50
ルヴィとフロートが崩れていく祭壇の中で捜索を続けているとき――。
パレットとロロ、そしてルルは瓦礫の下にいた。
ルヴィたちがここへ到着したときには、すでに祭壇の崩壊で埋もれてしまっていたのだ。
先ほど魔力を使い果たしたパレットは、崩れきた柱からロロを庇い、気を失ってしまっている。
ロロは意識を失った彼女を抱きながら、身動き一つ取れないでいた。
「このまま……みんな死んじゃうのかな……」
二人の傍にいるルルへいうロロ。
ルルは必死になって鳴こうとしているが、すでに声が出ていない。
彼女も力尽きようとしていた。
「無理をしないでよ、ルル……。ぼくはいつもきみに心配ばかりかけていたね……ごめん……」
ロロがルルへ優しく言葉をかけると、彼女は涙を流しながら倒れた。
最後までギャーギャーと、その可愛らしい見た目とは正反対の鳴き声をだして。
ロロはそんなルルへと手を伸ばした。
体はもう瓦礫に挟まれ、パレットと重なっている状態のためうまく動かせなかったが、なんとか彼女の頭に触れる。
「ありがとう、ルル。ぼくはこれまで、きみがいたから寂しくなかったんだ……」
そして、ろくに力の入らない手でルルの小さな頭を撫でた。
「お―いパレット! 私だ! ルヴィだ! いるなら返事をしろ!」
「声が出せないならなんでもいい、音を鳴らしてくれ!」
瓦礫の上からは人の声が聞こえてくる。
聞き覚えのある女性の声と男性の声――。
ロロは、その声の主がルヴィ·コルダストとフロート·ガーディングであることに気が付いた。
「あの二人……逃げずに助けに来てくれたんだ……」
ロロは、なぜあの二人が一緒にいるのかをわからなかったが、ついおかしくて笑ってしまっていた。
それはここへ来るの前に飛空艇の中で、フロートからルヴィのことを聞いていたからだ。
フロートは、ルヴィのことを口では悪くいっているのだが、どうもロロから見ると嫌っているように見えなかった。
そう思ったことをロロがフロートに伝えたが、彼は顔を赤くして誤魔化すだけだったのだ。
そんな二人が、今は一緒になって自分たちを助けようとしている。
だから、やはり仲が良いんじゃないかと思い、ロロは笑みを浮かべてしまったのだ。
「なんとかしなきゃ……」
すぐにでも叫び、助けを求めようとしたロロだったが、うまくできない。
何度も深呼吸をして、腹、喉を意識してみるが、二人に届くような声は出せなかった。
声を出すことを諦めたロロは、あることを思い出す。
そう――。
以前に楽器屋でパレットに買ってもらった魔道具――指輪からアコーディオンを出し、その音を鳴らせば気が付いてもらえるかもしれないと。
「プレイ……」
指輪に魔力を込め、呪文を唱えるロロ。
光の中から現れたアコーディオンを、なんとか演奏しようと、いや音を鳴らそうとしたが――。
「ダメだ……こんな体勢じゃアコーディオンを鳴らせない……」
仰向けに倒れ、さらにパレットが重なっている状態では、とてもじゃないが楽器の音を鳴らすことができない。
表情を強張らせたロロは、現れたアコーディオンを見つめる。
そして、その目から涙を流した。
ロロは、パレットと出会ってからのことを思い出していた。
館を出て、彼女に連れられてルヴィの家へ泊ったこと――。
初めて誰かと音を合わせたこと――。
一緒に飛空艇に乗って旅に出たこと――。
そのすべてが楽しかった。
けして悲しくて涙を流しているのではない。
ここまで来てくれたこの少女、そしてムササビのことを考える嬉しくてしょうがないから泣いているのだ。
これまでずっと館で暮らし、友人と呼べる者などいなかったが、今は違う。
自分にも、胸を張って想ってもらえる相手ができたのだ。
「パレット……ありがとう……。ぼくは……もう逃げないよ……」
そう、呟くようにいったロロの体からは、眩い光が発せられ始めた。
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