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それから食事を終えた者から順に、魔力を測る魔道具を装着していった。
スレイは食事を急いで終わらせ、まだ声をかけ続けてたレレを無視し、その列へと並ぶ。
その魔道具とは、頭に輪のようなものを被り、それに配線のようなものを繋いだ大掛かりな装置である。
子どもがその輪を頭に被るたびに、なにやら妖しい光を放っていたが――。
「これではダメだな……。よし、次の者」
老人の声や表情を見るに、どうやら期待通りではないようだった。
そしてスレイの番が回ってくると、魔道具から放たれていた光が今までとは比べものにならないほど輝き始めた。
そのあまりの眩さに、部屋にいた子どもらも思わず声をあげてしまっていた。
だがその中で、老人だけは歓喜の声をあげている。
両目を見開き、両手をあげては年甲斐もなくはしゃいでいる。
どうやら彼女――スレイは、他の子どもたちとは比べようがないほど高い魔力の持ち主のようだ。
「すばらしい! まさかこれほどの者がいようとはな!」
老人の変貌ぶりに、部屋にいた子供らが怯え始めていた。
それでも誰よりも怖がっていたのは、まさに輪を頭に被っているスレイだ。
彼女は、自分がされていることがよく理解できないでいた。
魔力を測るといわれても、これまでの人生で一度も魔法などとは縁のない生活だったのだ。
それが突然妙な輪を被せられ、魔力が高いなどといわれても何のことかわからないだろう。
その後――。
集められた子どもら全員の計測が済むと、スレイだけが別の部屋へと連れて行かれた。
老人に来るようにいわれ、素直に後をついていってはいるが、彼女はなぜ自分だけ? とさらに怯える。
「君の名はなんというんだい?」
長い廊下を歩きながらいう老人。
スレイは身を震わせながらも、か細い声で自分の名乗った。
それを聞いた老人は、彼女に背を向けながら前を進んでいく。
「スレイよ、君にはとてつもない魔力がある。それを将来この大陸のために使ってほしいんだ」
それから老人は説明を始めた。
この空中大陸オペラは、選ばれし者――魔力の高い者が魔女や魔法使いとなって代々支えてきた。
スレイにはその魔女となる才能がある。
まだ先の話にはなるが、いつかその時が来たら君にその役目を頼みたい、と。
スレイはその話を聞いて理解できたのは、自分は誰よりも魔力が高いこと――。
この今足で踏みしめている大陸は、魔力によって支えられていること――。
そして、この大陸のためになることを頼まれているというくらいのものだった。
スレイは自分にできることならと、それを受け入れる。
老人は有難いといわんばかりの声をあげ、そして目的地の部屋へと到着した。
「さあスレイ、ここは君だけの部屋だ。今はまだ殺風景で何もないが、欲しいものがあったら何でも言いなさい」
その部屋は、子どもが一人で使うには大きすぎる部屋だった。
ただ老人がいうように本当に何もなく、あるのは天蓋付きの大きなベットと、棚に敷き詰められて並ぶ古そうな本だけだった。
部屋に入ったスレイは、ただ驚いている。
それも当然だ。
なぜならばこの部屋だけで、自分が以前に両親と住んでいた家よりも広いのだ。
それに欲しいものをいえといわれてもすぐには出て来ず、逆に困惑してしまう。
老人は、そんなスレイを見て微笑んでいた。
そしてコクコクと頷いた後、彼女へ声をかける。
「これこれ、すぐにとは言っていないぞ。ではスレイ、明日からじゃ。君には魔法の勉強をしてもらうぞ」
老人はそういった後、何かあればそこにある鈴を鳴らすように言葉を付け足し、部屋を出て行ってしまった。
スレイは、他の子どもたちがどうなるのかを聞きたかった。
特にあの少年――。
自分が無視しても声をかけ続けてきた男の子――レレ·プロミスティックのことが気になってしょうがなかった。
「……急に声をかけられたから驚いて無視しちゃったけど……。あの子は……どうなっちゃうんだろう……」
スレイは、天蓋付きの大きなベットの上に腰を下ろした。
今までに味わったことのない柔らかい感触に、思わず自分が沈んでしまったかと驚く。
それは彼女が寝ていたベットが、恐ろしく固く、とてもじゃないが人が眠れる品物ではなかったからだ。
ベットの感触に慣れたスレイは、そのままバサッと倒れ込む。
柔らかい。
それにいい匂いがする。
「お話の中の天国って、ここのことなのかな……」
まるで大きな雲の上で横になっているようだと、彼女は笑みを浮かべている。
そして、ベットの上をゴロゴロと転がって天上を見た。
ベットについた豪華な天蓋を眺めていると、まぶたが次第に閉じてくる。
「今度さっきのおじいさんに訊いてみよう……」
スレイは、そう独り言をいうとそのまま眠りについてしまった。
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