たち。


スレイは何がなんだかわからないまま、その女性たちに連れて行かれた。


まずは浴室に連れて行かれ、体を洗ってもらい、それから彼女が見たこともないような素材の良いドレスに着替えさせれる。


そして、大きな部屋へと連れて行かれ、待っていた老人と食事を取った。


「おお、スレイ。見違えたじゃないか。まるでお姫様のようだよ」


老人は、まだ戸惑っているスレイに向かって声をかけると、これからのことを話した。


「昨夜に言っていたと思うが、スレイにはこの館で覚えてもらうことはとても多い。なに、心配しなくていいぞ。スレイならすぐに覚えられることばかりさ」


それからスレイは、フィニッシングスクールと同じような教育を受けるようになった。


フィニッシングスクールとは、おもに若い女性の社交的な付き合いのために必要なことを教える学校である。


その内容は、文学、芸術、音楽、歴史などの一般教養。


さらにマナー、社交術、化粧、これら人付き合いに関することまでも叩き込まれる。


それに加え、魔法も基礎から習うようになった。


スレイは慣れない環境に戸惑ったが、老人や館内の召使たちは皆優しく、彼女はみるみるうちに淑女として成長していった。


特に、さすが魔力が高かったためか、彼女は数年後には、魔法の師である老人の力をも追い抜いた。


忙しさに黙殺されていたスレイだったが、この館に連れて来られた他の子どもたち――。


自分に声をかけてくれた少年――レレ·プロミスティックのことは忘れてはいなかった。


ここ数年――。


彼女は何度も彼らのことを訊ねたが、老人は曖昧なことしかいってくれず、いつもはぐらかされていた。


そんなとき――。


館にやって来たある男が、老人と二人で話している内容を偶然にも聞いてしまった。


「例の娘は立派に育ったようだな」


「今では私よりも素晴らしい魔法使いへと成長しました。これでもう安心でございます」


どうやら二人は、スレイのことを話しているようだった。


気になった彼女は、盗み聞きなどはしたないことだと理解していたが、その好奇心には勝てなかった。


それと、もしかしたら館に連れて来られた他の子どもたちのことも聞けるかもしれない。


そういう直感的なものも働いていたのだ。


「それよりも、引き取っていった子どもらはどうですかな? 実はスレイのやつが心配していまして」


「ああ。彼らは今スカイパトロールの教育を終えたところだ。全員優秀な人材だぞ」


老人と男は、スレイが聞きたかった話を始めた。


その言葉を聞くに、どうやら皆別ののところで教育を受けて立派にやっているようだ。


スレイはホッと胸を撫で下ろす。


それは、自分以外の子どもら――あのレレという少年も元気でやっているようだったからだ。


(スカイパトロール……ということは、この大陸を守る警察になったのね。よかった……みんな捨てられたりしていなくて……)


扉越しから聞いているスレイの近くで、老人と男はさらに話を続ける。


教育を終えた者の中には、即戦力として使える人材もいて、今日もお供に一人連れてきている。


そのお供の名は、なんとレレ·プロミスティックだというのだ。


スレイはそれを聞いた瞬間に、思わず声をあげてしまいそうになった。


あの少年がこの館に来ている。


しかも、自分と同じように成長して。


ああ、できることならば人目でいいから見てみたい。


――と、彼女はつい口元が緩んでしまっていた。


自分は、淑女としてなんて恥さらしなのだろうと。


スレイはその場で両手で顔を覆っていた。


しかし、この焦がれるような気持ちは止められない。


自分は彼――レレのことがずっと気になっていたのだ。


だから、その顔を見るだけでも――。


そんなふうに胸をときめかせながら、扉越しに頬を赤く染めるスレイだったが、次の会話を聞いた途端に青ざめることとなった。

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