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出入り口だった大きな穴へと飛空艇を飛ばし、洞窟のような空間となっている中を進むルヴィとフロート。
土壁に飾られた松明が大地の震動によって消え、中は暗闇になっていた。
それでも飛空艇の速度を落とさないルヴィ。
しかし、このまま灯りのないところを飛空艇で進むのは自殺行為以外何ものでもない。
「おいフロート! このボートには照明は付いてないのか!?」
ルヴィがフロートに大声で訊ねた。
彼はそんなに慌てるなと彼女に話を始めた。
幸いなことに、パレットたちがいると思われる祭壇までは一本道だ。
落ちてくるものを避けようとして、変に道をそれなければ問題ない。
フロートはルヴィへ声をかけ、そのことを伝えたが――。
「バカ野郎! 暗いままだったらもしパレットたちが途中の道にいても気がつかないだろ!」
ルビィに怒鳴られたフロートは、その通りだと返事をし、自身の手を掲げる。
すると、彼の腕から暗闇を照らすランタンのような光が輝き始めた。
フロートはその眩い光を周囲へと放つと、飛空艇の周りが松明に照らされたように明るくなる。
「これなら周りに誰かいても見つけることができるだろう」
「あんたってやつは……そういうは最初からやれっての!」
ルビィはフロートを怒鳴りながら舵を切って、舗装されている洞窟内を進んでいく。
狭い廊下のような道を、落ちてくる大地の欠片を避けながら猛スピードで駆ける。
そして、しばらく進んでいくと天井の高い空間へと出た。
そこにあった大理石できた柱や厳めしい石像、さらに見たこともない装飾が施してある机などはすべて崩れてきたものの下敷きとなってしまっている。
もう祭壇へは到着している。
だがこの様子だと、パレットたちは生き埋めになっているかもしれない。
ルヴィは、そう思うと飛空艇の速度を落とした。
それから、崩れ落ちてくる大地の欠片を避けながらも、必死でパレットたちを探す。
「無事かパレット! ここにいるんだろ! いるなら声を出してくれ!」
舵を操作しながら大声で呼び掛けるルヴィだったが、その声は祭壇内を響かせるだけでなんの返事もなかった。
「ルヴィ……残念だがあの子らは……」
「黙れフロート! ほらあんたも声を出せ! それともっと魔力を上げて明るくしろ! 暗くてよく見えないんだよ!」
フロートがパレットたちの救出を断念しようとしたが、ルビィはさらに声を張って彼に諦めないようにいった。
その言葉を聞いたフロートは、必死になっている彼女に向かって呟くように返事をする。
「このままでは生き埋めになるぞ。早くここから脱出しないと……」
「うるさいぞフロート! あんたはスカイパトロールのリーダーだろ!? それなのにパレットたちを見捨てるつもりか!?」
「私はお前だけでも逃げろといっているのだ! あの子たちは私の命に代えても助け出す。だからお前は逃げろルヴィ!」
フロートが言いたかったことは、二人で逃げるのではなく、ルヴィ一人で脱出しろというものだった。
彼は彼女に――ルヴィに死んでほしくないのだ。
思えば幼い頃から、顔を合わせばからかわれ――。
何か気に入らないことがあると怒鳴り散らされ――。
ルヴィに対して、良い思い出などろくにないフロートであった。
今回のことだって彼女があの少女――パレットに手を貸さなければ起きなかった事件だ。
このお転婆な幼なじみは、昔から何も変わってなどいない。
いつも自分のいうことなど聞きやしないのだ。
――と思い出しながら、フロートは表情を強張らせる。
だがそれでも――。
彼女とはいつも一緒だった。
まだ泣き虫だった頃の自分をよく慰めてくれた。
喧嘩しても次の日には必ず仲直りしていた。
そして、何よりもフロートがスカイパトロールのリーダーになったときは、誰よりも喜んでお祝いをしてくれた。
フロートはそのことを思うと俯く。
「お前は……本当に昔から変わらん……」
「あん? こんなときになにいってんだよ!?」
「私の気持ちなど知らずに……好き勝手いいおって……」
フロートは再び手に魔力を込め、祭壇すべてを照らす光を放った。
薄暗かった周囲が一気に明るくなっていく。
「そこまでいうなら付き合えルヴィ! この私、スカイパトロールのリーダーであるフロート·ガーディングの仕事になッ!」
「言われなくたって、あんたとはこの先もずっと一緒だよ!」
崩れていく祭壇内で、二人が大声で会話をしている中――。
空中大陸オペラはゆっくりと海へと向かって落ちていた。
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