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結局何を言おうが――。
これ以上の試奏を許されなかったパレットたちではあったが、気を取り直した店内を見ていた。
店員の老人は、そんなパレットたちがまた楽器を弾き出さないかとチラホラ横目で見ている。
ロロとルルはその視線が気になっていて、これ以上この店にいるのがいたたまれなくなっていた。
「ねえロロ。せっかくだから楽器買わない?」
そんな老人の視線など気にしていないパレットが、急にとんでもないことを言い出した。
これから一緒に音楽活動をしよう。
そのために今ここで楽器を買おうと。
彼女は困っているロロへ詰め寄る。
「さっきの演奏、ロロも楽しかったでしょ? あたしたちが一緒に活動すれば、ぜぇ~たいにオペラで一番の
もちろんパレットは最初からそのつもりだった。
大劇場ステイション·トゥ·ステイションの支配人の息子だと思われる(またはその関係者のお金持ちの子)彼と活動すれば、夢である舞台の立てるはずだと。
ロロがたとえ初心者でも、多少鍵盤楽器ができれば組むつもりだったのだ。
しかし、今はそれだけではない。
パレットはロロとのセッションで、言葉にできない最高の感触を味わった。
今すぐにでもまたロロと音を重ねたい――その思いが強く出ていたのだった。
「えッ? で、でも今はそんなお金ないし……」
「ちょっとパレット!? あなた、ロロにピアノを買わすつもりなの!?」
ロロが言葉を詰まらせていると、ルルが大声をあげた。
それもそのはずだ。
何故ならば、この店で買えるグランドピアノの最低額のものでも、小型の飛空挺なら買えてしまうほどの金額なのだ。
そんなお金を持ち歩いているはずがないだろうと、ルルはパレットの常識を疑った。
シュンと落ち込んだパレット。
もしかしたら――。
お金持ちの子どもなら――。
という、甘い考えがあったのだろうが、そんな大金をロロは持っていなかった。
「なら、こっちならどうだい?」
ピアノが買えないと思っていたパレットに、店員の老人が話しかけてきた。
そして、小さな鍵盤と
「まあ、蛇腹楽器しゃないのよ!」
それを見たルルが嬉しそう言った。
老人が置いた楽器は、ルルのいう蛇腹楽器――アコーディオンだった。
「うわぁ~! 小さいな~! これも鍵盤楽器なんだ!」
ロロは、初めて見た抱えることのできる鍵盤楽器を見て目を輝かせている。
「こいつなら君らにも買えるだろ? なんなら安くしとくよ」
店員の老人はそういうと言葉を続けた。
さっき聴かせてくれた演奏は見事なものだった。
さすがに高価な楽器は安くしてやれないが、アコーディオンなら君たちが手の届く金額まで負けてやれる。
そう、老人は笑顔で言うのであった。
それからアコーディオンを手に入れたロロ。
だが、それを購入したのはパレットだった。
「うぅ……まさかロロがお金を持っていないなんて……」
ロロは財布は持ち歩かず、持っている所持金はすべてルルが管理している。
ルルはそのことを黙っているように言い、パレットにアコーディオンの代金を払わせたのだった。
「お菓子はおあずけになっちゃうけど……。これは先行投資……。将来のため夢のためなんだからガマンガマン……」
まるで呪文のようにブツブツ言い続けるパレット。
どうやら彼女は、港に行ったときにお菓子を買うつもりだったようだ。
「ありがとうパレット! ぼく、この楽器を一生大事にするよ!」
今にも泣きそうなパレットとは違い、アコーディオンを買ってもらったロロの表情は明るい。
それに店員の老人は、サービスに
これでパレットと同じように、いつでもどこでも楽器が演奏できる。
ロロはそう思うと、嬉しくてしょうがなかったのだ。
「これだけ嬉しそうなロロは久しぶりに見るのよ」
「そう……。へへ、それはよかったよぉ……」
満足そうなルルの横では、引きつった顔をしたパレットが悲しそうに笑っていた。
ロロは早速指輪を付けてみる。
するとアコーディオンが光り輝き、そのまま指輪の中へと入っていった。
「スゴイや! ねえパレット。楽器を出すときはどうすればいいの?」
子どもようにはしゃぐロロを見たパレットは、自分が初めて指輪を使って呪文を唱えたときのことを思い出していた。
自分も今の彼とまったく同じだ。
ただプレイと呪文を唱えて、ヴァイオリンと弓が現れるだけでずっとはしゃいでいた。
パレットは幼い日のことを思い出すと笑顔を取り戻す。
「まずは指輪に魔力を込めて、それでプレイって呪文を叫ぶんだよ」
そして、ロロへ楽器を出す魔法を教えるのであった。
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