06
それからロロとルルを連れてルビィの家に向かったパレットは、当然彼女に驚かれた。
それはそうだろう。
ルビィの家に住むのは元々パレット一人だけの予定だったのだ。
そこへ身なりの良い男の子と言葉を話すムササビが一緒に入ってきたら、ルビィでなくても驚く。
「ルビィ、ゴメン! 実はとてつもなく深い事情があって……」
パレットはルビィと二人きりになると、何故ロロとルルを連れて来たのかを説明した。
これは夢のため――。
将来に大劇場ステイション·トゥ·ステイションの舞台に上がるために必要なことなのだ。
ロロはおそらく大劇場の支配人の一人息子か、または劇場関係者のお金持ち。
ここで彼に恩を売っておけば、今後受けるオーディションでもコネクションの力で受かりやすくなる。
そのためには、ここでどうしてもロロと繋がっておきたい。
そうパレットはルビィにお願いした。
「ねえルビィ、一生のお願い! あたしの夢を叶えるにはここであの子を泊めないといけないんだよ!」
「……したたかな子だね。まあ、一人増えるのも二人増えるのも一緒か」
「わぁ~ありがとうルビィ! この恩はあたしが有名な
ルビィは狡猾なパレットに呆れながらも、ロロとルルがしばらく家に泊まることを承諾。
しかし、一つだけ言いたいことがあると付け加えた。
「住まわせるっていったって、うちはホテルじゃないんだ。あんたにもそのロロって子にも、ちゃんとやることはやってもらうよ」
ようは食事から掃除、洗濯などの手伝いをしろと言うことだった。
パレットは考える。
自分は居候させてもらう身分なのだから、当然最初から手伝うつもりでいた。
だが、ロロはお金持ちのお坊ちゃんなのだから、いきなり手伝えと言われても家事なんてできるのか?
その前に家のことを手伝わせてたら、嫌になっていなくなってしまうのではないか?
そんな不安が彼女を襲った。
「えッ? ぼくもこの家のことをやるの?」
それからルビィはロロにそのことを伝えた。
それを見ていたパレットは、内心でハラハラとしていたが――。
「わかりました。わからないことか多いので、何かと迷惑をかけてしまうと思いますが、よろしくお願いします」
予想とは違い、ロロは家事を手伝うことを受け入れたのだった。
「もちろん、わたしも手伝うのよ」
そして、彼の肩に乗っているルルもやれることはやると声をあげた。
パレットはその様子を見て、内心でホッと胸を撫で下ろしている。
「よし。じゃあ早速手伝ってもらおうかな。台所に料理がてきてる。それをこっちのテーブルへ運ぶんだ」
ルビィに言われた通りに、パレットとロロは料理を運び始めた。
出来立てなのだろう。
ホヤホヤと湯気が出ているスープはまだ熱々そうだ。
他にも今日に仕留めた巨大な鳥の肉や、野菜の盛り合わせなどがある。
パレットはトレイに乗せたそれらの料理を見て目を輝かせていた。
「くぅ~美味しそう! あたし、もうお腹ペコペコ~。一口食べちゃおっと」
そして切り分けられていた肉をつまみ、口へと放り込む。
それを含んだ瞬間に、肉汁と使用されていた香辛料が彼女の口の中に広がった。
「くぅ~やっぱルビィの料理はサイコーだね!」
肉の味に大満足のパレットは、ホクホク顔になって早くガッツリ食べたいと言う。
その様子を見ていたロロは笑みを浮かべていたが、彼の肩に乗るルルは怪訝な顔になっていた。
「まったく、いただきますも言ってないのに料理に手をつけるなんて。顔だけじゃなくて行動も下品なのね、あなたは。やらないとは思うけど、ロロはマネしちゃダメなのよ」
ルルの言葉を聞いたパレットは、ムッとその頬を膨らませる。
いちいち突っ掛かってくるルルに苛立ったのだ。
「なによ? 家に泊まれると思ったら手のひら返しちゃってさ」
「ここはあなたの家じゃないじゃないのよ。なんで他人の家なのにそんなに偉そうなのかしら。ホンットお里が知れる女なのよ」
そこからパレットとルルの言い合いが始まった。
やれ小動物のくせに――。
下品なのは顔だけにしろ――など、勝っても何も得のない争いが続く。
ロロがそんなパレットとルルを止めようとしたとき――。
「コラッあんたら! これから食事だってのにケンカはやめな!」
先にルビィが声を荒げた。
彼女がいうに――。
食事とは栄養を摂取するだけのものではない。
友人や家族と親しくするというものでもあるのだと、言い合っていたパレットとルルへしかりつける。
彼女たちはルビィの言葉を聞いて黙ったが、その表情は不機嫌そうだった。
それを見たルビィが大きくため息をつく。
「あんたらねぇ。そんな顔されてたらせっかくの料理が台無しじゃないの」
「ぼくもそう思うよ。ほら、パレットもルルも仲直りして」
ルビィが呆れながらそう言うと、ロロも彼女に同意した。
パレットもルルもまだ互いに納得はいっていなさそうだったが、二人にそう言われて仲直りすることに。
「つまみ食いして悪かったわ。それと、小動物のくせになんて言ってゴメン……」
「わたしも言い過ぎたのよ。次からはもっと柔らかく注意するようにするのよ」
それから運んだ料理をテーブルに並べ、ようやく夕食を始めるところまで来たのだった。
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