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その体から発せられた光が、彼らの上にあった瓦礫を持ち上げていく。
それと同時に、パレットとルルを抱いたまま、ロロもゆっくりと宙へと浮かんでいった。
「おいフロート! あれは!?」
「まだ儀式は終わっていなかったのか……」
「なにいってんだあんた!? それよりも早くあの子らを拾ってこの場を離れるぞ!」
突然瓦礫の中から現れたロロたちの姿を見て――。
ルヴィとフロートは驚きながらも、彼の元へ飛空艇を向かわせる。
そのとき――。
先ほどパレットによってかき消された魔法陣が、宙を浮くロロたちの下に現れる。
そして、魔法陣から魔力が放たれ、彼らの体を包んだ。
「よくわからんが、させるかッ!」
ルヴィは舵を回しながら叫んだ。
彼女はロロたちに何が起こっているのか理解していなかったが、このままでは彼らを失ってしまうと思ったのだ。
一方フロートのほうは、言葉を失い、ただ光に包まれたロロたちを眺めているだけだった。
飛空艇の速度を上げ、近づいたルヴィだったが、その凄まじい魔力の光よって飛空艇ごと吹き飛ばされてしまう。
幸い船は壊れず、船から落ちた彼女もフロートもケガはしなかったが、これでは近づけない。
「くッ!? パレット! おいパレット!」
それでもルヴィは彼らに近づこうとした。
彼女は叫びながら魔法陣へ駆けていったが、光の障壁によってまたも吹き飛ばされる。
「無駄だルヴィ。こうなっては我々では止められない」
「なにいってんだフロート!? 早く、早くあの子らを助けないとッ!」
吹き飛んできたルヴィの体を受け止めたフロートが、彼女を諭すようにいった。
だが、それでもまだ光へ向かって行こうとする彼女を無理矢理に押さえる。
その間に――。
パレットとルルを抱いたロロの体は、さらに宙へと浮いていた。
気が付けば天井から落ちて来ていた大地の欠片も、崩れて倒れていた柱なども、さらにはルヴィたちの乗っていた飛空艇も浮き始めている。
「どうなってんだフロート!? 説明しろ!」
「たぶんだが。あの少年が……再び大陸へ魔力を注ぎ始めたんだ」
フロートは、大声で叫ぶルヴィに自分が考えられる現状を話した。
すると、次にルヴィとフロートの体までも宙へと浮いていく。
こうなってはもう二人にはどうにもできなかった。
祭壇内にあるすべてのものが浮遊し始めている。
その中心では、ロロがパレットとルルを抱いたまま光り輝いていた。
魔法陣から放たれる魔力と呼応しながら、ロロの表情はどこか安らぎに満ちているようだ。
そんな彼のところへ――。
魔法陣から現れた魂が向かって行く。
「ロロ……ああ、ロロ……」
それはロロの母親であるスレイの魂だった。
スレイの魂は、我が息子とその胸の中にいるパレットとルルを包み込むように抱きしめる。
そして、ロロの耳元で泣いているような声を出し始めた。
「私は……あなたに幸せになってもらいたかった」
スレイの魂は言葉を続けた。
ロロには自分と同じような目に遭ってほしくはなかった。
だから、先ほど人柱となることを拒否してくれてどれだけ嬉しかったか。
たとえ多くの人に終わりをもたらせる結果となったとしても、あなたには人並みの幸福を得てほしかった。
親しい友人を作り、心から愛する者と結ばれる――。
働きながら愚痴をこぼし、ときに喧嘩しては仲直りを繰り返す――。
そんな何の変哲もない日常を送ってほしかったのだと。
「母さん……ごめんなさい……。母親を泣かせちゃうなんて……ぼくはダメな子だよね……」
自分の心情を語った母へ――。
ロロは穏やかな表情のまま返事をする。
「だけど……ぼくは幸せになるよりもしたいことが見つかったんだ……」
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